スイスから米へ 頭脳流出なぜ起こる

ノバルティスの遺伝子研究所 novartis.com

スイス最大の医薬品多国籍企業ノバルティスは研究センターを本社のあるバーゼルから米マサチューセッツ州に移転する計画を発表して以来、かねてから問題となっていた若い研究者らの米国頭脳流出が改めて注視されるようになった。米国の何が研究者らを惹き付けるのか、在米のスイス人研究者らに聞いた。

このコンテンツは 2002/05/10 10:28

サンフランシスコにあるスイス科学技術事務局のクリスチャン・シム局長は、「私は頭脳流出(brain drain)というよりも頭脳循環(brain circulation)といいたい。私がここで死ぬか退職するまで、私は米国に『流出した』とは言えない。」とswissinfoに語った。連邦工科大学(ETH)ローザンヌで技術物理学の博士号を取得し、在外スイス人科学・技術専門家ネットワーク「Swiss Talents」を管理するシム氏は、「正確な数字は上げられないが、在外スイス人50万人中約5000人は米国在住の科学者と技術者だ。」と言う。

米国で働くスイス人の1人、ダニエル・カウフマン氏は、ローザンヌ生まれでローザンヌとチューリッヒで学んだ感染症の研究者だ。スイス政府の助成金を受け半年前にボストンに来たカウフマン氏は、自身が体験した両国の違いを次のように語った。「ノバルティスが研究施設のボストン移転を決めたのは当然だと思う。ボストンは米国内でも研究者にとって最高の地だ。もちろんスイスにも素晴らしい研究施設はある。が、ここボストンには世界最高レベルの人々が集中しており、ライフサイエンス、コンピューターサイエンス、ミクロおよびナノテクノロジーの最先端の研究が進められている。チームワークも素晴らしく、たずねたい事があったらすぐに答えてくれる人を見つけられる。」。カウフマン氏はまた、ボストン特有の産と学の強い結びつきを指摘する。「産業と学界の結びつきの強さからは、双方が利益を受けられる。ここで得られる学界との緊密な関係もノバルティス移転の要因の一つだろう。」。

また、先のシム氏は、米大学の契約制度の寛容さとサイズの大きさから米国の方がより機会に恵まれることも、研究者にとっては魅力だと指摘する。「スイスのような小さい国では、ある大学で希望する職につけなければ他の大学に行けばいいといわけにはいかず、他国へ出て行くしかない。シリコンバレーやボストンのバイオメディカル研究所のような巨大規模なものも、スイスではあり得ない。シリコンバレーには350万人が働いているが、これはスイスの全人口の半分にあたる。」。

さらに、両氏とも、スイスとアメリカのリスクに対する態度の違いも指摘した。「米国では若い研究者の独創性を信用してくれ、仮設から研究開始に至るまでのスピードが驚くほど早い。が、欧州では束縛が多い。」とカウフマン氏はいう。

シム氏は、米国で働くスイス人研究者らが増えるのはかまわないが、各自スイスとのコンタクトを絶やさず、国際的な経験を積んで帰国してほしいという。世界で求められるスイス人の能力は、シム氏の誇りだと語った。

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