トランプ訪日、実名告発..スイスのメディアが報じた日本のニュース
スイスの主要報道機関が10月22日~28日に伝えた日本関連のニュースから、①トランプ米大統領が訪日②実の娘への性的暴行で父親に有罪判決、の2件を要約して紹介します。
あの手この手でドナルド・トランプ大統領の心を捉えようとする高市早苗首相。関税発表前夜の電話会談で、高額投資を要求するトランプ氏に「ばかげている」と言い放ったスイスのカリン・ケラー・ズッター大統領とは正反対な印象です。スイスメディアの報道ぶりからは、そんな対比がにじみ出るようです。
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トランプ米大統領が訪日
ドナルド・トランプ米大統領が27日、第2次政権で初めて日本を訪れました。29日にはアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の開催地韓国に移り、翌日は中国の習近平国家主席との会談も予定されています。アジア歴訪が緊迫する地政学のなかでどのような意味を持つのか、スイス各紙が注目しています。
ターゲス・アンツァイガーなどドイツ語圏主要紙に掲載されたスイス通信社Kestone-SDAの記事は、中国への対抗という点で日米が同盟を強化したと報じました。「両国の共通のライバル」である中国がレアアース(希土類)をほぼ独占し、米中貿易摩擦のなかで供給に制限がかかっています。
記事は、日米の協力関係を強化することで「米国政府は中国への依存度を減らすことを目指している」と説明。また高市氏は「中国の権力欲の高まりと北朝鮮のミサイル・核開発計画の脅威」を警戒し、米国との安全保障同盟の強化を重視していると伝えました。
ドイツ語圏の大手紙NZZは、関係強化のため日米が互いにあらゆる切り札を出し合ったと報じています。高市首相の目標は、7月の関税合意を基盤として「トランプ大統領にアジアにおける安全保障政策への関与を認めさせること」だといいます。
高市氏が出した切り札の1つは「天皇陛下への謁見」でした。NZZは、バラク・オバマ元大統領が2009年に当時の天皇陛下(現上皇)に謁見した際は握手しながら深々とお辞儀をしたのに対し、トランプ氏は握手しながら「肩を軽くたたいた」という違いを指摘しました。天皇陛下との謁見は、「外国の国賓としてはトランプ氏が初めて」としてオンラインメディアgmxも動画付きで伝えています。
一方、フランス語圏大手紙ル・タンなどに掲載された仏AFP通信の記事は、高市氏の切り札は「同氏の師・安倍晋三前首相との親交」だと伝えています。高市氏が28日、トランプ氏に安倍氏との「揺るぎない友情」に感謝の意を示したと伝えました。「79歳の大富豪(トランプ氏)の機嫌を良くするため」に安倍氏が生前使っていたゴルフクラブなどを贈呈したことも伝えています。
ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)はこれを「日本側は、トランプ大統領が安倍首相との友情を繰り返し想起するような形で今回の訪問を企画した」(東京在住ジャーナリストのマルティン・フリッツ氏)と伝えました。さらに、高市氏が赤坂離宮にトランプ氏の愛車フォード車F-150を並べたことも紹介しています。
しかし「日米関係には火種が少なくない」ともフリッツ氏は指摘。関税引き下げの代わりに日本が5500億ドルの投融資を約束したことについて、「日本のエリート層では屈辱にも似た感情が漂っている」。しかし、今回の訪問中は「終始笑顔でやり過ごした」と結びました。(出典:NZZ外部リンク、ターゲス・アンツァイガー外部リンク、gmx外部リンク、SRF外部リンク/ドイツ語、ル・タン外部リンク/フランス語)
娘への性的暴行で父親に有罪判決
富山地方裁判所は21日、2016年に当時高校生だった実の娘の福山里帆さん(25)に性的暴行をしたとして、大門広治被告(54)に準強姦罪で懲役8年の判決を言い渡しました。仏AFP通信の記事は日本語でも配信外部リンクされていますが、bluewin.chなどフランス語圏のスイスメディアにはその続きも掲載されています。
記事は、この事件が実名で告発されたことに注目し、「保守的な(日本)社会では、強姦の被害者は口を閉ざすことが多い」と強調。日本の女性の8%が同意のない性行為を経験しているにもかかわらず、警察に通報したのはわずか1%で、55%は沈黙を守っているという政府統計を引用しました。
実名告発した例としてジャーナリストの伊藤詩織さんや元陸上自衛官の五ノ井里奈さんの名を挙げ、2人とも「その勇気を称賛されたが、同時にネット上で憎悪の波にもさらされた」と伝えています。
また日本では他の国ほど大規模な#MeToo運動は起きていないものの、「2019年に強姦罪で告発された数人の男性が無罪となったことを受けて、日本各地で性暴力に反対する小規模な集会が開かれるようになった」と指摘。2017年に強姦の定義が拡大されたこと、23年には被害者の立証責任が撤廃されたという法改正も潮流変化に貢献していると報じました。(出典:bluewin.ch外部リンク/フランス語)
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パン食が中心のスイスで、数年前から稲作が始まり、注目を集めています。気候変動による環境の変化に対応する目的で、政府の支援を受けて始まったプロジェクト。日本から取り寄せた機械を使い、北海道原産のジャポニカ米も生産されています。
稲作のど素人だった農家のレアンドル・ギヨさんは、今では「稲について考えない日はない」と話します。
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校閲:大野瑠衣子
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