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風力発電をゴッタルド峠に

ゴッタルド峠付近に巨大な風車が出現するのも間近か? ti-press

スイス南部、イタリア語圏にある環境関連のジョイントベンチャー企業は、ゴッタルド ( Gottardo ) 峠一帯の風力発電所の建設計画を発表した。8基の風車を建て、1万5000人に電力を調達できるようになるという。

スイスの風力発電はほかのヨーロッパ諸国と比べて遅れを取っている。連邦政府の援助により、この遅れを取り戻そうとしている。

 高さ78メートルの風車8基を建てる費用はおよそ4800万フラン ( 約48億円 ) という。2009年までに標高2040メートルから2131メートルのゴッタルド峠に建設される予定だ。

2009年の操業を目指して

 同計画は「レニヴェスト ( Reninvest ) 」と「ティチーノ発電所 ( AET ) 」が作ったベンチャー企業「パルコ・エオリコ・デル・サン・ゴタルド ( Parco Eolico del San Gottardo ) が作成した。建設は2期に分けて行われる。第1期は2008年までで、作業をするために迂回路を作り一般交通を遮断し、地下にケーブルを通す工事と基礎工事が行われる。第2期は、交通止めにした峠の道を再開通した後、直径82メートルのプロペラが付いた風車を建設するという。

 広さもヨーロッパ最大だが、標高も最高だ。もっとも建設開始までには、アイロロ ( Airolo ) の土地計画の変更や、許可の申請といったハードルがある。

スイスの一里塚

 法的には必ずしも求められていないことだが、同社は風力による環境への影響を調査し、その結果を近日中に発表するという。ゴッタルド峠に風力発電所を建設する案は、新しいものではない。2004年8月には政府が「スイスにおける風力構想」を発表した。報告書は、ゴッタルド峠付近のウリ州のゲッチ ( Gütsch ) とゴッタルド峠が建設場所として挙げ「建設には、ほぼ問題はない」と評価した。ゲッチについてはアンデルマット上方ですでに1基の風車が操業している。

 「パルコ」の計画が実現の運びとなれば、ヨーロッパ各国における風力発電に大きく遅れを取っているスイスのエネルギー政策にとって、量的にではなく質的な観点から、一里塚となることは間違いない。風力による配電を受ける消費者はコスト負担を強いられるが、政府はこれを全消費者に等分することで、風力発電を促進する意向だ。

swissinfo、外電 

スイスには風力発電所が30カ所あり、その年間総発電量は15GWh。4000戸の電力を賄うことができる。2006年には風力発電が前年比で84%増となったが、総消費量の0.01%を占めるのみ。

政府は2010年までに再生可能なエネルギーの総発電量を500GWhまで増加させる意向だ。このうち50~100GWhは風力に頼るとしている。これは1万5000戸から3万戸に供給する量に相当する。今後、28基の大型風車、68基の小型風車を建設する予定だ。スイスは京都議定書に批准し、2030年までに再生可能なエネルギーの生産量を5400GWh程度にすることを目標として掲げている。
一方、欧州連合 ( EU ) は過去10年間で風力発電量を32%増加させた。EU圏内のエネルギー総消費量の2.8%に相当する2300万所帯のエネルギー消費を風力発電で賄っている。ヨーロッパ風力協会によると、2020年までには1億2100万戸のエネルギー消費をカバーするだろという。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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