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武田薬品、相撲、キャラ婚… スイスのメディアが報じた日本のニュース

Takedaと書かれた看板と生産施設
武田薬品のヌーシャテル工場。11月26日に新生産ラインの開所式が行われた Keystone/SWI swissinfo.ch

スイスの主要報道機関が11月26日~12月2日に伝えた日本関連のニュースから、①武田薬品、ヌーシャテル工場を拡張②女人禁制の相撲③キャラ婚が増える理由、の3件を要約して紹介します。

スイスには「シュヴィンゲン」という相撲によく似たスポーツがあり、国技とされています。着衣の上にまわしのようなベルトを着けるため、男女問わずできるスポーツではあるのですが、スイス女子シュヴィンゲン協会外部リンクによると現役の力士は180人。男子協会の会員が5万人を超えるのに比べると、超少数派です。そんなスイスのメディアに、女性は土俵に立ち入るすることすらできないという日本の相撲はどのように映るのでしょうか。

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武田薬品、ヌーシャテル工場を拡張

スイス西部ヌーシャテルにある武田薬品の工場に、血友病治療薬を製造する新生産ラインが開設され、26日に開所式が開かれました。2億フラン(約380億円)を投じた大規模な拡張です。フランス語圏のスイス公共放送(RTS)は、製薬業界に先行き不透明感が漂う中での生産拡大を肯定的に報じています。

武田薬品はチューリヒ州オプフィコンにスイス本社を置き、ヌーシャテル工場では約700人を雇用しています。RTSは、生産ラインの拡充は3年前に決まったものですが、「スイス製薬業界にとって不確実なタイミングでの操業となった」と伝えています。ドナルド・トランプ米大統領が各国製薬企業大手に対し、アメリカでの生産を増やすよう圧力をかけているからです。

武田スイスのカントリーヘッド、トーマス・ウォスニフスキー氏はRTSに「当社はグローバル戦略とネットワークを持ち、アメリカで強力な存在感を築いているため、関税の影響は対処可能な範囲にある。しかし、状況を注視していることは確かだ」と語りました。

開所式にはスイスのギー・パルムラン経済相も出席。RTSに「スイスの環境の優れた点、すなわち安定性、税制、そして人材育成といった点をアピールしなければならない」と語りました。(出典:RTS外部リンク/フランス語)

女人禁制の相撲

初の女性首相は大相撲の総理大臣杯を授与できるのか?高市早苗首相の就任以来その行く末が注目されてきましたが、大相撲九州場所で初優勝した関脇安青錦関に内閣総理大臣杯を渡したのは代理の首相補佐官でした。RTSは宗教トピックを取り上げるラジオ番組「RTSレリジョン」で、その背景を宗教的観点から解説しました。

ジュネーブ大神学部出身のジャーナリスト、ジェシカ・ダ・シルバ氏は、高市氏は20カ国・地域(G20)首脳会議に出席するため千秋楽直前に出国していたと説明し、「これは偶然なのか、それとも議論を避けるためなのか」と問いかけました。そして「相撲界への女性の参入に関する議論が日本で再燃している」と伝えています。

また相撲が日本の伝統的宗教である神道に根差した武道であると紹介。現在、プロ力士は男性に限られているものの、「歴史的には女性も相撲を取っていた。雨や豊作を祈る儀式に参加していた」と解説しました。女性が排除されるようになったのは19世紀で、相撲に限らず寺院や霊山、宗教行事でも女人禁制が広がったと言います。

ダ・シルバ氏は、現在日本には600人以上の女性がアマチュア力士として活躍しており、「認められるのを待っている」と解説。しかしそのきっかけを作るのは日本初の女性首相ではない、と位置付けたうえで、「皮肉なことに、神道の最高神・天照大神は太陽の女神だ」と付け加えました。(出典:RTS/フランス語)

キャラ婚が増える理由

日本で若い男女がアニメや漫画など「二次元」のキャラクターと結婚するのはなぜ?フランスの人類学者・作家のアニエス・ジアール氏が10月、「Les amours artificielles au Japon: flirts virtuels et fiancées imaginaires(仮訳:日本の人工的な愛~仮想の誘惑と空想の婚約者)」と題する本を出版しました。24heuresなどスイス・フランス語圏の地域紙に掲載されたインタビューで、ジアール氏が日本の結婚観を解説しています。

ジアール氏は、日本で婚姻数が減り独身者が激増している理由として「90年代以降の経済不況により、夫婦や家族というものが、一部の人々にとって完全に手の届かないものとなってしまった」ことを挙げました。しかしキャラ婚が増加しているのは腹いせや生身の人間の代替ではなく、「古典的な結婚をパロディ化することで、これらの人々は規範に従うことを拒否していることを公然と表明している」のだと説明します。

その証左に、キャラ婚をする女性たちは節約家ではなく、むしろ浪費をします。これも、浪費して何も残さないことにより、社会全体に「何も生まれない、子供もなく孤独に死ぬような状況にあなたを追い込んでいるのだから、今を最大限に利用して愛に生きたほうがいい」というメッセージを送っている、とジアール氏は読み解きます。

こうした現象が欧州でも起きるのか、という問いに対し、ジアール氏は既に起きている、と答えます。同氏によると、AI彼氏・彼女との恋愛プラットフォームが今年4月時点で110件もあったといいます。うち52%はアメリカ拠点、10%は中国拠点で、むしろ日本は遅れているとのこと。「未来への不安、システム全体への不安という共通の文脈の中で、架空の存在に惹かれるのは皆同じだ」と指摘しました。(出典:24heures外部リンク/フランス語)

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話題になったスイスのニュース

11月30日に実施された国民投票では、超富裕層に50%の相続税を課す「相続税イニシアチブ」と、女性にも兵役を義務付ける「市民奉仕イニシアチブ」がともに大差で否決されました。「富裕層への課税強化」というアイデアそのものはスイスだけでなく世界中で支持されるものの、具体化となると成功する事例はわずか。投票結果の解説記事で、その理由を探りました。

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