アッペンツェル・アウサーローデン準州にある難民収容施設には約60人のウクライナ人が身を寄せている
© Keystone / Gian Ehrenzeller
スイスのカリン・ケラー・ズッター司法相は、ロシアの侵攻を受けたウクライナから5万~6万人の難民が流入するとの見通しを示した。
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ケラー・ズッター氏は10日、大衆紙ブリックのインタビューで、スイスにどれだけのウクライナ人が流入するかは戦闘がどれだけ長引くかによって変わるが、最大6万人になる可能性があると発言。これはスイスにとって「非常に大きな試練だ」と述べた。
ウクライナでの戦争開始以来、スイスでこれまでに登録されたウクライナ人は1624人。うち1145人は連邦難民センターに滞在中で、479人は親戚や知人の元に身を寄せている。連邦移民局によると4割が未成年者(0~11歳が27.3%、12~17歳が12.7%)だ。各地域の教育当局が受け入れ態勢を整えている。
ケラー・ズッター氏は、戦争から逃れてきたウクライナ人の受け入れは簡単ではないと述べた。「間違いや不十分な点が出てくるかもしれない。全ての難民は登録する必要がある。連邦や州の提供する宿泊施設に加え、民間の支援が必要になるだろう」と指摘。「これには長い時間がかかるかもしれない」と述べた。
S許可証発効へ
連邦内閣は11日、特別にS許可証を発行することを決めた。今回の戦争の被災者で緊急に保護が必要な人に発行され、1年間スイスに居住し労働することが可能だ。学齢期の子供は教育を受けることができる。期限は必要に応じ延長される。
S許可証は1990年代のユーゴスラビア戦争を受けて設けられた枠組みだが、これまで発行された例はない。
スイスに住むウクライナ人は約1万1千人と、他国に比べると少ない。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、ロシアが侵攻を始めて以来、250万人以上がウクライナを脱出。うち約150万人がポーランドに流入した。
UNHCRは、戦争でウクライナ国民4400万人のうち1千万〜1500万人が国を追われると推定する。フィリッポ・グランディ難民高等弁務官は第二次世界大戦以来、欧州で最も急速に拡大している難民危機だと指摘している。
ケラー・ズッター氏は、危機から抜け出す方法は「プーチン氏」の一択だと発言。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が「いつでもこの戦争を終わらせる力を持っている」と述べた。
(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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