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スイスの特別部隊、ジハード目的の渡航や国内テロの阻止に向けて

11月2日シリア北部のラッカで行進する「イスラム国」の戦闘員 Keystone

ジハード(聖戦)目的でスイスから戦闘地域へ行く渡航者を阻止し、またスイス国内でのテロ行為を未然に防ぐ。この二つを目的に、連邦司法警察省警察局fedpolが特別部隊を設置した。


 スイス政府は今月の14日、ジハード(聖戦)を掲げ違法な戦闘やテロに参加する目的で戦闘地域へ行った渡航者が、これまでにない数に達したと発表した。

 連邦情報機関(FIS)によると、2001~14年9月の間にスイスからジハードに合流する目的でスイスを出国した人は55人。うち35人が2013年5月以降に出国。渡航先はイラク、シリア31人、パキスタン、アフガニスタン、イエメン、ソマリア24人となっている。

 FISはさらに、戦闘地域から戻り現在スイス国内で生活する人物が18人いると見ている。

 fedpolはジハード目的の渡航者問題を調査するために6月、FISや連邦検察庁、連邦外務省、連邦税関事務局、連邦移民局から成るワーキング・グループを設置。これに9月からは司法・警察長州会議も加わった。

 先月10月にはワーキング・グループの調査結果と勧告をふまえ、政府の中央治安チームが特別部隊の設置を決定した。前出の各機関に加え、連邦司法警察省司法局とチューリヒ空港警察も特別部隊に参加する。

 政府の声明では、各機関が連携してジハード目的の渡航を取り締まるのは、欧州連合(EU)や国連の進める対策と一致するものだとしている。

 同時に、「スイスから戦闘地域への『テロ輸出』を阻止するのが目的だ」と明言。取り締りの対象は国内の犯罪行為、またはスイスと関係のある人(スイス人、外国人、難民申請者)などによる犯罪行為としている。

 特別部隊はジハード目的の渡航者を常時監視し、身元が判明している人物の危険度の判断、さらに国内外の情報の収集と交換を行っていく。

恒久的禁止

 連邦政府は12日、国際テロ組織アルカイダとそれに関与する組織や「イスラム国」を支援する活動の恒久的禁止を発表。

 そのために内閣が法案を議会に提出し、今月下旬から始まる冬季国会で審議される予定だ。連邦国防省によれば、法案は「イスラム国」に対するこれまでの一時的な禁止に一致している。政府はまた、同組織を重大な人権の侵害を冒しているとして厳しく非難している。

 また欧州各国もこれまでに、ジハード目的の渡航者を厳しく取り締まるため多くの措置を設け、戦闘地域で戦闘に加わった者が帰国する問題にも対処しようとしている。

 英国のキャメロン首相は14日、青少年を含めシリアに渡航しテロに加担した疑いのある人物に対し、英国への入国を2年間禁止する方針を発表。審理を受けるか、少年鑑別所への入所や警察による定期的な監視、または過激派から抜け出すための講習を受け入れると同意した場合に限り、再入国が認められる。

 一方、「イスラム国」に合流し戦闘に加わる自国民の数がベルギーに次いで2番目に多いデンマークでは、帰国する戦闘員に対し旅券没収や収監などの刑罰の代わりに社会復帰への援助やセラピーを提供する対応に乗り出している。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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