おすすめの記事 スイスの政治 第1回世論調査 新エネルギー法は可決の見通し このコンテンツが公開されたのは、 2017/04/20 スイスでは5月21日、国民投票で新たなエネルギー法の可否が問われる。スイス放送協会(SRG SSR)の委託を受けた世論調査機関gfs.bernの行った第1回世論調査によると、61%が脱原発を定める新エネルギー法に賛成と回答。投票率は45%と予想されている。 新たに策定されたエネルギー法は、脱原発と再生可能エネルギーの推進を掲げるスイス政府の「エネルギー戦略2050」を土台にしたもので、連邦議会ではすでに承認されている。第1回世論調査によれば、回答者の61%が賛成、30%が反対で、まだ決めていないと答えた人は9%だ。 新エネルギー法は、スイス国内にある原子力発電所全5基の順次廃止に加え、再生可能エネルギーの促進と省エネ推進に焦点を当てている。安全なエネルギー供給を保証し、化石燃料への依存を減らすことが目的だ。 有権者はすでに意見形成 調査を請け負ったgfs.bernは、第1回調査結果はあくまでも現時点での傾向を示すものだとしながらも、同機関のクロード・ロンシャン取締役会長は6日の結果発表で、新エネルギー法が可決される可能性が高いと述べた。 確かに、投票に向けた各陣営のキャンペーンは始まったばかりで、今後何か動きがあるかもしれない。だが、今回の調査結果が覆えるほどの変化はないとみられている。調査回答者の52%が「今後意見を変えるつもりはない」と答えているからだ。 「スイスでは、定期的にエネルギー政策に関する国民投票が行われている。そのため、今の段階ですでに有権者の意見が固まっていてもおかしくない」と、政治学者でもあるロンシャン氏は言う。今回の77回目の世論調査結果発表を最後に会長の座を退く同氏によれば、現段階ですでに有権者の意見が形成されているのが、今回の投票のカギだという。「第1回世論調査の数字としては、今までになく高い数字だ」 新エネルギー法をめぐる議論の内訳では、将来につながる雇用創出の見通し(賛成73%)、身近な再生可能エネルギーの使用(61%)、脱原発(54%)などが大きな支持を得ている。 反対派では、官僚主義への批判(63%)、コスト増(56%)などが新エネルギー法反対の主な理由として挙がっている。だが一方で、新法の可決により国のエネルギー供給が脅かされると考える人は回答者のわずか37%に留まった。 どこから見ても可決の見通し 有権者の意見がすでに固まっているということが、新エネルギー法可決が予測される唯一の理由ではない。 政党レベルで見ると、反対を表明しているのは、今回の国民投票のきっかけとなるレファレンダムを起こした右派・国民党(党員54%が反対)のみ。無所属を含むその他の政党では、各政党で賛成が60%を下回ることはなく、左派政党に至っては、緑の党で賛成83%、社会民主党で87%と、驚異的な数字が出ている。言語地域間での意見差もほとんどなく、賛成はフランス語圏で68%、ドイツ語圏57%、イタリア語圏68%。 また、平均的な収入と教育レベルを持つ「中間層」で賛成が多いことも、新エネルギー法可決が予測される根拠になるとロンシャン氏は言う。 ロイトハルト効果 新エネルギー法賛成派には、大きな切り札がある。大統領を兼任するドリス・ロイトハルト環境・運輸・エネルギー・通信相だ。脱原発とエネルギー戦略2050を進める中心的人物であり、調査回答者の65%がエネルギー政策においてロイトハルト氏を信頼していると答えている。 ロンシャン氏は、「大統領に対する支持率がこれほど高いのは、スイスの特徴だ」と話す。「例えばフランスでは、オランド氏やサルコジ氏、シラク氏でも、支持率はすぐに20%以下に落ち込み、再び支持率が上がることはなかった。そう考えると、支持率65%というのは驚異的な数字だ」 gfs.bernは、「政府やロイトハルト氏に対する信頼度が、今回の国民投票で有権者の支持を勝ち取る上で大きな影響を与えるだろう」と分析している。国民投票に関する世論調査 スイスインフォの親会社であるスイス放送協会(SRG SSR)の委託を受けて、世論調査機関gfs.bernが実施。 今回は3月20~31日の期間に1203人が電話で回答した。誤差の範囲はプラス・マイナス2.9ポイント。 在外スイス人は、データ保護の観点から調査機関が個人情報にアクセスできないため、調査対象外になっている。 もっと読む 第1回世論調査 新エネルギー法は可決の見通し
おすすめの記事 スイスの政治 あなたの「スイス知識度」はどのくらい? このコンテンツが公開されたのは、 2017/04/18 あなたの「スイス知識度」はどのくらいだろうか?国土の7割が山という事実はよく知られているかもしれない。青く澄んだ湖のイメージも浸透していそうだ。だが、大麻の消費量や離婚率については?スイスインフォで知識度をチェックしてみよう。たった数分で、あなたもスイスのエキスパートになれるはず。 スイスではモルモットの単独飼育は法律違反である。少なくとも2匹以上で飼わなくてはならない。ジェームズ・ボンドの母親はスイス出身。スイス人女性の平均初産年齢は高めで、30歳ちょっと過ぎ。アインシュタインは相対性理論を公表した当時、ベルンの特許局に勤めていた。その他、スイス人女性に国政レベルの参政権が与えられたのは1971年だった…などなど。こういったことを全て知っている人がいたら、その人はスイスに関して立派なエキスパートだと言える。 もっと読む あなたの「スイス知識度」はどのくらい?
