Navigation

科学で消費者の心を解き明かす

「nヴィソ ( nViso ) 」社のソフトウェアは人間の顔にマークされた100カ所のポイントをリアルタイムで測定し記録する nViso

消費者の商品や広告に対する感情を測定するのは非常に難しい。しかし、このほど、ローザンヌにある企業が、これをデータ化しビジネスにつなげる糸口を見つけたという。

このコンテンツは 2010/06/10 15:25

「nヴィソ」社は連邦工科大学ローザンヌ校のスタートアップ企業で、マーケティング業界向けに感情の解読をする技術開発を行っている。人間の表情と眼球の動きをオンラインで読み取るという。

オンラインマーケティングの時代

今回開発されたコンピュータービジョンのソフトウェアは成長分野の1つだ。マーケティング担当者が求めているのは、顧客にアピールするだけでなく顧客を理解する新しい手法だからだ。

「このようなソフトウェアに対する需要はマーケティングリサーチや広告部門で非常に大きいと思います」
とnヴィソ ( nViso ) の共同創設者マテオ・ソルチ氏は言う。過去10年間でコストのかかる1対1のインタビュー形式からオンラインリサーチへと着実な移行がみられた。しかし、規模ははるかに拡大したが、得られた統計には「バイアスがかかる」とソルチ氏は言う。

「何かが欠けている」と、昨年博士号を取得し連邦工科大学ローザンヌ校 ( ETHL/EPFL ) で研究をする36歳のソルチ氏は言う。その「何か」とは、人間の即座の非理性的、感情的な反応を理解することだ。特に購買行動について語る際、これはきわめて重要だという。

ニュージーランド出身のティム・ルウェリン氏とともに、ソルチ氏は「フラッシュ ( Flash ) プラグイン」のソフトウェアを開発した。簡単なコンピューターのウェブ画像を用いて、被験者がさまざまな画像を見た際にする表情や眼球の動きを記録し測定するものだ。

ドラマ「ライ・トゥ・ミー 嘘は真実を語る」

nヴィソのシステムは人間の顔にマークされた100カ所のポイントの動きを把握し、さまざまな顔の造作を認識する。これを顔のデータベースを使って開発されたモデルと対応させ、複雑な「感情のプロファイル」をリアルタイムで出す。

「この分析はまず、顔面にマークしたポイントを結んで作られた角度を計算したり顔面に現れるさまざまな色を割り出したりすることで行われます」
と、今回の研究を監督した連邦工科大学ローザンヌ校信号処理研究所のイメージ分析の教授、ジャン・フィリップ・シラン氏は言う。

nヴィソのコンセプトは、1970年代に人間の表情と感情を研究したアメリカの心理学者ポール・エクマン氏の先駆的研究を参考にしている。このエクマン氏はアメリカのテレビドラマの探偵シリーズ「ライ・トゥ・ミー 嘘は真実を語る ( Lie to me ) 」のモデルとなったことで、有名になった。そこでは、基本的な感情は怒り、嫌悪、恐れ、幸福感、悲しみ、驚きの六つに分類され「顔面動作記述システム」を利用して解析される。

一般に、恐怖を感じている人は眉を上げ、口元を引き締め、下あごを落とす。これらの顔の動きはすべてコンピューターでコード化され処理される。また、このプロセスには人間の目も不可欠な要素だ。感情をさらに深く読み取るための次の段階として、被験者の瞳孔と視線に着目し、画像のどの部分により興味を示すかを突き止める。

幅広い応用分野

コンピューター技術と心理学を組み合わせた手法は警察、税関検査官、空港の警備員の間で徐々に採用されている。nヴィソは今年の末を目標にマーケティング業界や広告業界向けにソフトウェアの商業化を希望している。そこではほかに5、6社との競争が見込まれるという。

コンピュータービジョンを使って、広告を見た消費者の反応を調べる試みはすでに大企業の間で始まっている。経済雑誌「エコノミスト ( Economist ) 」の最近の報告では、大手消費財メーカー「ユニリーバ ( Unilever ) 」社は表情分析ソフトウェアを使って食品に対する調査対象者の反応を調べているという。また、ライバル企業であるアメリカの「プロクター・アンド・ギャンブル ( P&G ) 」社も同じような技術を使って自社広告を見るフォーカスグループの表情を解析している。

nヴィソのコア技術はほかにも使い道がある。ソーシャル・ネットワーキングや携帯電話の会社、コンピューターゲームの開発会社との話し合いがすでに持たれている。
「次世代ゲームは全身を使ったものになるでしょう。あなたの顔や表情がゲームに必要となるでしょう」
とシラン氏は言う。

新事業を取り巻く環境

経済的な難局にもかかわらず、nヴィソは貴重なサポートを受けている。「スイス連邦専門センター ( Swiss National Centre of Competence ) 」は起業に必要な資金として15万フラン ( 約1180万円 ) を贈与した。

「それに、大学内の研究環境はとてもやる気にさせます」
とソルチ氏は言う。年間10から15の新事業の誕生に力を貸しているこの大学は、コーチング、ビジネスネットワーク、メンタリングの提供や融資先を見つける手引きだけでなく、新しいサイエンスパークにオフィススペースも整えている。

しかし、立ち上げ資金を募るには妙な時代になったとソルチ氏は言う。
「今でもお金はたくさん余っていますし投資欲もあります。しかし、経済危機が投資家を変えてしまいました。すべてをダブルチェックしたがるため、意思決定に2倍の時間を要するので手間がかかります」

サイモン・ブラッドレー、ローザンヌにて swissinfo.ch
( 英語からの翻訳、中村友紀 )

連邦工科大学ローザンヌ校 ( ETHL/EPFL )

もとはローザンヌ専門大学 ( École Spéciale de Lausanne ) の名で1853年に創立された私立学校。1869年、州立のローザンヌ・アカデミー ( Académie de Lausanne ) の工学部になる。
1946年、ローザンヌ大学工学科 ( École Polytechnique de l'Université de Lausanne/EPUL ) に改称。
1969年、EPULはローザンヌ大学から分離され、連邦工科大学ローザンヌ校 ( École Polytechnique Fédérale de Lausanne ) の名で知られる連邦の研究所になる。
ETHL/EPFLは「姉妹校」である連邦工科大学チューリヒ校 ( ETHZ ) とともにスイス連邦大学の一部で、連邦政府の助成による。なお、スイスの大学の大半は州立だ。
現在、ETHL/EPFLには107カ国から約1万1000人の学生、大学職員、研究者が集まっている。
約245人の教授が主に基礎科学 ( 数学、物理、化学 ) 、エンジニアリング科学および技術、建築、土木・環境工学、コンピューター・通信科学、生命科学、社会学、人文科学の分野で教鞭をとる。
キャンパスは急速に拡大中で、新設の「ラーニングセンター」の図書館や自習エリアのほか、現在、4つ星ホテル、学生寮、研究ラボや新企業のためのイノベーション地区を建設中だ。さらに、新しい科学棟、3000人収容できる会議センター、追加の学生寮の建設も検討されている。

End of insertion

この記事は、旧サイトから新サイトに自動的に転送されました。表示にエラーが生じた場合は、community-feedback@swissinfo.chに連絡してください。何卒ご理解とご協力のほどよろしくお願いします

共有する

この記事にコメントする

SWIアカウントをお持ちの方は、当社のウェブサイトにコメントを投稿することができます。

ログインするか、ここで登録してください。