スイスの街 どこまで綺麗にすれば本当に「クリーン」?

ゴミの清掃は見た目だけの問題に留まらない。清掃の効率的な計画は市の清掃当局の重要課題だ Keystone

スイスの街は、新しいデジタルシステムを使えばもっとクリーンにできる― さまざまなゴミをカウントして分類する新しいシステムで、スイスだけでなく世界中のあらゆる街で清掃作業がより安く効率的になるかもしれない。

このコンテンツは 2018/01/31 08:30

スイスの街並みは綺麗で整っているというイメージがあるが、街のゴミを片づけるのはロジスティックだけではなく、戦略的にもハードルの高い問題だ。街のクリーン度を計る基準がないため、どれだけ時間と資金を費やし、どこを清掃するか、スイスの各都市はそれぞれ独自に計画を立てなくてはならない。

連邦工科大学ローザンヌ校が開発したシステムは、ノートパソコンにビデオカメラを繋げるだけのシンプルな装置だ。清掃車や自転車、バスのような低速で走る乗り物に設置して使用する Mohammad Saeed Rad/EPFL

例えばチューリヒの清掃当局は徒歩で道路の点検を行っている。だが、この方法だと費用も時間もかかる上、点検を行う人によって「どこまで綺麗にすれば十分か」という判断が異なるという問題が残される。

連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)にある信号処理研究室5(LTS5)で研究を行うモハマド・サエード・ラドさんと彼の同僚は、この問題を解決するテクノロジーを開発するため、ベンチャー企業Cortexia(ヴヴェイ)とヌーシャテルARC専門学校(HE-Arc)と共同し、実験的なプロジェクトを立ち上げた。

「どんな分野でも、計測できなければ管理することもできない」とラドさんは言う。

「例えば、この部屋の温度を管理する場合、今何度なのか分からなければ、主観に頼るしかない。街の道路もそれと同じだ。外国人にとってこの道路が十分綺麗でも、スイス人にとっては違うかもしれない。客観的であるためには、物事を計る基準がいる。このプロジェクトの背景にはそのような考えがある」

既にスイスの幾つかの都市はこのプロジェクトに興味を示している。ヌーシャテルARC専門学校のエンジニアらは、このシステム用のユーザーインターフェースとモバイルアプリを開発中だ。またCortexiaはチューリヒ市と提携。システムの試運転を通じ、現場の声を反映させた開発を進めている。

コンピューターがゴミを識別

このLTS5が開発しているシステムは、ビデオカメラをノートパソコンに繋げるだけのシンプルな装置だ。昨年、中国で開催されたコンピュータービジョンシステム国際会議(ICVS)で発表された。見かけはシンプルだが、パソコンには高性能の機械学習アルゴリズムが搭載され、ゴミを自動的に最大40種類の異なるカテゴリーに分類し、ゴミのサイズも最小2センチから認識できる。

この装置は自転車、清掃車といった低速で走る乗り物の外部に設置され、散らかっているゴミを撮影したキャプチャー画像を分析し、道路の清掃状況をユーザーに知らせるという仕組みだ。

このシステムを開発する上で解決しなければならない問題は二つあるとラドさんは言う。一つは、時速20キロで走行しながらタバコの吸い殻、ビン、チューインガム、空き缶、新聞など、道に落ちているゴミを全て察知し、正しく認識できるようにすること。もう一つは、ゴミがどこにどれだけ落ちているか重複せずに正しくカウントできるようにすることだ。

このプログラムには学習能力があるため、ゴミの画像を処理した分だけ認識能力も向上する仕組みになっている。

「このプログラムは人間の脳と全く同じように、経験を積むことで学習する能力を持つ」ことから、「画像を1万回処理した後には、恐らくほぼ完璧に認識できるようになる。このまま訓練を積めば、1年後にはシステムが今より更に向上しているはずだ」とラドさんは説明する。

また、落ち葉のように人が散らかしたゴミとは違う路上の物体を正しく認識させることも重要課題だ。連邦工科大学ローザンヌ校の研究者らは、街のゴミ箱が一杯かどうか認識できるようにシステムを「教育する」ことも試みている。

「クリーン度」を画一化

こうして集められたゴミの種類、数、場所といったデータはクリーン・シティー・インデックスという値に換算される。これはCortexiaが連邦工科大学ローザンヌ校とヌーシャテルARC専門学校と共同で開発した指標だ。

プロジェクトの参加者らは、このクリーン・シティー・インデックスがスイスや海外でも環境的、経済的な利益を生み出せるものと期待している。「街のクリーン度」が客観的な値になれば、清掃当局が時間と費用を節約し、より効率的に街を清掃することに貢献できるかもしれない。

「この指標があれば、該当する道路の清掃をするかしないか、2日に1回ではなく1日に3回清掃すべきか客観的に判断することができる。これは当局のコストに直結する重要な判断材料だ」とラドさん。

ジュネーブとフリブールではこれまで清掃車を用いて試験運転を重ねてきた。チューリヒではオートバイを、ローザンヌでは車を使用した。研究者らはフランスのマルセーユでドライブするときにもこのシステムを持参して試したほどだ。

「スイス、フランス、あるいは他の国でも使えるようにシステムを自動化する必要がある。そうすれば都市間でも街のクリーン度を比べられるようになる」(ラドさん)

今後の目標には、キャプチャー画像に重複して写ったものをシステムが無視できる能力をより高めること、また市バスにこの装置を設置し試運転させることも含まれている。バスの走行速度はビデオカメラを使用するのにちょうど良い上、ゴミがあふれやすいスポットであるバス停を通過するのも都合が良い。

最も手間のかかる作業は、システムに出来るだけ違う種類のゴミの画像を処理させ、学習させることだという。

(タバコの吸い殻など)ある種のゴミは頻度が高いために楽に画像が手に入るが、時々滅多に出ないゴミもある。

「さまざまな種類のゴミのキャプチャー画像を十分に入手することがポイントだ。ゴミ箱からゴミを取り出し、実際には存在しないゴミの画像を合成してシステムの訓練を行うこともある」(ラドさん)

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