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アッペンツェルのハーブ畑と、ヒーラー

「畑も人間が搾取しすぎるとだめ。自然からもらった恵みを返してやることで土地の健康が保てる」と語るレモ・フェッター氏 swissinfo.ch

アッペンツェルは非常にヘルシーな面を持つ。現在300人以上のヒーラーが住み、人々の薬草に寄せる信頼は大きい。中国漢方とは接点をまったく持たなかったスイスの片田舎で、現代医学とは基本的に異なる哲学を持った医学が長く大切にされてきた。

このコンテンツは 2008/07/06 15:26

スイスもほかのヨーロッパ諸国のご多分に漏れず、工業化に伴い医薬品が工場で大量に製造されるようになると、薬草の効力は忘れ去られていった。しかし、アッペンツェルはスイスで唯一、自然の力で病人を治療するヒーラーが認められ続け、いまでもその伝統が引き継がれている。

薬草の楽園

アッペンツェル・アウサーローデン ( Appenzell Ausserrhoden ) 州のトイフェン ( Teufen ) には、薬草の楽園がある。畑に足を踏み入れた途端、バラの香りが漂ってきた。町の花屋には、これほどしっかりとした香りを放つバラはないと思われる。手入れが行き届き、枯れた葉っぱなど1枚も見当たりそうにもない。薬草たちにとっての楽園でもある。

ここは薬草から作る自然医薬品のメーカー「A・フォーゲル社 ( A. Vogel GmbH ) 」の健康センターに付属する、薬草を見学者に見せるための畑だ。5月から9月までの開園期間中、スイス国内はもとより、イギリス、カナダ、南アフリカからも薬草セミナーに参加する見学者がやってくる。筆者が訪ねた日は晴天の初夏だったこともあり、まるでスイス南部のティチーノ州の植物園にでもいる錯覚にさえ陥ったが、実際には東部スイス、標高1000メートルの高地にある。

「この土地特有の植物ではありません。わたしは暖かい地方でしか育たないハーブでも、実は栽培可能だということを証明したいのです」
と語るのは、健康センターと1ヘクタールのハーブ畑の責任者、レモ・フェッターさんだ。会社の創始者で薬草学を究めたアルフレット・フォーゲルが作った薬草畑を引き継ぎ、すでに26年間管理している。バジリコ、セルビア、レモングラスなどの中に混じって、すでに50センチメートル以上に育ち、手のひらの半分ほどもある大きな葉を付けた赤シソもあった。今年初めて植えたという。
「ここには120種類のハーブがありますが、例えばバジリコでもいろいろ植えてありますから、全体でどのくらいのハーブがあるかは把握していません。いろいろな植物があることが、自然の摂理を保つためには大切なのです」

当然のことながら有機栽培。しかも、植物、昆虫、動物のそれぞれの自然界での役割を尊重した畑作りがモットーだ。たとえば、ミツバチが好きな花を咲かせる植物を計画的に植えることで、ほかの植物の受粉を促進するといった工夫がある。
「毎日、土の表面を小がまで引っかくと雑草は生えてきません。健康である土地から健康な野菜やハーブが育ち、それを食べる人間も健康になるのです。朝起きて、朝飲みたいお茶のための葉っぱを摘む。料理の前に、自分の畑から手塩に掛けた野菜を採って来る。これほど贅沢で、健康なことはありません」
とフェッターさんは微笑む。

病気は日常の生活から

アッペンツェル地方の酪農家は古くから、獣医の手を借りずに病気の牛に薬草を食ませて治し、出産直後の牝牛には、蜂蜜を飲ませて精力を付けさせたという。こうしたノウハウが人間にも応用されるようになったといわれるが、自然の力を利用した病気治療の基本的考え方は、人間の体が従来持っている抵抗力を強めることにある。病気になるのはその人の生活がそうさせた。日ごろの健康管理が大切という考えを持つのはフェッターさんだけではない。薬草畑から急な坂を下りたトイフェンの町の中心地に住むヒーラーのアルフレット・ジグリストさん ( 89歳 ) もその1人だ。

母親からヒーラーの才能を受け継ぎ、薬学を専門学校で学んだ後、この地の診療所で、毎日10人ほどの患者を診てきた。ヒーラーは超能力のようなもので病気を治す「非科学的な医者」と思われがちだが、ジグリストさんは至って現代的で「科学的」。引退後にはアッペンツェルの70種類あるという薬草についてとアッペンツェルの自然の力を利用した治療法についの2冊の本を出版した。

「西洋医学は学問。自然の力を利用した治癒は、芸術」と表現するシグリストさんが治療できない病気は、進行したがん、多発性硬化症 ( ES ) 、パーキンソン病だという。
「細胞がすっかりだめになってしまったら手は貸せません。そもそも、たばこを止めなさいと言っても従わないような患者は、直そうという気持ちがないのです。病気になるのは、その人に原因があるからです。体の機能が不振になっている状態なら、正常に戻すことができます」
と手厳しい。現代医学でも治療の限界はあると批判的だ。
「がん細胞を手術で取り除いても、病気を治したことにはなりません。現代医学は対処療法であり、根本的なことを治すことはありません。われわれのことを疑わしいと現代医学は言いますが、われわれのことなど知っている現代医学者はいない」
と批判する。

アッペンツェル地方の住民は、自然の力を利用した治療方法に大きな信頼を寄せている。50年間営んだジグリストさんの診療所は今、45歳の後任者が引き継ぎ、スイスの健康保険でも認められる診療所として多くの患者が訪れている。

swissinfo、トイフェン ( アッペンツェル・アウサーローデン州 ) にて 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ )

キーワード

A. フォーゲル健康センター薬草園 ( A.Vogel AktivClub )
アルフレット・フォーゲル ( 1902~1996年 ) が60年間にわたり、人々に健康な生活についての知識を与えた保養施設。現在、レモ・フェッター氏がフォーゲル氏の意思を次いで薬草園の案内や健康セミナーなどを開いている。
見学はグループで予約できる。最高参加人数50人。1人15フラン。
予約は電話+41 71 335 66 11か、メールr.vetter@avogel-aktivclub.chまで。

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