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アルプスの2500キロメートルの道を歩いた男

トルネ氏、自分で撮影した写真

ヴァレー州出身のヴァンサン・トルネ氏は、5月12日にイタリアのトリエスタ ( Trieste ) を出発し、アルプスの山々を抜け2500キロメートルの道のりを踏破し、9月13日モナコに到着した。

このコンテンツは 2007/10/22 15:25

トルネ氏は、「ビア・アルピナ ( Via Alpina ) 計画 」という、8カ国にまたがるアルプス地域を歩くプロジェクトに初めて挑戦した。

「ビア・アルピナ計画」は2002年に、フランスの「ラ・グランド・トラベルセ・デ・アルプ ( La Grande Traversée des Alpes ) 」協会が提案したプロジェクトで、フランス、イタリア、モナコ、スイス、リヒテンシュタイン、ドイツ、オーストリア、スロベニア共和国の8カ国にまたがるアルプス地域を徒歩で行くというもの。この行程を踏破したトルネ氏に、その動機や今後の展望などを聞いてみた。

swissinfo : この計画を思いつかれた理由は?

トルネ : 歩くということに、いつも惹かれていました。19世紀、イタリアのトリノからアルプスを越えフランスのリヨンまで歩いて行商した商人たちの歴史に興味がありました。それに、かなり長い期間、仕事から遠のきたかった。しかし世界の果てに行くのではなく、近辺でそれができないかと思っていました。

数多くの山を登っていました。それに地理学を専攻して、山岳地域の発展と観光業について研究していますから、ちょうど2つの情熱の対象が一緒になった感じです。

swissinfo : つまり、「ビア・アルピナ計画」は、興味と研究の一致であったということですか?

トルネ : そうです。この計画は国立公園や、文化、歴史、言語、料理からなる1つの共同体に価値を与えることなのです。1つの共同体でありながら、多様性に満ちている。イタリアのチロル地方ではドイツ語をしゃべり、イタリアとフランスの間では、オック語を使っています。ここには、国境は存在しないのです。

風景の多様性もすばらしいものです。アルプスのほとんど原始的な姿に、しばしば心打たれました。アルプスは、その30%にしか人は住んでいず、一度山道をはずれると人っ子一人居ない。まるで、ぼくたちの祖先の時代を再体験しているようでした。

swissinfo : ところで、ご出身のヴァレー州ではエコロジーと観光業がうまく溶け合っていますね。

トルネ : ぼくはエコロジストではありません。環境を守るのではなく、環境に価値を与えたいと願っています。「ビア・アルピナ計画」の哲学も同じです。アルプスの谷を生き返らせるという意味での経済性と社会性を基盤にしています。

この地域の村々につながりを作り、また住民とツーリストの間にも関係を作りあげたい。そのため、「ビア・アルピナ計画」の行程に盛り込まれている宿泊地点は、大きな村ではなく、小さな知られていない村です。

swissinfo : 17週間歩き抜かれて、何が一番つらかったですか?

トルネ : 肉体的には問題ありませんでした。時には1日3時間、時には11時間歩き続けました。また、小さな村の民家に泊めてもらったりしました。

つらかったのは、精神的な面です。自分の故郷に近いのに、誰にも会わず、いつも一人で歩き続けるのは苦しいことでした。

それと、スタートした頃、スロベニア共和国で6日間、地平線がまったく見えない森を歩きました。クマが居ました。いや見たわけではないのですが、クマはぼくを見ていたと思います。夜、いつ襲われるかとテントの中で生きた心地がしませんでした。

swissinfo : この経験を映画にされると聞いていますが。

トルネ : 今回この旅を思い立ったもう1つの理由は、特に若い人たちの観光のイメージを変えたいと考えたからです。( 地球温暖化により ) 冬の高山での大型スポーツは終わろうとしている。標高が中程度の山にある観光地や施設をもっとこれからは活用すべきだと思うのです。

学校や観光案内所などで、このアイデアのプロモーション映画を上映したいと思っています。来年は本も書きたい。この旅で出合った人々について書きたいのです。

swissinfo : この旅で何かがあなたの中で変わりましたか?

トルネ : 特にはありませんが、ものごとを以前とは違うように見るようになった気がします。歩くと人は少し賢くなるようです。あこがれていた移動の生活ができたことは素晴らしいことですし、また時間に関しての考察ができたようです。つまり、ストレスについてや、今すぐ全てを手に入れたいという欲望について考えました。

山の峠に登ろうとすると、道は長く、曲がりくねっている。忍耐が必要です。でも登りつめたときの感動は素晴らしい。努力の甲斐があったと感じますから。人生と同じだと思います。

swissnfo、 イザベル・アイシェンベルジェー、里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) 訳

「ビア・アルピナ計画」

ビア・アルピナ計画」は2002年に、フランスの「ラ・グランド・トラベルセ・デ・アルプ ( La Grande Traversée des Alpes ) 」協会が提案したプロジェクト。フランス、イタリア、モナコ、スイス、リヒテンシュタイン、ドイツ、オーストリア、スロべニア共和国の8カ国にまたがるアルプス地域を歩くというもの。

全地域は20万平方キロメートルに渡る。アドリア海のトリエスタと地中海のモナコをつなぐ行程2500キロメートルを歩くことになる。

この行程を踏破したトルネ氏は、30の地域、200の村々を通過し、4つの言語を聞いたことになる。

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ヴァンサン・トルネ氏

トルネ氏は29歳、ヴァレー州出身。現在、ジュネーブ大学で地理学の博士論文を書いている。山岳地域の開発が専門。

ヴァレー州の山のガイドになる勉強もしている。スキーの指導員でもある。

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