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感染リスクなき郵便投票、世界で普及進む

今年は郵便投票への需要が特に高い。写真は、有権者宛ての白紙の投票用紙を米郵政公社に届ける職員(2020年10月、オハイオ州コロンビア) Copyright 2020 The Associated Press. All Rights Reserved

今回の米大統領選で郵便投票の利用者が記録的に増えている。郵便投票には異論があるが、コロナ禍では感染リスクのある投票所を避ける手段として世界中で注目が集まる。各国の郵便投票の利用状況を比較した。

このコンテンツは 2020/11/02 08:30

現在すでに確定していることがある。それは、民主主義が非常に活発だった年として2020年が歴史に残ることだ。新型コロナウイルスの世界的流行が原因となって、またはそれにもかかわらずと言うべきか、多くの国でパワーバランスが揺らいでいる。その影響は路上や投票箱に表れている。権威主義国家の多くでは路上で抗議運動が立ち上がった。新型コロナの感染予防措置は民主主義の機能にどう作用するだろうか?どのような手段があれば意見形成プロセスや選挙・国民投票への市民参加が促されるだろうか?これらの疑問を考察することは非常に興味深い。

「社会的距離」や「自宅隔離」が求められる今、従来のような投票所での選挙参加が難しくなったのは言うまでもない。狭い投票所では感染予防対策が実施しにくいことが多く、ハイリスクグループは自宅に留まった方が良いと考える。

この課題に各国はどう立ち向かっているだろうか?利用できる統計や具体的な事例に注目してみた。

投票率は低下、だが例外も多い

下のグラフは、国政選挙の投票率を新型コロナの感染拡大以前と以後で比較したものだ。

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以後に行われた選挙の大半は投票率が通常よりも低かった。だがどこも同じというわけではない。以前よりも大幅に高い投票率を記録した国もある。その要因は何だろうか?

時期、状況、実施方法が決め手

ストックホルムに拠点を置き、民主主義の推進を目指す政府間組織、民主主義・選挙支援国際研究所(IDEA)によれば、現在の状況下でも投票率の上昇を促す3つの要因がある。

  • 「投票時期」。これはスロバキア、トーゴ、イスラエルで比較的高い投票率となった要因として挙げられる。この3カ国で選挙が行われたのは、新型コロナの感染者がまだほとんど確認されていない流行初期だった。
  • 「選挙時の政治状況」。これはモンテネグロとポーランドの選挙で重要な要因となった。どちらの国でも選挙は投票日以前から国民から非常に注目され、激しい選挙戦が繰り広げられた。結果、投票率が押し上げられた。
    • 「感染リスクなき投票」。パンデミック状況下では選挙プロセスでの感染リスクを最小限に抑えることが非常に重要だ。4月の韓国総選挙は模範的だった。この時期に選挙を延期する国が多かった中、韓国は記録的な投票率を達成した。

韓国の例

この成功の裏には、韓国が具体的な対策を色々と組み合わせたことがある。

これまで韓国の郵便投票はごく一部のグループしか利用できず、しかもそのためには事前に当局に登録しておく必要があった。しかし今回の選挙では手続きが大幅に簡易化され、入院患者、隔離中の感染者・濃厚接触者など利用対象者の基準が大きく広げられた。

さらに当局は期日前投票の期限を追加で2つ設けたほか、投票所には厳格な感染予防対策を敷いた。有権者がこうした変化に不安を抱かないよう、当局は選挙プロセスの透明化と国民との意見交換を重視した。

投票率は過去最高を記録し、過去10年間の平均投票率を13ポイント上回った。

スイスでも記録的な投票率

スイスでも9月末に行われた前回の国民投票には有権者の6割近くが参加。スイスで50年前に男女平等の普通選挙権が導入されて以来、5番目に高い投票率を記録した。

この国民投票にはIDEAが指摘した3つの要因がすべて当てはまる。

投票時期」に関しては、9月は感染がある程度抑えられていると世間で認識されていた。専門家の警告はあったが、国民は比較的落ち着いていた。「政治状況」については、新型コロナの影響で春の国民投票が延期されたため、5つの案件が投票にかけられることになった。その中には異論の多い案件も含まれていた。「感染リスクなき投票」については、スイスでは郵便投票が普及し、幅広く受け入れられている。郵便投票の割合は推計90%を超える。9月の投票では州

当局が郵便投票を強く勧めていたことが一因となり、95%を上回る州もいくつかあった。

郵便投票は歓迎すべき代替手段、だが万能にあらず

つまり「コロナ禍で郵便投票の利用者を増やすこと」イコール「高い投票率」と言えるだろうか?答えはイエスでもあり、ノーでもある。

スイス以外の国でも郵便投票の利用が増えている。例えばドイツのバイエルン州では、3月の第1回投票で投票所での直接投票か郵便投票のどちらかが選択できた。しかし第2回投票では当局が新型コロナの感染拡大を理由に郵便投票のみを可能とした。その結果、第2回の投票率(59.5%)は、第1回(58.8%)に比べやや高くなった。

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オーストリアのかつての都市国家、ウィーンでは様相が違った。郵便投票が利用しやすくなったにもかかわらず、10月11日の市議会選挙の投票率は2015年の前回に比べ約10ポイント低下した。ただ、郵便投票用書類への需要は前回に比べ倍増した。また調査によれば、投票を棄権した理由は新型コロナの流行ではなく、政治的理由が多かった。

IDEAで選挙を研究するペーター・ヴォルフ氏は、次のように述べる。「これまでの経緯から分かってきたのは、郵便投票は今後、利用できる限り、重要度を増し、利用率も著しく上がるだろうということだ。全体の投票率が上がろうが下がろうが関係ない」。この点に関しては、米大統領選の期日が迫ったこの数日間、日々認識できる。今年ほど多くの米国人がこれほど熱心に郵便投票を利用したのはかつてないことだ。

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