おすすめの記事 スイスの政治 投票キャンペーン ベルンで金貨の雨が降る このコンテンツが公開されたのは、 2017/04/08 国民投票の前には、他の国と同様にスイスでも投票キャンペーンが行われる。優れたキャンペーンが良い投票結果を保証するわけではないが、過去にはベーシック・インカム導入賛成派が新品の5ラッペン硬貨を連邦議事堂前に山積みにして賛成をアピールするなど、人々の記憶に強く残るキャンペーンもあった。 スイス通貨の最小単位である5ラッペン。この金色に光る5ラッペン硬貨をスイスの人口と同じ800万個用意し、ベルンの連邦議事堂前に山積みにしたキャンペーンは、ベーシック・インカム(最低生活保障、最低所得保障)導入賛成派によるもので、ここ数年で最も反響が大きかった。 同キャンペーンではその場にいた誰もが、総額およそ4400万円に相当する5ラッペンの山に飛び込み、好きなだけ洋服のポケットに硬貨を詰めて帰ってよいとされた。まさにそこに、働いているかいないかにかかわらず、スイスに住む全ての人に必要最低限のお金を支給するというベーシック・インカム導入案の核となるメッセージが込められていた。 もっと読む 投票キャンペーン ベルンで金貨の雨が降る
おすすめの記事 スイスの政治 なぜスイス国民は、法人税改正法案に反対したのか? このコンテンツが公開されたのは、 2017/04/07 今年2月21日に行われた国民投票で、法人税改正案が否決された。これは、中間層が強く反対したからだといわれている。(RTS/swissinfo) この法案の一つの目的は、実質的には外国で事業を展開する持株会社や管理会社などに対する法人税の特別優遇措置を撤廃し、スイス国内の他の会社と同じ税率にすることだった。 反対派は、改正によって法人税収に生じる不足額の約30億フラン(約3300億円)を負担するのは結局、一般市民であり普通の納税者であると主張。これは特に中間層にショックを与え、法人税改正案の否決へとつながった。 もっと読む なぜスイス国民は、法人税改正法案に反対したのか?
おすすめの記事 スイスの政治 欧州の難民申請 その動向 このコンテンツが公開されたのは、 2017/04/05 2015年、欧州には大量の難民が押し寄せ、難民申請希望者の登録数は130万件を超えた。現在は若干の減少傾向にあるものの、申請件数は依然として14年の2倍となっている。 2016年、EUおよびEFTA諸国(スイス、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン)で登録した難民申請希望者は123万人以上。シリア、アフガニスタン、イラクといった紛争地域の国からの出身者が半数以上を占めた。 もっと読む 欧州の難民申請 その動向
おすすめの記事 スイスの政治 マールアラーゴのスイス不動産王 このコンテンツが公開されたのは、 2017/04/03 物議をかもすスイスの不動産開発業者が最近、トランプ米大統領が所有する米フロリダ州パームビーチの高級会員制リゾート施設、マールアラーゴの会員になった。 ウルス・レーダーマン氏は、都市区を開発し高所得者層向けに変身させることで知られる、チューリヒ郊外出身のたたき上げの起業家だ。同氏に対する評価は賛否両論だ。メディアがレーダーマン氏の出世をつぶさに追ってきた一方で、住宅所有者たちは、同氏の成長中の会社に不動産を売るよう圧力をかけられたとして、そのやり方を批判している。そんなレーダーマン夫妻が、「冬のホワイトハウス」とも呼ばれるマールアラーゴの会員となった。 数年前から友人とマールアラーゴを訪れているレーダーマン氏は、近年夫婦ともに米国で過ごす時間が増えたため、昨年、会員になることに決めたと話す。 もっと読む マールアラーゴのスイス不動産王
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おすすめの記事 スイスの政治 イタリア人移民がエリトリア人移民を支援 ベルンで文化交流 このコンテンツが公開されたのは、 2017/03/29 スイスに住むイタリア人移民は、今でこそ現地の社会にすっかりなじんでいるが、異国での生活やよそ者扱いされるつらさを誰より良く知っているため、移民のお手本のような存在だ。そうしたことから、ベルンにあるイタリアのカトリック布教団が、近年増加するアフリカのエリトリア人難民の支援活動を始めた。同団体が開いたお祭りでは、料理とダンスで両国の移民が交流した。 もっと読む イタリア人移民がエリトリア人移民を支援 ベルンで文化交流
おすすめの記事 スイスの政治 過去へといざなう国連の片隅 このコンテンツが公開されたのは、 2017/03/25 この「外交の足跡」と題する写真シリーズには、人は誰も写っていない。その選択は、想像の世界や時間の旅への扉を開くために意図的になされたものだ。ヴェルモ氏外部リンクは次のように綴っている。 「訪問者は国連の建物内の多くの… もっと読む 過去へといざなう国連の片隅