Bubble Beesが運営する保育所には、ワクチン未接種の子供は通えなくなった
© Keystone / Alessandro Della Valle
麻しん(はしか)の急激な流行を受け、スイスの一部保育園が国内では初めて、麻しん・百日咳の予防接種を受けていない子供の入所を認めない規則を導入した。スイスの保育園はほとんどが民間経営で、連邦政府は「違法ではない」と話す。
このコンテンツが公開されたのは、
ドイツ語圏の日曜紙ゾンタ―クス・ツァイトゥング外部リンクが報じた。同方針を決めたのはスイス北東部で8カ所の保育園を運営する「Bubble Bees外部リンク」。
生後12カ月以降の子供が入所を希望する場合、はしかと百日咳の予防接種を受けたという証明書を提出しなければならない。両親がこれに応じない場合は、園側が両親と小児科医の面談の場を設ける。それでも意見が一致しなければ、入所を認めない。
Bubble Beesのスタッフも予防接種を受けることが義務付けられる。
同保育園ではワクチンを受ける前の生後3カ月から子供を預かる。このため月齢が大きいワクチン未接種の子供が登園すると、抵抗力の低い乳児の感染リスクが必然的に高くなってしまう。保育園運営会社の代表はゾンタ―クス・ツァイトゥングに「ワクチン接種を義務付ける規則を設けたことで、あえてうちを選びたいという親が増えた」と需要の高さを語る。
スイスの保育団体連盟キベスイス外部リンクによると、こうした規則は国内初。
スイスでははしかの感染件数が急激に増え、2019年は200件と、すでに昨年全体の4倍に達した。今後も増加が見込まれ、関係機関がワクチンの接種を呼び掛けている。
意識の欠如
スイス小児科医協会外部リンクのヤン・カーリク氏はゾンタ―クス・ツァイトゥングに対し、こうした問題の原因は、親が子供たちにわざと予防接種を受けさせない「反ワクチン」の態度以外にも存在すると指摘する。
その1つが、親たちがはしかの危険性を過小評価している点だ。過去10年で、はしかの問題はそれほど目立たず、注意が薄れてしまったという。同氏は「本来は必要な2回目の接種を忘れる、そもそも予防接種が必要だと気付かない人が出てきている」と話す。
連邦内務省保健局の担当者は、幼稚園・小学校と違ってほとんどの保育園が民間経営であるため、Bubble Beesの規則は合法だと話す。
また、これをきっかけに公の議論が活発になれば「他の保育園でも(感染の)リスクがどれだけ高いか注意を払うようになるだろう」と述べた。
欧州では10カ国以上が予防接種をすでに義務付けている。フランスは2018年に制度を導入。ドイツも義務化する予定で、違反した場合は罰金最大2500ユーロ(約27万円)のほか、退園を命じられる。
スイスでは現在、そのような国内規制を設ける議論は行われていない。
おすすめの記事
おすすめの記事
予防接種を受けさせないスイスの親たち
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは自分の子供に意図的に予防接種を受けさせない親がいる。だがこういった姿勢は、感染症根絶の妨げにもなっている。なぜ予防接種を拒むのだろう?
