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スイス国会、男性議員の発言量は女性の2倍

南部ヴァレー(ヴァリス)州の連邦議会議員は、議会での発言量が特に多い
南部ヴァレー(ヴァリス)州の連邦議会議員は、議会での発言量が特に多い © Keystone / Alessandro Della Valle

仏語圏スイス公共放送(RTS)のデータチームが連邦議会での議員の発言時間を分析したところ、女性議員の発言時間が男性に比べ少ないことが、この調査で分かった。 

2021年の夏季会期の全州議会(上院)。「バウアー議員、結論に行ってもらっても良いですか?もう55分も話していますが」。議長の中断がなければ、フィリップ・バウアー議員(急進民主党、FDP/PLR)は、いつまでも民事訴訟法改正について語り続けていただろう。非常に技術的なテーマだが、彼にとってはとても重要だったのだ。 

ヌーシャテル州選出のバウアー氏は、一部の同僚たちとは異なり、長い演説をしたり、演壇に立つことに慣れているわけでもない。では、スイス連邦議会で最も饒舌(じょうぜつ)な議員は誰なのか。RTSのデータチームは、現議会の1200時間に及ぶ討論を分析した(方法は文末のメモを参照)。 

女性の発言時間は短め 

分析の結果、2018年の過去調査と同様、女性がマイクを握る時間は男性よりも短いことが明らかになった。上下院の1206時間の討論のうち、女性の発言時間は386時間だ。 

言い換えれば、議会での1時間の議論において、女性は平均19分、男性は同41分話していることになる。ただ両院の間には大きな違いがある。 

国民議会(下院)では、男女間の格差は女性議員の割合で説明がつく。女性の発言時間は全体の約40%で、女性議員が議会に占める割合に近似している。 

上院はそうではない。全議席のうち女性の割合は29%(議会開始当初は26%)だが、発言時間は19%にとどまる。緑の党(GPS/Les Verts)のマヤ・グラフ氏はRTSのランキングで女性上院議員としては最上位だが、それでも13位だ。 

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セリーヌ・バラ上院議員(緑の党)は、発言を控えるようにという「ある種の圧力」が女性議員たちに向けられていると明かす。「直接そう言われるだけではなく、態度で浮き彫りになる。例えば(女性議員が発言しているときに)退席することをためらわない男性や、女性議員に対してしゃべりすぎだ、発言が長すぎると言ってくる男性もいる」 

仏語圏ヌーシャテル州選出のバラ氏は、ドイツ語圏出身者が多数を占める議会では言葉の壁があると話す。「フランス語を話すと、ドイツ語を話すスイス人の議員は私の話に耳を傾けてくれないことが多い。だから私は簡単な言葉で、単刀直入に要点を言うようにしている。目的はメッセージを相手に伝えることなのだから」 

ヴァレー州民は最もおしゃべり 

最も饒舌なのは、南部ヴァレー(ヴァリス)州の議員たちだ。ヴァレー州はスイスアルプスを抱く山間部にあり、マッターホルンなどの名峰や雄大な氷河があることで知られる。その中でも最も饒舌だったのが、中央党(Die Mitte/Le Centre)のベアト・リーダー上院議員だ。発言回数は500回以上、演説時間は計24時間に上った。 

フランス語圏から「饒舌議員ランキング」トップ10入りしたのは、ジュネーブ州選出のカルロ・ソマルーガ議員(社会民主党、SP/PS)。演説時間は18時間だった。 

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下院は上院に比べると、一人ひとりの発言時間はそこまで長くない。それは上院と異なり、発言時間が限られているからだ。 

ランキングの1位に躍り出たのはアールガウ州選出のベアト・フラッハ議員(緑の党)。もう一人の「ベアト」だ。4年間の発言時間は計約12時間だった。 

以下の表から分かるのは、下院でもヴァレー州選出の議員が発言時間の大半を占めていること。上院ではベアト・リーダー氏、下院では4人がトップ10入りした。バンジャマン・ロデュイ、フィリップ・マティアス・ブレギー、フィリップ・ナンテルモド、ジャンリュック・アドール各氏だ。 

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ヴァレー州議員の発言量がこれほど多いのは、所属する委員会や政治的立場、使用言語によって説明できる、と中央党所属のロデュイ氏はRTSに語った。またヴァレー州出身であることも大きいという。 

「ヴァレー人として、私はアルプスの州の利益を守る」とロデュイ氏は続ける。「私たちはスイスではマイノリティの立場だ。だから私たちの意見を聞いてもらわなければいけない。エネルギー、土地利用計画、オオカミ対策について話すとき、私たちはどうしてもスイス国民に聞いてもらいたい意見がある。だから演台に立つ。常に目立っていたいということではない。一定の可視性が必要なのだ」 

議会での発言時間は公式にはカウントされていないため、分析は国民議会(下院)と全州議会(上院)での議事録を元にした。本会議場の議長・副議長による演説はカウントしていない。議会中の議員の出入りは考慮に入れた。 

議事録により、RTSは議員ごとの発言を文字数に換算して集計した。次に、できるだけ中立的な立場で、議員の数分間に及ぶ発言について、その発言速度を計時した。そして、その発言速度と発言回数をもとに発言時間を算出した。 

この方法は言語学者も推奨する。国会ウェブサイト上の発言映像からも発言時間が分かるが、この切り抜き映像はあいまいなことがあるため、今回の方法を優先した。 

仏語からの翻訳:宇田薫 

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