© Keystone / Christian Beutler
スイス軍は性的マイノリティー(少数者)の兵士の受け入れ態勢を強化している。性の多様性の担当部局を設けたほか、体と心の性が一致しないトランスジェンダーの人たちを「不適格」とし入隊を原則認めない規則を見直している。
このコンテンツが公開されたのは、
フランス語圏の日曜紙ル・マタン・ディマンシェと、ドイツ語圏の日曜紙ゾンタ―クス・ツァイトゥング外部リンクが報じた。ゾンタークス・ツァイトゥングによると、スイス軍はトランスジェンダーのテーマを扱う「多様なスイス軍」部局を人事部内に設立していたことが分かった。この部局は採用、医療、法務部門と連携し、兵士の「性のアイデンティティ」に対応する。
スイスは成人男性に兵役義務を課し、身体検査などで兵役に不適合と判断された場合は、社会奉仕活動などを行う。軍の現行の規則では、トランスジェンダーの人たちは兵役と社会奉仕活動のいずれも不適合と規定している。ただこれはあくまでも規則で、実際はケースバイケースで入隊を認めている。
スイス軍初のトランスジェンダーの女性クラウディア・サビーネ・マイアーさんが2013年、コソボでの平和維持活動に参加申請した際、性転換手術を受けていたことが軍の医療的見地から「任務に不適格」とされたケースがある。だが軍はのちにマイアーさんの派遣を認め、マイアーさんはコックとして働いた。
軍はマイアーさんの件があってから、社会の現状に照らし、規則を柔軟に運用するようになった。本人が身体、精神ともに健康で、ストレス耐性、回復力、適応性、忠誠心などの基準も問題がないと医者が判断すれば、トランスジェンダーの人たちの入隊を阻害する理由はないというものだ。ただ入隊を認められるケースは非常にまれで、年間18人ほどだという。
ただ連邦工科大学チューリヒ校が実施した調査「セキュリティ2019」によると、一般市民は同性愛者に対しても入隊を認めることに抵抗感を示した。調査では、14%が性的マイノリティの人々が軍の団結に影響を与えかねないと答えた。2020年初めには、男女5万3千人の兵士を対象とした政府調査が予定されている。
将来的には、軍の採用担当者が19歳の新兵に心と体の性を尋ねることを検討している。性別欄に「男性」「女性」のほか「その他」の選択肢も設ける予定だ。すでに軍訓練校などで試験的に実施しており、効果は上々という。
おすすめの記事
欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」
このコンテンツが公開されたのは、
欧州人権裁判所(ECHR)大法廷は10日、スイスが女子陸上五輪金メダリストのキャスター・セメンヤさん(南アフリカ)の権利を侵害したとする2023年の判決を支持した。
もっと読む 欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」
おすすめの記事
スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
このコンテンツが公開されたのは、
抗生物質の開発に特化するスイスの新興バイオ企業ビオヴェルシス(BioVersys)は2日、日本の塩野義製薬と共同研究・独占ライセンス契約を結んだと発表した。
もっと読む スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
おすすめの記事
スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
このコンテンツが公開されたのは、
スイス放送協会(SRG SSR)は政府の予算削減を踏まえた組織再編計画を発表した。4言語圏の放送局のスポーツ、ドラマ、制作、配給、人事、財務、ITサービスなど各部門を縦割りで再編成する。
もっと読む スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
おすすめの記事
スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
このコンテンツが公開されたのは、
米宇宙企業SpaceX(スペースX)が運営する通信衛星「Starlink(スターリンク)」のアンテナ40基をスイス南部の村に設置する計画に対し、反対する声が上がっている。
もっと読む スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
おすすめの記事
スイスでは現金のチップが主流
このコンテンツが公開されたのは、
スイスのレストランでクレジットカードやスマホ決済が普及しているが、チップは今も現金で払うのが主流だ。消費者の多くは、チップが確実にスタッフの手元に入るようことを重視している。
もっと読む スイスでは現金のチップが主流
おすすめの記事
プラタナス、猛暑でも冷却効果 スイスの研究
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの研究所が新たな研究結果を発表し、プラタナスは猛暑でも冷却効果を発揮することが分かった。樹木の冷却効果は30~35℃で限界に達するという既存の仮説を覆す結果が出た。
もっと読む プラタナス、猛暑でも冷却効果 スイスの研究
おすすめの記事
