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エイズのワクチン開発にまた一歩前進

テレンティ博士が率いる研究チームは18カ月かけて、HIVに強い抵抗力を持つ3つの遺伝子を識別した。 Keystone

エイズウイルス ( HIV ) に感染した患者のうち、何故発病しない人がいるのか?スイスとアメリカの国際研究チームが膨大なヒトゲノムを解析し、その原因と考えられる3つの遺伝子を突き止めた。

このコンテンツは 2007/07/28 15:26

米科学誌「サイエンス」のオンライン版 ( 7月19日 ) に掲載された同研究は、今後のエイズ治療におけるワクチン開発に新たな一歩となる。

同研究は世界で始めて、エイズという感染症をヒトゲノムの解析を通して研究したもの。アメリカのデューク大学のエイズ予防免疫センター ( CHAVI ) がスイスのローザンヌ大学の細菌学研究所やジュネーブ大学病院が参加する欧州CHAVI共同研究 ( Euro-Chavi ) と共同で行った。

3万人から486人に

HIVに感染した患者のうち、2%がウイルスへの抵抗力が強く、違う反応をする。これはどうしてだろうか。Euro-Chaviを率いる、ローザンヌ大学の細菌学研究所のアマリオ・テレンティ教授は「人間は自然にウイルスを制御する様々な違った方法を持っています。ですから、この自然界の現象を模倣することに治療の鍵があるのです」と語る。

ヒトゲノムの解析にはまず、世界中の数百の病院からHIV感染した3万人の患者のデータが集められた。最終的には29人の研究者 ( 医者、免疫学者、遺伝学者など ) が特徴のある486人の患者を選び、それぞれの膨大なヒトゲノム ( 染色体全体に含まれる遺伝情報全体 ) を解析した。そして、専門家がこれをコンピュータでスクリーニングし、もっともHIVに抵抗する遺伝子のランキングを打ち出した。

テレンティ教授は「驚いたことに、HIVに大変、抵抗力のある3つの遺伝子を見つけました。1つ目の遺伝子の構造はほぼ知られていたものでしたが、2つ目は研究の対象になったことがないもので、3つ目は全く知られていないものでした」という。

問題の遺伝子

分析結果では鍵となる免疫細胞において、遺伝的多型 (polymorphisms) と呼ばれる、特定のDNAの塩基配列がある患者がウイルスに感染してから増殖を制御することができることが判明した。

この遺伝的多型のうち、2つが人の免疫システムで重大な役割を果たす、組織適合性抗原 ( HLA ) をコントロールする遺伝子に見つかった。HLAは外部からの侵入者を判別し、攻撃する抗原だ。そのHLAはA,B,Cと3つあるが、HLA-AとHLA-BはHIVウイルスが体内に入ってくるとスイッチオフされてしまう。しかし、HLA-Cは機能しなくなることがなく、どうやら、この遺伝子はHIVウイルスの増殖を制御するシステムと関係がある、という結果が出た。

ローザンヌ大学病院の声明には「このようなゲノム解析からの感染症へのアプローチは世界で初めてです。将来、エイズのワクチン開発に役立つだけでなく、脳膜炎、マラリア、結核やC型肝炎との闘いにも役立つでしょう」とテレンティ教授は語っている。

swissinfo、外電 屋山 明乃 ( ややま あけの )

補足情報

- アメリカのデューク大学のエイズ予防免疫センター ( CHAVI ) は3億ドルの予算でエイズワクチンの開発を目的に国際的な協力をしながら研究を行っている。

- 感染症の研究において、これほど大規模なヒトゲノム解析は始めて行われた。

- スイスではジュネーブとローザンヌの大学病院で分析が行われた。

- Euro-Chaviは3万人のHIV患者のデータを分析してHIV感染からエイズ発症までが長い、つまり、HIVウイルスに抵抗力のある患者を選んだ。

- ゲノム解析に選ばれた486人はスイス、イタリア、イギリス、スペイン、デンマークからのHIV患者。

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HIV/AIDSについて

- UNAIDS ( 国連合同エイズ計画 ) によると、世界では3950万人がHIVに感染しており、2006年には新たに430万人が感染した。昨年は290万人がエイズで死亡したと推計されている。

- エイズ ( 後天性免疫不全症候群 ) はヒト免疫不全ウイルス ( HIV ) の感染によって引き起こされる病気。HIVに感染することによって病原体に対する抵抗力 ( 免疫 ) が不全となり、様々な感染症や悪性腫瘍などを引き起こす。人によっては感染から10年〜15年の長い潜伏期を経て発症することもある。

- 現在の治療法では抗HIV剤の投与を受けて、発症を遅らせることができる。

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