スイスの数学の授業、中学生の力を伸ばす

国際学習到達度調査の結果、スイスの中学生は数学でヨーロッパのトップ Keystone

3日に公表された国際学習到達度調査(PISA)によると、スイスの中学生は数学では、日本などに次ぎ第9位だが、ヨーロッパの中ではトップに位置する。スイスインフォはその成功の秘密を探る一つの手がかりとして、チューリヒ州にあるリエトヴィース中学校を訪れた。

このコンテンツは 2013/12/11 11:00
ジョー・フェイ, swissinfo.ch

リエトヴィース校は、同じ構内に幼稚園から中学までの生徒が一緒に勉強する学校だ。小さな子供たちが休み時間にサッカーやピンポンをしたり、校庭を駆け回ったりしているのを横目に見ながら、年上の生徒たちが自主学習のクラスに集まってくる。

6年前からこの中学校では数学において、学生が独自のテンポで各自、あるいはグループの中で学習する授業が、普通の授業以外に週に2時間ある。教師たちはいつでも質問に答えられるように教室内にいる。

さらに、以前は生徒のレベルに合わせた複数の教科書があったのだが、今は様々なレベル向けの問題が一冊の中に入っている教科書を使っている。

数学教師のユルク・クネヒト先生によれば、一つのクラスで生徒が異なった教科書を持ち、それで一緒に授業するというのは困難なことだった。教科書によって数学のやり方が違うからだ。「以前とは全く違う授業ができる。生徒たちにとって、レベルごとに問題があるため、情報豊かな新しい教科書はずっと使いやすい」

リエトヴィース校にとって、PISAでのスイスの好成績のニュースは喜ばしいものだが、学校側はできるだけ客観的にとらえて、浮つくことがないように努めているようだ。クネヒト先生は、「とてもうれしい結果だが、今後どのように発展していくか分からないし・・・PISAの結果にかかわらず、今までやってきたことを続けていくつもりだ」とスイスインフォに語る。

国際的学習到達度の比較

「PISAで好成績だったことを誇りに思うと言えば、それは間違った言葉だと思う。成果を伸ばせたことに対して満足していると表現がふさわしいのかもしれない」と主任教師のウリ・レムプ先生。

彼の経験によると、この国際的な学習到達度の比較は、政府にとっては有益であるのかもしれないが、学校にとってはさほどの意味は持たない。学校は生徒と授業の方法に具体的に影響を及ぼすような情報を得た場合にのみ、対策を変えていくからだ。

「スイスは経済協力開発機構(OECD)の平均を超えるヨーロッパでは数少ない国の一つであり、またそのレベルを長期にわたり保持し続けることに成功している」とOECDのフランチェスコ・アヴィサティ氏は分析している。

「他の多くのヨーロッパの国々が前回の好成績を保持できなかったのに対し、スイスはそのトップ・ポジションを今回も確保することができた。スイスは数学に常に強い国なのだ」

スイスの最新の得点は下記のグラフ参照。2000年以来好成績を保っている。

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自ら学ぶ生徒たち

リエトヴィース校は、チューリヒ教育大学(PH Zürich)と共に、中学教育の発展を目指して研究を続ける学校だ。

生徒たちに自分の責任で勉強することを勧め、将来についても自主的に考えさせるようにしている。こうした姿勢は他の学校に比べて2年ほど前から始まった。

このため、数学の授業は当然たくさんのディスカッションが行われる。生徒は授業中に自分で課題を決めそれをこなしていく。どう進めるかは自分次第だ。

中学生たちが、3学年一緒に大きな教室で独自に自分の課題に取り組んでいる。窓際でちらりと校庭を眺めている生徒もいれば、グループ用のテーブルに集まっている生徒もいる。

質問があるときは、クエスチョンマークを書いた標識を立てて置く。教師が順番に回って質問に答える。

「友達と一緒に宿題をしたり、テストの勉強ができるのはとてもクール」と言いながら数学の課題に取りかかるのは、15歳のロレーナさん。

「分からないときには質問できるというのはとても大切なことだ」と、同級生のクリスティーナさんは言う。

読解力を伸ばす

2000年に初めてのPISAの結果が公表されたとき、スイスの教育関係者は大きなショックを体験した。とりわけ5人に1人の15歳のスイスの生徒がごく簡単な文章しか読めないということが明らかになったからだ。

それ以来スイスの生徒たちの読解力は向上し続けているようだ。

「国語では読解力に焦点を当て、数学では新しい教科書を使うようにした。ただPISAテストのためにこれらの対策を取ったわけではないのだ」とレムプ先生。

「読解力に焦点を当ててきたのは、PISAテスト以前からだった。それでも2000年にテストの結果が出て以来、その重要性がさらに意識されるようになった」

1階の階段を上がると、教室でドイツ語・英語・宗教学を教えるマリアン・フォーゲリ先生と数人の生徒が大きなコンピューターのスクリーンを囲んでいる。

「学力の比較的弱いクラスでは、他のクラスよりもっとたくさん説明しなければならない。しかしこうした生徒たちと意見を交わすのは本当に興味深く、読書を続けるよう励ましながらやっている」

「この3年間で10冊以上の本を読んだ。生徒たちはそのことを誇りに感じている」

校長とOECDは、フォーゲリ先生の例のように各教師が生徒を伸ばすためのカギを握っているということを確信する。

「質の高い先生を見つけるのは難しい。特に数学では」とアヴィサティ氏は言う。

「教師という仕事がやりがいのあるものであるように良い条件を整え、優秀な大卒をスカウトし続けることが今後もスイスの課題だ」

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