スイスの視点を10言語で

スイス検察がロシア制裁違反を捜査 一部報道

油田
KEYSTONE

スイスに拠点を置く商品取引会社2社が海外子会社を通じて対ロシア制裁を回避した疑いがあるとして、スイス当局が捜査に着手した。ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)が12日報じた。

商品取引​​会社は、アラブ首長国連邦(UAE)など湾岸諸国にある子会社を通じ、スイスの対ロシア制裁を回避したとされる。こうした回避手法についてはかねて噂されていたが、今回初めて当局の捜査対象になった。

ロシアによるウクライナ侵攻後、スイスはロシアの戦争資金源を断つため、欧州連合(EU)に足並みをそろえてロシア産原油・石油製品の価格に上限を設けるなど貿易規制を講じた。

制裁を受け、スイスの商社は事業を国外の子会社に移した。ロシアに対して同じような制裁を科していない湾岸諸国が移転先に選ばれた。だがこの方法による制裁回避は違法となる可能性がある。スイスの親会社と国外子会社の間で資金がやり取りされる場合や、スイスから子会社に業務指示が送られる場合だ。

重大な違反行為

スイスの連邦経済省経済管轄局(SECO)は長らく、少なくとも商品取引会社3社に違反の可能性があるとみて監視してきた。2社に関して証拠が集まり、SECOは特に重大な違反行為であると判断。調査結果を追加捜査のためスイス連邦検察庁に引き渡した。確かな情報筋がSRFに明らかにした。

対ロシア制裁の発動以来、連邦検察庁がこうした違反調査を引き継ぐのは初めて。スイスの禁輸法によれば、これは特に深刻な違反行為に限り可能だ。軽微な違反はSECO自身が追跡し、処罰することができる。

検察庁もSECOも、該当2社に関する公式声明を発表していない。検察庁はSRFの取材に対し、さまざまな調査が進行中であると述べるにとどめた。検察庁は起訴に向けた第1歩として、正式な手続きを開始するかどうかを決定する必要がある。

SRFは2社のうち1社の社名を突き止めた。同社は弁護士を通じて、検察庁から連絡は受けていないとSRFに語った。両社には最大100万フラン(約1億7000万ドル)の罰金が課されるが、推定無罪が適用される。

英語からの翻訳:ムートゥ朋子

ニュース

ロジャー・フェデラー

おすすめの記事

フェデラーの艇庫建設に反対運動 「湖岸への出入りを阻害」

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの元テニス選手、ロジャー・フェデラーさんが計画するチューリッヒ湖畔のボートハウス(艇庫)建設に対し、「人々の湖畔の往来を阻害する」として反対する声が上がっている。

もっと読む フェデラーの艇庫建設に反対運動 「湖岸への出入りを阻害」
スーツ姿の男性と女性

おすすめの記事

スイス公共放送協会、次期会長に初の女性トップ

このコンテンツが公開されたのは、 スイス公共放送協会(SRG SSR)は25日に開いた総会で、次期会長にドイツ語圏スイス公共放送(SRF)で文化部長を務めるジャーナリストのスザンネ・ヴィレ氏(50)を選出した。女性のトップ就任は初めて。

もっと読む スイス公共放送協会、次期会長に初の女性トップ
EPFL

おすすめの記事

スイス、国立大留学生の学費を3倍に引き上げへ 下院委員会が可決

このコンテンツが公開されたのは、 スイス下院委員会は連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)と同ローザンヌ校(EPFL)の留学生の学費をスイス人学生の3倍に引き上げる案を可決した。27日に始まる夏期本会議で審議する。

もっと読む スイス、国立大留学生の学費を3倍に引き上げへ 下院委員会が可決
チューリヒにある国際サッカー連盟(FIFA)の本部

おすすめの記事

FIFA、脱スイスに向け定款改正

このコンテンツが公開されたのは、 国際サッカー連盟(FIFA)は17日、本部をスイス・チューリヒ以外に移せるよう定款を改正した。

もっと読む FIFA、脱スイスに向け定款改正
眼下に広がる町と湖

おすすめの記事

ウクライナ平和サミットの舞台スイス・ビュルゲンシュトック 地元住民は離心

このコンテンツが公開されたのは、 6月15~16日に開催されるウクライナ平和サミットの舞台として、ルツェルン湖を望むホテル「ビュルゲンシュトック・リゾート」が注目を浴びている。かつては庶民も受け入れられる高級リゾートして地元に愛されていたが、近年は事情が違うようだ。

もっと読む ウクライナ平和サミットの舞台スイス・ビュルゲンシュトック 地元住民は離心
英語でスイスと書かれたステージでパフォーマンスをするノンバイナリー男性

おすすめの記事

ユーロビジョン、「ノンバイナリー」自認のスイス代表優勝 イスラエル参加に抗議も

このコンテンツが公開されたのは、 欧州国別対抗の音楽祭「ユーロビジョン・ソング・コンテスト」の決勝が11日、スウェーデン南部マルメで行われ、「ノンバイナリー」を自認するスイス代表のNemo(24)が優勝した。会場周辺ではイスラエル参加に対する大規模な抗議活動も行われた。

もっと読む ユーロビジョン、「ノンバイナリー」自認のスイス代表優勝 イスラエル参加に抗議も
ビクトリノックスのアーミーナイフ製造現場

おすすめの記事

ビクトリノックス、刃のないアーミーナイフを開発

このコンテンツが公開されたのは、 スイスアーミーナイフの製造で知られるビクトリノックス社は、世界で広まるナイフ規制強化の波に対応するため、刃のないモデルの開発に取り組んでいる。カール・エルズナー最高経営責任者(CEO)がスイス紙のインタビューで明かした。

もっと読む ビクトリノックス、刃のないアーミーナイフを開発
管制室

おすすめの記事

スイス飛行機事故、24%増 紛争地上空ではGPS妨害も

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦運輸省民間航空局(BAZL/OFAC)が3日発表した2023年の航空安全報告書によると、民間・小型航空機の事故件数は9995件と、前年から24%増加した。

もっと読む スイス飛行機事故、24%増 紛争地上空ではGPS妨害も

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部