解散、日韓、PCエンジン… スイスのメディアが報じた日本のニュース
スイスの主要報道機関が1月14日~20日に伝えた日本関連のニュースから、①高市首相、解散総選挙を発表②「まるでディープフェイク」な日韓接近③レトロゲーム「PCエンジン」の魅力、の3件を要約して紹介します。
あれよあれよという間に衆院解散・総選挙が決まってしまいました。在外日本人として心配されるのは、在外投票が間に合うのかどうか。電撃で解散を決めるならば、スイスのようにこつこつオンライン投票システムを整えてほしいなと思います。
「スイスのメディアが報じた日本のニュース」ニュースレター登録はこちら
高市首相、解散総選挙を発表
高市早苗首相は19日、衆議院を解散し総選挙を行うと発表しました。フランス語圏メディアの多くはスイス通信社Keystone-ATSの報道を転載。「首相はより強い信任を得るために、自らの政治的将来を危険にさらしている」と報じています。
電撃解散が日中関係の緊張のなかで行われることを強調し、高市政権が信任を得れば中国がさらに経済制裁を強める可能性があると指摘しました。また昨年の参院選で外国人排斥を掲げた参政党が躍進したことを引き合いに、「高市氏は移民に関するより厳しい規制を発表する可能性がある」と伝えています。
スイス公共放送(SRF)などスイス通信社Keystone-SDAを転載したドイツ語圏メディアは、解散は「リスクがないわけではない」と報じました。「高市氏の絶大な人気が、所属政党である自民党に波及するかどうかは、まだ不透明」だからです。また立憲民主党と公明党の合流を「高市氏率いる保守連合に代わるリベラルな選択肢」として紹介しています。
ドイツ語圏の大手紙NZZは、高い支持率や株高に支えられた高市政権が「今や行き過ぎたのではないか」との疑問を呈しました。党内調整もそこそこに解散を決めたこと、27年ぶりに連立相手だった公明党の支持無しの選挙となることなどを挙げ、「議席、国の新たな希望としての評判、最終的に権力など、すべてを失うことになる可能性がある」と指摘しました。
ドイツ語圏の経済紙フィナンツ・ウント・ヴィアトシャフト(FuW)は、選挙観測が流れた時点から市場で株高・債券安・円安が進んでいたことを解説。高市氏の積極財政方針に株式市場は期待をかける一方、債券市場は財政悪化の懸念を膨らませているとしています。
円安の背景には、物価上昇に照らして日銀の利上げが遅れていることがあると説明しています。フランスの資産運用会社Carmignacのチーフエコノミスト、ラファエル・ギャラルド氏は同紙に「円安は、日銀がインフレ抑圧に必要なペースで実質金利を正常化することを、政府が妨げているのではないかという懸念を反映している」と話しました。(出典:ル・タン外部リンク/フランス語、SRF外部リンク、NZZ外部リンク、FuW外部リンク/ドイツ語)
「まるでディープフェイク」な日韓接近
日本と韓国の首脳が並んでドラムを叩き、人気アイドルグループBTSの楽曲に合わせて交流する——1年前なら「まるでディープフェイク」と思われそうな場面が、13日に奈良で開かれた日韓首脳会談では現実となりました。ドイツ語圏大手紙NZZの特派員マルティン・ケリング記者が、その背景を開設しています。
記事によると、超保守派の高市首相と、左派・反日で知られた韓国の李在明(イジェミョン)大統領が理解し合えるとは誰も信じていませんでした。「20世紀前半の日本の韓国併合に関するイデオロギーの隔たりは深すぎた」。しかし米中対立や日韓が置かれた日本の不安定な状況がそれを可能にしました。
昨秋の初会談以来、2人は親密な関係を誇示してきました。そして今回、「中国が米国の同盟国である日韓を分断させようとしたにもかかわらず」、両国は日韓・日米韓同盟の強化を確認しました。中国は李大統領に対し台湾問題で距離を置くよう露骨に警告する一方、高市首相には経済・外交両面で圧力を強めていました。
特にケリング氏が注目したのは、会談のタイミング。李大統領が中国訪問を終えたわずか1週間後に日本を訪れたことで、北京が仕掛ける「日韓分離工作」への懸念が払拭された、と記事は指摘します。
