
抗マラリア薬でコロナ治療、死亡率増加と研究報告

チューリヒ大学病院とハーバード大学医学大学院は、抗マラリア薬ヒドロキシクロロキンと類似薬クロロキンに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への有効性が見られなかったとする共同研究論文を発表した。
医学誌ランセットに22日掲載された。研究によると、抗マラリア薬を摂取した入院患者の方が、そうではない患者よりも死亡率が高く出た。いずれかの薬を摂取した患者の死亡率は11.1%だったが、対照サンプルでは9.3%だった。
この薬を摂取すると不整脈のリスクが4倍に増加するという結果も出た。抗マラリア薬のいずれかを摂取した患者の約4〜8%に新しく不整脈の症状が出たが、そのような治療を受けていない患者では0.3%にとどまった。
チューリヒ大学病院循環器科のフランク・ルシツカ部長は声明で、ヒドロキシクロロキンとクロロキンの有効性に「何ら科学的証拠はない」と述べた。
声明では「現在行われている無作為の臨床試験結果が得られるまで、ヒドロキシクロロキン、クロロキンを新型コロナウイルス感染症患者に使用するべきではない」としている。
抗マラリア薬は、今年初めにトランプ米大統領が繰り返し言及したことで大きな議論を呼んだ。特に一部の感染症学者は、心臓病患者へのリスクの高さを問題視していた。

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トランプ大統領は5月中旬、予防策としてヒドロキシクロロキンを服用していると明かした。米食品医薬品局(FDA)は今年初め、この薬の緊急使用許可を出したが、欧州の規制当局は慎重な姿勢を見せていた。
ただ、複数の前臨床研究のほか、患者の症状が改善したという事例報告があり、新型肺炎の効果への期待が高まっていた。
スイスでは17カ所の病院が、ヒドロキシクロロキンの有効性を調べる世界保健機関(WHO)の共同研究に参加している。

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