米独情報機関との関係が問題になっているスイス・ツークのクリプト社屋。1993年3月撮影
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米独の情報機関が1970年にスイスの暗号機器メーカーを秘密裏に買収し、数十年間にわたって同社デバイスを使い世界各国の機密情報を収集していた問題で、スイスメディアでは、両者の関係を認識していたという元閣僚や連邦議会議員の名前が複数挙がっている。
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スイスの地元紙は、過去の文書により少なくとも2人の元閣僚がクリプト社(本社・ツーク)と情報機関の関係を認識していたと報じた。
クリプトと米独情報機関の関係
米中央情報局(CIA)と旧西ドイツの情報機関(BND)は1970年、リヒテンシュタインの財団を隠れ蓑に、スイスの暗号化機器会社クリプト(本社・ツーク、2018年廃業)を買収。機密情報を容易に解読できる仕掛けを組み込んだ暗号機を販売し、世界各国の機密情報を収集していた。暗号機器はイラン、インド、パキスタン、ラテンアメリカ諸国など数十カ国に販売され、その中には同盟国の日本も含まれていた。米ワシントンポストとドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)、ドイツ公共放送局(ZDF)が今月、独自に入手したCIA文書などに基づいて報じた。
ドイツ語圏の日曜紙NZZアム・ゾンタークとゾンタークス・ツァイトゥングによると、カリン・ケラー・ズッター連邦司法相が昨年12月に政府に提出した文書には、アーノルド・コラー元司法相が1990年代当時、クリプトに連邦警察の捜査が入っていたことを認識していたと明記されていた。
またコラー氏は、クリプトの執行委員とカスパー・フィリガー元国防相が接触していたことも知っていたという。
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ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガー紙は15日、ヴィオラ・アムヘルト国防相が昨年末、政府内の同僚に類似の機密文書を送ったと報じた。クリプトと外国諜報機関の関係について政府高官が認識していたことを示すスイス側の公式文書が初めて明らかになった。
名前が挙がったフィリガー氏は、CIAとは何の関係もないと報道を否定。(自身の名前が記載されたとされる)CIAの文書は「正しくない」と反論した。
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別の閣僚2人がクリプトと米独情報機関の関係について知っていたことを示唆する手紙も見つかった。イランにあるクリプトの流通部門で勤務していた男性が1994年にこの2人に送ったもので、男性はその2年前にスイス人従業員のハンス・ビューラー氏と共にスパイ容疑で逮捕されていた
手紙は元閣僚のジャン・パスカル・ドラミュラ氏、フラビオ・コッティ氏宛てで、男性はクリプトの暗号機器を「スイス製」のラベルを付けて売り、それがスパイ活動に使われたと書いた。
このほかにも、クリプトの会長職を数年務めた連邦議会議員2人の名前も取りざたされている。
ニクラウス・オーバーホルツァー元連邦裁判官を筆頭とする政府委託の調査チームは、6月までにクリプト社に関する調査報告書を提出する予定。
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