新生児黄疸(おうだん)の初期治療はこれまで、赤ちゃんを保育器に寝かせて人工の光を当てる光線療法しかなかった。しかし、スイス連邦材料試験研究所(EMPA)外部リンクの研究チームが、母親の腕の中でも治療が出来る特殊な生地を開発したと、米学術誌「Biomedical Optics Express外部リンク」に発表した。
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新生児黄疸は、体内の血液中にビリルビンという物質が増加して起こる現象。血中のビリルビン濃度が高まると、肌や粘膜が黄色く見えるようになる。生後2~3日の新生児に症状が現れることが多い。通常は光線療法を受ければ治るが、重症の場合は、脳への障害などを防ぐため交換輸血が必要になる。治療は光線療法で、裸にした赤ちゃんを保育器などに寝かせて一定時間、青い光を照射し、ビリルビンを分解させる。光が目に当たるのを防ぐため、アイマスクを付けなければならない。
EMPAの研究チームが考案した生地はサテン製で、導電性の糸と、青い光を伝える光ファイバーを織り合わせたもの。光ファイバーは電池式の発光ダイオード(LED)だ。
生地はブランケットや衣服にもなり、赤ちゃんは保育器の中で一人ぼっちにされることなく治療が受けられる。また、生地の内側で発光するため、赤ちゃんの繊細な目を傷つける心配もない。
研究チームの責任者、マイケ・クアンドさんはEMPAの声明を通じ「この光学の生地は洗うことができ、肌に優しい。サテン生地なので触り心地は滑らかで、赤ちゃんのロンパース(上下一体型の衣服)にも適している」と述べた。
研究チームは商用化に適した生地の開発を目指す。光の強度をわずかに強め、より効果的にビリルビンを分解できる機能が付いたものにしたいという。
(英語からの翻訳・宇田薫)
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