スイスの視点を10言語で

サル痘ワクチン調達をスイス政府に求める署名活動が活発化

サル痘ワクチンの準備をする医療従事者。7月、ドイツで撮影
サル痘ワクチンの準備をする医療従事者。7月、ドイツで撮影 Keystone / Sven Hoppe

スイスでサル痘が流行していることを受け、ワクチンなどの感染対策強化を求める嘆願書に、5500筆超の署名が集まった。ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)が21日に報じた。

スイスでは、初の感染例が確認された5月21日以降、感染者数が約400人に上る。

SRFによると、スイスは現時点で発症率(人口に占める病気の発生速度を示す)が隣国に比べ最も高い。スイスが45.91なのに対し、ドイツとフランスが40以下、イタリアが11.18だった。

報告されている国内の症例の大半は、同性愛者の男性の間で発生している。このウイルスは、皮膚や粘膜に直接触れる行為(性行為も含む)で感染する可能性がある。

嘆願書はスイスのゲイ・バイセクシュアル男性のための団体「ピンククロス」が今月10日に立ち上げた。嘆願書ではスイス当局がサル痘の流行に対し「特別事態宣言」を発令するよう求めている。

他国ではワクチン接種始まる

世界保健機関(WHO)は7月23日、サル痘の発生を「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」と宣言した。

スイスの近隣諸国では、天然痘のワクチンを使った予防接種を既に始めている。しかし、サル痘に対するワクチンとしてスイス当局が使用を承認したものや、調達したものはまだない。

ピンククロスのロマン・ヘッグリ事務局長はSRFの取材に「今、この病気にどう対処すべきかということに対して予測がつかないこと、とりわけ政府に対する不満が大きい、と感じている。今回のサル痘に有効なワクチンがあるはずなのに、スイスでは手に入らない」と語った。

ワクチンは、政府が製造元から直接調達しなければならない。連邦保健庁はSRFに対し「製造元は、サル痘に対する使用の認可申請をスイスで出していない。その意向もないようだ」と文書で回答した。

次のステップ

しかし、保健庁はSRFに対し、現在交渉中である事実を認めた。

ヘッグリ氏は、このプロセスのスピードが極めて遅いとし「私たちにとって、政府がこのワクチンをできるだけ早く、また十分な量を調達しなければならないことは明らかだ」と述べた。

ピンククロスは、21日までに5766筆の署名を集めた。来週中に政府に嘆願書を提出する予定という。

英語からの翻訳・宇田薫

ニュース

眼下に広がる町と湖

おすすめの記事

ウクライナ平和サミットの舞台スイス・ビュルゲンシュトック 地元住民は離心

このコンテンツが公開されたのは、 6月15~16日に開催されるウクライナ平和サミットの舞台として、ルツェルン湖を望むホテル「ビュルゲンシュトック・リゾート」が注目を浴びている。かつては庶民も受け入れられる高級リゾートして地元に愛されていたが、近年は事情が違うようだ。

もっと読む ウクライナ平和サミットの舞台スイス・ビュルゲンシュトック 地元住民は離心
英語でスイスと書かれたステージでパフォーマンスをするノンバイナリー男性

おすすめの記事

ユーロビジョン、「ノンバイナリー」自認のスイス代表優勝 イスラエル参加に抗議も

このコンテンツが公開されたのは、 欧州国別対抗の音楽祭「ユーロビジョン・ソング・コンテスト」の決勝が11日、スウェーデン南部マルメで行われ、「ノンバイナリー」を自認するスイス代表のNemo(24)が優勝した。会場周辺ではイスラエル参加に対する大規模な抗議活動も行われた。

もっと読む ユーロビジョン、「ノンバイナリー」自認のスイス代表優勝 イスラエル参加に抗議も
ビクトリノックスのアーミーナイフ製造現場

おすすめの記事

ビクトリノックス、刃のないアーミーナイフを開発

このコンテンツが公開されたのは、 スイスアーミーナイフの製造で知られるビクトリノックス社は、世界で広まるナイフ規制強化の波に対応するため、刃のないモデルの開発に取り組んでいる。カール・エルズナー最高経営責任者(CEO)がスイス紙のインタビューで明かした。

もっと読む ビクトリノックス、刃のないアーミーナイフを開発
管制室

おすすめの記事

スイス飛行機事故、24%増 紛争地上空ではGPS妨害も

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦運輸省民間航空局(BAZL/OFAC)が3日発表した2023年の航空安全報告書によると、民間・小型航空機の事故件数は9995件と、前年から24%増加した。

もっと読む スイス飛行機事故、24%増 紛争地上空ではGPS妨害も
裁判所のドア

おすすめの記事

「気候活動家への団結心」見せた判事、類似事件への関与禁止 スイス最高裁

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦裁判所(最高裁)は先月26日、チューリヒ地方裁判所の判事の1人に対し、気候活動家に関する裁判への関与を禁じる判決を下した。この判事が過去の裁判で活動家への団結心を見せたとして、考え方に偏りがあると結論付けた。

もっと読む 「気候活動家への団結心」見せた判事、類似事件への関与禁止 スイス最高裁
財布からお金を取り出す人

おすすめの記事

スイス、2023年の実質賃金は0.4%低下

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦統計局は25日、2023年の名目賃金は1.7%上昇したと発表した。インフレ(年平均2.1%)に相殺され、実質賃金は0.4%低下した。

もっと読む スイス、2023年の実質賃金は0.4%低下

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部