もっと読む 予防接種を受けさせないスイスの親たち
おすすめの記事
スイス議会、超富裕層への相続税案を否決 対案なく国民投票へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス上院は17日、超富裕層の相続に相続税を課し環境保護の財源にする案を否決した。
もっと読む スイス議会、超富裕層への相続税案を否決 対案なく国民投票へ
おすすめの記事
見えぬ障がい伝えるバッジ、試験配布開始 スイス連邦鉄道
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦鉄道(SBB)は17 日、目に見えない障がいを持つ乗客を対象としたヘルプマークの配布を試験的に開始した。外見からは分からなくても支援・配慮を必要としている人への理解を深めることを目的としている。
もっと読む 見えぬ障がい伝えるバッジ、試験配布開始 スイス連邦鉄道
おすすめの記事
ユーロスター、スイスと英国結ぶ直通列車運行へ
このコンテンツが公開されたのは、
英国と大陸欧州をつなぐ高速鉄道ユーロスターは、スイス・ジュネーブとロンドンを結ぶ初の直通列車の運行を計画している。
もっと読む ユーロスター、スイスと英国結ぶ直通列車運行へ
おすすめの記事
スイス政府、金融規制改革の最終案を発表
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦内閣は6日、クレディ・スイス危機を踏まえた金融規制改革の最終案を発表した。自己資本規制を強化し、金融監督局の権限も強化する。
もっと読む スイス政府、金融規制改革の最終案を発表
おすすめの記事
スイスの元外交官50人、ガザめぐる政府の「沈黙」を非難
このコンテンツが公開されたのは、
パレスチナ自治区ガザにおけるイスラエルの「戦争犯罪」に関して、スイスの元外交官55人がスイス外相に共同書簡を送り、スイスの「沈黙と消極性」を非難した。政府に対して直ちに措置を講じるよう求めた。
もっと読む スイスの元外交官50人、ガザめぐる政府の「沈黙」を非難
おすすめの記事
スイスで放射能測定の合同演習
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは2~6日、国際チームがヘリコプターで空中の放射能測定を行っている。緊急時に広い範囲の放射能を迅速にチェックする予行演習だ。
もっと読む スイスで放射能測定の合同演習
おすすめの記事
自殺カプセル「サルコ」運営団体代表が死亡
このコンテンツが公開されたのは、
自殺カプセル「サルコ」を運営する自殺ほう助団体「ラストリゾート」共同設立者のフロリアン・ウィレ氏(47)が、先月5日にドイツで死去していたことが分かった。
もっと読む 自殺カプセル「サルコ」運営団体代表が死亡
おすすめの記事
スイス南部で氷河が崩壊 土石流がふもとの村を飲み込む
このコンテンツが公開されたのは、
スイス南部レッチェンタール(ヴァレー州)で28日午後、大きな氷河が崩壊し、大規模な土砂崩れがふもとのブラッテン村を襲った。多数の家屋が倒壊し、1人が行方不明。
もっと読む スイス南部で氷河が崩壊 土石流がふもとの村を飲み込む
おすすめの記事
クレディ・スイス株で大損した株主、政府への賠償請求認められず
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦最高裁判所は23日、スイス政府の「誤った情報」によりクレディ・スイス株で損失を被ったとして損害賠償を求めた夫婦の訴えを棄却した。
もっと読む クレディ・スイス株で大損した株主、政府への賠償請求認められず
おすすめの記事
移動式ホール「アーク・ノヴァ」がスイスに初帰国
このコンテンツが公開されたのは、
東日本大震災の被災者を勇気づけようと建設された移動式コンサートホール「アーク・ノヴァ」がこの秋、親元のスイスに初めて登場する。
もっと読む 移動式ホール「アーク・ノヴァ」がスイスに初帰国
続きを読む
おすすめの記事
スイスのはしか患者、昨年の3倍上回る
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは今年、麻しん(はしか)が大流行している。感染者は既に2018年全体の3倍を超えた。それでも過去の大流行に比べれば危機度は低い。
もっと読む スイスのはしか患者、昨年の3倍上回る
おすすめの記事
スイス はしかで死者2人
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦内務省保健局は2日、今年になって国内で麻しん(はしか)感染により2人が死亡したと発表した。感染数は増加している。
もっと読む スイス はしかで死者2人
おすすめの記事
なぜ裕福な国スイスでワクチンが不足しているのか?
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは今、16種類の主要ワクチンが在庫不足に陥っており、医師たちは対応に迫られている。世界で最も裕福な国の一つに数えられるスイスが陥ったワクチン在庫不足の原因、そしてこれまでの国の対策について探った。
もっと読む なぜ裕福な国スイスでワクチンが不足しているのか?
おすすめの記事
ダニ媒介脳炎の危険 スイスほぼ全域に広がる
このコンテンツが公開されたのは、
連邦内務省保険局はスイスの ほぼ全域にあたる24州を、マダニが媒介する感染症の「危険」地域に指定した。2州のみ指定されなかった。政府は国民に予防接種を受けるよう呼びかけている。
もっと読む ダニ媒介脳炎の危険 スイスほぼ全域に広がる
おすすめの記事
エボラ患者発生に備えるジュネーブの病院
このコンテンツが公開されたのは、
「まずエボラ患者の汚れた服をこの黄色いビニール袋に入れる。これは容量が35リットルの普通のごみ袋ではなく、国内テストに合格した特別規格の袋だ。補強されていて、簡単には穴が開いたり破れたりしない」と言いながら、ピエール・…
もっと読む エボラ患者発生に備えるジュネーブの病院
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。