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スイスの廃炉・廃棄物処理費用の基金改革に電力会社から不満の声

Nuclear power plant at night
スイスに5基ある原子力発電所の一つ、ライプシュタット原発。スイスの戦力生産量のうち4割を原発が占める Keystone/Alessandro Della Bella

スイス連邦政府が決めた廃炉・廃棄物処理費用に充てる基金の改革案に対し、原子力発電所の運営企業から不満が噴出している。

連邦内閣は6日、来年1月初めから廃炉基金・放射性廃棄物処理基金(SEFV/STENFO)の予想投資収益率を3.5%から2.1%に、想定インフレ率を1.5%から0.5%に引き下げる改革案を発表外部リンクした。予期せぬ費用の増加や投資収益の減少に備えて2015年に導入した3割の予備費は撤廃する。5年ごとに費用試算が見直されることになり、資金不足が発生するリスクが減ったためだ。

実勢利回りの見直しに伴い、企業が負担する基金への年間出資額は現行の約9600万フラン(約105億6千万円)から1億8370万フランとなる見込みとした。

電力会社アルピックは声明外部リンクで、改革が「数十年にわたり基金を縛り付け、基金の運用担当者を端に追いやることになる」と指摘。3割の予備費撤廃は歓迎したが、出資金の大幅増は提携する原発から追加の財政調達が必要になり、株主にも影響すると反発した。

アクスポ外部リンクは、実勢利回りの引き下げは「不適当だ」と批判。不必要な出資額の大幅増により、予定されているスイスのエネルギー供給再編への投資資金が不足すると警告した。

来月廃炉作業を始める予定のミューレベルク原発を運営するベルン電力外部リンク(BKW)は、安全性が高まるわけでもなく、余剰金が出た場合の払い戻しも約束されない増額はおかしいと反発。政府の決定はスイス経済に損害を与えるとして、法的措置を取る可能性も示唆した。

スイス連邦エネルギー省は昨年、原発の廃炉と放射性廃棄物の処理費用が、それまでの民間推計を11億フラン上回るとの試算を発表した

二つの基金はともに1984年、廃棄物の処分費用や、耐用期限を迎えた原発の廃炉・解体費用に充てるために設立された。

全国の原子炉5基と中間放射性廃棄物貯蔵施設1カ所のオーナー企業には、基金への出資義務がある。

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