また会談自体は大きな成果を伴わなかったものの、両国が「シャトル外交」の継続を再確認し、定期的で安定した対話を復活させたことの意味は大きい、とケリング氏は評価しています。安倍晋三政権期や文在寅(ムン・ジェイン)政権期は歴史問題のために交流が途絶えたことや、親日派の尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領の失脚で日米韓同盟の将来が危ぶまれたことを紹介しました。
反日だった李氏が「実利外交」に転じた背景として、記事は北朝鮮の核・ミサイル開発、尖閣諸島周辺での中国の進出、台湾周辺への圧力など、両国が共通して直面する安全保障上の脅威があることを説明します。
さらにケリング氏は、日韓が抱える3つの構造的課題(米国のアジア戦略の不確実性、中国への経済依存、日韓の歴史・領土問題)を列挙。それでもなお両国が協調に向かうのは、「イデオロギーより現実が優先される」ためだ、という韓国陸軍特殊戦司令部の全仁釩(チョン・インボム)元司令官の言葉を紹介しました。(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)
レトロゲーム「PCエンジン」の魅力
NECが1987年に発売した家庭用ゲーム機「PCエンジン」。スイスのオンラインメディアwatsonドイツ語版は、2020年に発売された復刻版「PCエンジン コアグラフィックスmini」について、多くのレトロゲームファンが「当時手に入らなかった名作」を楽しめる、と紹介しました。
記事によると、オリジナルの PCエンジンは、当時としては高度なグラフィックとサウンド性能を備え、16ビットのビデオチップによって印象的なゲーム体験を提供しました。1989年には 北米でも発売されたものの、セガや任天堂といった強力な競合が存在したため、成功には至らなかったとしています。
NEC はその後も CD-ROM 拡張機能など多様な派生モデルを投入し、高性能な携帯機まで展開。「技術的には競合製品をはるかに上回っていた」ものの、一般市場では普及しなかったと説明しています。しかし、そうした拡張こそが欧米のゲーム愛好家にとって「当時のゲーム雑誌でしか見られない、エキゾチックなゲーム機」という存在に昇華した、と説明しています。
1980年代後半~90年代初頭、「夢のような存在であり続け、多くの困難と多額の費用をかけて初めて子ども部屋に持ち込める、異国情緒あふれるマシン」としてPCエンジンをうらやましく思っていたという筆者。復刻版は絶対に手に入れたいと、惜しげもなく数百フランをはたいたと言います。
筆者はお勧めゲーム10作品を紹介したあと、次のように締めくくります。「数々の素晴らしいロールプレイングゲームや、今でも色褪せない個性的なフラッグシップタイトルが、当時の日本のビデオゲーム業界の独自性を物語っている」(出典:watson外部リンク/ドイツ語)
【スイスで報道されたその他のトピック】
【動画】日本では推しキャラと結婚できる!外部リンク(1/14)
ヴヴェイのイェニッシュ美術館で日本版画展外部リンク(1/14)
日米、ミサイルの共同生産拡大で合意外部リンク(1/16)
FCルツェルン安部大晴選手インタビュー外部リンク(1/17)
東京近郊で早くも寒桜が見頃外部リンク(1/17)
スイスでも活躍 アルペンスキーの相原史郎選手外部リンク(1/19)
話題になったスイスのニュース
スイスでは3月8日、公共放送の受信料をめぐる国民投票が実施されます。強制徴収の受信料を1世帯335フランから200フラン(約3.9万円)に引き下げ、企業は徴収対象から外す案です。Netflixなど配信事業が台頭するなか、公共放送は娯楽・情報番組を廃し「公共にとって不可欠なサービス」に集中すべきだ、と賛成派は主張しています。
一方、反対派は、受信料引き下げは「スイスの公共放送の多様性と質」を脅かすと反論しています。受信料を大きな財源とするスイスインフォの事業にも影響します。
おすすめの記事
【解説】SRGイニシアチブ「200フランで十分!」とは
週刊「スイスメディアが報じた日本のニュース」に関する簡単なアンケートにご協力をお願いします。
いただいたご意見はコンテンツの改善に活用します。所要時間は5分未満です。すべて匿名で回答いただけます。
次回の「スイスメディアが報じた日本のニュース」は1月28日(水)に掲載予定です。
ニュースレターの登録はこちらから(無料)
校閲:宇田薫
JTI基準に準拠
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。