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スイスの労働市場 スイスでの就職、EU域外出身学生に高いハードル

机に並ぶ国際色豊かな学生たちの横顔

スイスに留学中の多くの第三国出身者が、人材不足の顕著な分野で学んでいる

(© Keystone / Gaetan Bally)

世界でキャリアを築きたい人にとって、スイスの大学の卒業証書は強力な切り札となる。もちろんスイスの企業にとっても、スイスの大学を卒業した外国人スペシャリストはぜひ確保したい人材だ。しかし、卒業生の出身国が欧州連合(EU)や欧州自由貿易連合(EFTA)域外だった場合、複雑な規定や移民法がスムーズな雇用への妨げとなっている。そんな状況が、法律の改正で変わろうとしている。

EU/EFTA域外の国民がスイスの大学に留学するには、当該大学の入学許可だけでなく、ビザや州の滞在許可証の取得が必要だ。そのため、手続きだけでもかなりの費用と時間を費やすことになる。

煩雑な手続き

履歴書、動機書、滞在先証明、預金残高証明など申請に必要な書類は数多く他のサイトへあり、その一つひとつに細かい記入が求められる。

裕福な親戚がスイスにいて費用を肩代わりしてくれるならともかく、そうでなければせっせと貯金しておくべき。チューリヒ州の場合、スイス国内の銀行口座に2万1000フラン(約228万円)の残高が必要とされる。

移住手続き(ビザや滞在許可申請)は居住予定地の州で行う。連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)では、手続きに関する手引きを作成して留学生に便宜他のサイトへを図っている。

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活かされない人材

こうしたハードルを乗り越えた学生たちは、国際ランキングで上位常連のスイスの大学が持つ名声の恩恵に浴することができる。特にSTEM(科学、技術、工学、数学)系の卒業生はスイスの労働市場でも引っ張りだこだ。ところが、経済連合エコノミースイスの調べによると、このうち実際にスイスで就職する学生は全体の10〜15%に過ぎない。

エコノミースイスは、こういった状況を引き起こしているのは移民制限の存在だとする。EU/EFTA圏出身の卒業生は「人の移動の自由」原則の恩恵を受けることができるが、それ以外の第三国と呼ばれる地域の出身者には、割り当て枠を定めた厳しい外国人法が適用されるためだ。

中でも最大の障壁は、これらの学生に認められる就職活動期間の短さだろう。エコノミースイスは「他の国々では大卒者は最長3年間職探しができるが、スイスではわざわざ滞在許可申請書を提出しても、最長6カ月が認められるかどうかだ」と批判する。6カ月以内に仕事が見つからなければ国外退去となる。

就職活動をめぐる問題

台湾出身のケン・ツェイさんは連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)で計算科学の修士号を取得後、スイスの民間企業に就職するはずだった。しかし労働許可が下りなかった。スイスインフォの取材に対しツェイさんは、「そのためドイツに行くことにした。外国人の就職についてはドイツの方が好意的だった」と語る。

同様の事情でスイスを去った第三国出身大卒者がツェイさんだけではないことは、ヌーシャテル大学のアニク・ロンバールさんによる「スイス労働市場における外国人大卒者の統合」という研究他のサイトへからも明らかだ。

第三国出身者は就職活動において必要以上のハンデを負わされているという点について、ロンバールさんはこう説明する。「卒業証書を手にした途端に滞在許可の根拠が失われ、新たな申請が必要となる。法的に可能なのは、就職活動を理由に6カ月間の滞在許可を申請することだ」

乏しい情報

ところが、州当局のサイトで実用的な情報を見つけるのは容易ではないという。「情報の乏しさと手続きの分かりにくさも、より良い条件を求めてスイスから他の国に移転する一因になっていると思われる」(ロンバールさん)。就職活動のための6カ月という滞在期間も、9〜18カ月が通例の欧州諸国に比べ非常に短い。

米フィラデルフィア州出身のアリエル・ファクレイさんは、ETHZで理学修士号を取得後、同大のアイデアをもとに独立して設立された、いわゆる「スピンオフ企業」に就職した。だが、その後の転職時に労働許可証取得問題で苦戦したと話す。

連邦工科大の卒業生 スイスでの職探しと労働許可申請

米フィラデルフィア出身のアリエル・ファクレイさんは、連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)でロボット工学を主専攻に機械工学を学び、2012年、同大の理学修士号を取得した。

移民制限緩和に向け動き出した議会

このような専門職を移民制限の対象とすることに批判的な経済連合エコノミースイスは、議会に問題提起。議会は人材が不足する分野においては第三国出身の学位取得者を制限対象から除外するという動議他のサイトへを、両院共に賛成多数で可決した。

これを受けて政府は今後、法改正に向けて動き出す。ロンバールさんは、これによって企業が優秀な大卒者を採用しやすくなると踏む。現状では、第三国出身大卒者の雇用には、限られた枠しかない労働許可を申請しなければならない。その手続きの煩雑さは大半の企業が尻込みするに足るものだ。

法改正が実現すれば、スイスで学んだ人々は制限対象から除外されるため、第三国からの他の求職者と直接競合せずに済むようになる。「彼らにはスイスでの生活経験があり、特に言葉ができるという点で優位に立てる」(ロンバールさん)

インターンシップは認められる?

「在学中も6カ月の就職活動期間中にも、彼らにはインターンシップをするチャンスがない」(エコノミースイス)

引用終了

エコノミースイスの観点からは、これによって解消されるハンデはもう一つある。第三国出身の学生には現在のところ職業経験を積む機会がない。エコノミースイスは、「在学中も、6カ月の就職活動期間中にも、彼らにはインターンシップが認められていない」と主張する。

しかし、これは、少なくともチューリヒ州には当てはまらないようだ。同州の労働許可担当当局によると、「インターンシップが履修課程の一部であり必須であると大学から確認が取れれば、許可している」。

ETHZに問い合わせたところ、「インターンシップは履修課程によって必須であったり推奨のみであったりする。研修をすることで効率的に単位を取り迅速に職業生活に入ることができる」との回答を得た。

学位取得だけでなく就職もそのままスイスで、と考える学生は、志望する課程でインターンシップをするチャンスがあるかどうかについても事前に調べておくのが得策だろう。

スイスを去る理由は他にも

もちろん仕事は、居住地を決める際に最大の決め手となる、とロンバールさんは話す。

ただ居住地の決定には、その他にも親や友人の存在、新しいパートナーの出現や子供ができたといった社会的関係性も大きく影響する。

「大学在学中は重要な人間関係が形成されることも多く、その場合、移動の決定もカップルが共同で下すことになる」。そういったケースでは、双方のキャリアおよび仕事と家庭の両立を考慮しなければならない。スイスでは、結婚やパートナーシップ登録により法律上の立場が変わり、労働許可に加えて在留許可取得の可能性も生まれる、とロンバールさんは説明する。


(独語からの翻訳・フュレマン直美)

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