スイス国立銀行、政策金利ゼロに引き下げ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス国立銀行(中銀、SNB)は19日、政策金利を0.25%引き下げて0%にすると発表した。
もっと読む スイス国立銀行、政策金利ゼロに引き下げ
おすすめの記事
欧州外相、ジュネーブでイラン外相と核協議へ
このコンテンツが公開されたのは、
メディア報道によると、ドイツ、フランス、英国の外相は20日、スイス・ジュネーブでイラン外相と核協議を行う見通しだ。
もっと読む 欧州外相、ジュネーブでイラン外相と核協議へ
おすすめの記事
スイス議会、超富裕層への相続税案を否決 対案なく国民投票へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス上院は17日、超富裕層の相続に相続税を課し環境保護の財源にする案を否決した。
もっと読む スイス議会、超富裕層への相続税案を否決 対案なく国民投票へ
おすすめの記事
見えぬ障がい伝えるバッジ、試験配布開始 スイス連邦鉄道
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦鉄道(SBB)は17 日、目に見えない障がいを持つ乗客を対象としたヘルプマークの配布を試験的に開始した。外見からは分からなくても支援・配慮を必要としている人への理解を深めることを目的としている。
もっと読む 見えぬ障がい伝えるバッジ、試験配布開始 スイス連邦鉄道
続きを読む
おすすめの記事
「クリスマスには彼を両親の家に連れていきたい」
このコンテンツが公開されたのは、
いつか結婚したい。結婚したら、子どもを持ってもいい。30歳のダーフィト・ロイエンベルガーさんはそんな夢を抱く。だが、これらはスイスの同性愛者には許されていない権利だ。
もっと読む 「クリスマスには彼を両親の家に連れていきたい」
おすすめの記事
「コウノトリじゃなくて宅急便が息子を届けてくれた」 レズビアンカップルに子供が生まれるまで
このコンテンツが公開されたのは、
法的に正当な形で息子を持ち、社会でも家族として認められること。これがガブリエラさんとOさんの夢だ。2人揃って息子の親として認めてもらうため、これまであらゆる面で戦いを強いられてきた。それでも近い将来、スイスでも同性カップルの権利が保障されるようになると確信している。
もっと読む 「コウノトリじゃなくて宅急便が息子を届けてくれた」 レズビアンカップルに子供が生まれるまで
おすすめの記事
「『普通の人』なんていないことを分かって欲しい」 クィアに生まれ変わるまで
このコンテンツが公開されたのは、
自分は女性であると感じ、社会からも女性として受け入れられたい ― それを勝ち取るためにステラ・グリッターさん(68)はずっと戦ってきた。トランスジェンダーでクィアであるグリッターさんは、社会の枠組みから外れた人間でもありのままの姿でいられる自由な社会が夢だという。
もっと読む 「『普通の人』なんていないことを分かって欲しい」 クィアに生まれ変わるまで
おすすめの記事
「私は男性のまま死にたくなかった」
このコンテンツが公開されたのは、
自殺か、それとも女性として生きるのか。そのジレンマに苦しんできたシュテファニー・シュタルダーさん(48歳)。スイス、ルツェルン州で農業を営むシュテファニーさんはトランスジェンダーだ。葛藤の末に選んだのは生きること。性転換手術を決心した彼女にようやく自由が訪れた。
もっと読む 「私は男性のまま死にたくなかった」
おすすめの記事
同性・異性カップルにベストな制度とは?法律専門家が語る
このコンテンツが公開されたのは、
現在スイスの家族法では、異性間の結婚と同性間のパートナーシップ登録が認められているが、異性・同性の事実婚など、他の新しい共同生活のかたちも法制化すべきだろうか?
もっと読む 同性・異性カップルにベストな制度とは?法律専門家が語る
おすすめの記事
男性、女性、ホモ・ヘテロセクシャル 消える境界線
このコンテンツが公開されたのは、
レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーに属する人々をその頭文字を取って「LGBT」と呼ぶ。「こういった性的指向や性的なアイデンティティーを持つ人は、今でも暴力や差別の対象となり社会的に孤立しやすい」とジェンダー問題の専門家、キャロリン・ダイエールさんは言う。
もっと読む 男性、女性、ホモ・ヘテロセクシャル 消える境界線
おすすめの記事
同性愛者も外国人も対象に 国がHIV予防啓発
このコンテンツが公開されたのは、
12月1日は世界エイズデー。スイスではどのようなHIV(エイズウイルス)感染予防の取り組みが行われているのか。またスイスの今日のセックス事情は?
もっと読む 同性愛者も外国人も対象に 国がHIV予防啓発
おすすめの記事
男性同性愛者の献血、いまだに禁止
このコンテンツが公開されたのは、
ウソをつかなければ人助けができない。これが、スイスで献血を望む男性同性愛者の置かれる状況だ。スイスではエイズ感染の拡大予防措置として、男性同性愛者の献血が禁止されている。だがこの差別的な禁止措置の解除を求める声が高まっている。
もっと読む 男性同性愛者の献血、いまだに禁止
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。