衆院選、市場不安、つられション… スイスのメディアが報じた日本のニュース
スイスの主要報道機関が1月28日~2月3日に伝えた日本関連のニュースから、①「鉄の女」が挑む衆院選②日本の市場不安、スイスにも影響③チンパンジーの「つられション」――の3件を要約して紹介します。
学生のとき、休み時間のたびに友達と連れ立ってトイレに行っていました。手を洗ったり髪を直したりする間、部活や恋愛の話をするのがまた楽しいんですよね。まさかチンパンジーにも同じような習性があったとはーー。驚きです。
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高市首相の圧勝シナリオ、雪の影響は?
ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーは、日本初の女性宰相となった高市首相が、2月8日投開票の衆院選に向けて打った「解散という賭け」の行方を注視しています。記事は冒頭で、高い支持率を背景に勝利を確信していた高市氏の前に、「記録的な豪雪」という予期せぬ物理的障害が立ちはだかったと指摘。積雪で投票所運営に支障が出るなど、緻密な戦略家とされる彼女が自然要因によって「圧勝シナリオ」を狂わされるリスクを皮肉を交えて伝えています。
同紙が特に注目したのは、高市氏の躍進を支える「対中強硬姿勢」と国民の安保不安の関係です。記事は、高市氏が台湾有事を「存立危機事態」と言及、これに中国側が過激に反発したことが有権者の安保不安をあおり、結果的に内閣支持率を押し上げたと分析しています。
「中国はおそらく当初、高市政権を倒そうという発想だったと思う」と、防衛事務次官などを歴任した島田和久氏はロイター通信に語ります。「少数与党で政権基盤が弱いと、中国は足元を見る。だから今回の選挙は非常に重要だ」。中国に脅威を感じている人たちの間で支持率が上昇している現状を高市氏は利用しようとしており、その思惑はうまくいっているとNZZは分析します。雪さえ邪魔をしなければ、日本初の女性首相にとって、大きな勝利となる可能性がある、と記事は結んでいます。
(出典:ターゲス・アンツァイガー外部リンク/ドイツ語、nau.ch外部リンク/ドイツ語)
揺らぐ「安定の地」:高市政権の財政拡張に警戒する市場
ドイツ語圏の日刊紙NZZは、日本の30年物国債利回りが急上昇し、円相場も不安定化している現状に触れ、これまで「安定の地」とされてきた日本の評価が揺らいでいると報じています。
NZZはその背景として、高市早苗首相による大規模な財政拡張策と、インフレ高止まりを受けた日本銀行の金融引き締めという両者の政策の「ねじれ」があると指摘します。政府は財政出動で景気を刺激したい一方、日銀は金融引き締めを進めようとしており、両者の方針は対立しています。日本の政府債務はGDP比230%に達し、利払い費はすでに歳出の4分の1を占めます。首相が利上げを批判する姿勢は、「インフレによる債務軽減」を狙っているのではないかとの疑念を招き、投資家の警戒感を強めている、と記事は指摘します。
この問題は日本国内にとどまりません。NZZは、日本が米国最大の債権国であり、米国債の約13%を保有している点を強調します。日本国債の利回りが上がれば、日本の金融機関が米国から資金を引き揚げる可能性があり、米国の金利上昇を招きかねません。スイスの視点から見れば、日本の財政不安はすでに「世界の問題」になりつつある、と記事は指摘します。
また仏語圏の日刊紙ル・タンは、日本の財政不安とそれに対する米国の防衛的な通貨・金利政策の結果、資金は行き場を失い、安全通貨として残ったスイスフランに集中している、と警告します。スイスにとっては輸出競争力を直撃する極めて厳しい環境であり、「被害者」となったフランの上昇圧力は当面続く可能性が高い、と結んでいます。
(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語、ル・タン外部リンク/フランス語)
チンパンジーの「つられション」
スイス公共放送(SRF)は、日本の京都大学野生動物研究センターなどの研究チームが発表した、チンパンジーの集団で「排尿の伝染」が見られるというユニークな研究結果について報じました。
研究チームが飼育下のチンパンジーのトイレ行動(約1300回)を約600時間観察したところ、チンパンジーたちがある程度タイミングを合わせて排尿していることがわかりました。
注目されたのは、社会的な「近さ」ではなく「序列」が排尿行動に影響している点です。人間の「伝染性あくび」とは異なり、チンパンジーの場合、地位の低い個体が優位な個体につられて排尿する傾向が強く、また最初に排尿した個体の近くにいるほど、他の個体も排尿しやすいことが分かりました。
研究チームは、この「伝染性排尿」が集団の結束を強めたり、協調行動への準備を示したりする役割を果たしている可能性があると指摘。専門家は、こうした行動は飼育下に限らず野生でも見られる可能性があり、人間を含む社会的動物に共通する行動様式かもしれないと分析しています。
(出典:SRF外部リンク/ドイツ語)
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スイスは武力紛争当事国への自国製兵器の輸出・再輸出を規制してきましたが、議会は昨年末、その規制を緩和する法改正案を可決しました。欧州諸国が冷戦期以来の速度で再軍備を進める中、輸出に頼る防衛産業を後押しする動きです。政府高官は、武器輸出と中立性は矛盾しないと強調しますが、果たして本当にそうなのでしょうか。詳しくはこちらの記事へ。
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次回の「スイスメディアが報じた日本のニュース」は2月11日(水)に掲載予定です。
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校閲:上原亜紀子
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