紅麹、国産ウイスキー、オッペンハイマー… スイスで報じられた日本のニュース
スイスの主要報道機関が先週(3月25日〜4月1日)伝えた日本関連のニュースから、3件をピックアップ。要約して紹介します。
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今回ご紹介するのは①紅麹の健康被害が拡大②「ジャパニーズウイスキー」の基準強化③映画「オッペンハイマー」が日本で公開、の3本です。
紅麹の健康被害が拡大
小林製薬の「紅麹」成分を含むサプリメントを摂取した人が健康被害を訴えている問題について、同社が死亡例との因果関係の可能性を認めた3月26日ごろから、スイスでもフランス語圏を中心に報道が広がっています。
日刊紙ル・マタンなどは同日、同社が「死亡と製品との関連性を調査中」としたうえで「深い謝罪」を表明したと伝えました。入院事例との因果関係については結論が出ていないという同社の説明や、問題のサプリは世界中の約50社に供給されているというNHKの報道を引用しました。
29日からはドイツ語圏でも報道が出ています。大衆紙ブリックは「日本で謎の連続死」との見出しで報じ、岸田文雄首相がもっと早く問題について報告すべきだったと苦言を呈したと伝えました。また、ドイツでも紅麹を含む医薬品やコレステロール低下薬が入手可能ですが、スイスでは禁止されていることにも言及しました。
30日には大阪工場の強制捜査についても報じられています。ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)は、中国でも消費者団体が同社製品の使用中止を呼び掛けたと伝えています。(出典:ル・マタン外部リンク/フランス語、ブリック外部リンク/ドイツ語、SRF外部リンク/ドイツ語)
「ジャパニーズウイスキー」の基準強化
日本の「国産ウイスキー」の定義について、業界団体の日本洋酒酒造組合が定める自主基準が4月1日に発効しました。スイスではドイツ語とフランス語圏で「世界的な評価が高まっている日本のウイスキーが、海外での偽造を阻止」と報じられました。
ドイツ語圏のブリックは、「本物の国産ウイスキーの価格は、特に希少で熟成した品種ほど高くなっている」と紹介。輸出額が10年で14倍に増えているものの、人気上昇に伴い国外で製造されたウイスキーも日本産と宣伝され「メーカーや顧客の間で懸念や混乱が広がっていた」と報じました。
新基準は違反しても罰則がありませんが、「メーカーは日本産ウイスキーにおける世界の評判を守る手段として歓迎している」と説明しています。(出典:ブリック外部リンク/ドイツ語)
映画「オッペンハイマー」が日本公開
原爆開発者の半生を描いた米映画「オッペンハイマー」が3月29日、米国から8カ月遅れて日本で公開されました。フランス語圏のスイス公共放送(RTS)では、公開が遅れた理由は明らかにされていないものの、「この映画は日本で上映するにはデリケートすぎるのではないかという憶測が広まっていた」と報じました。
RTS東京特派員は「午前9時の初回上映の会場は4分の3が埋まっていた」とし、学生から退職者までさまざまな観客がいたと伝えました。観客の1人、アツコさん(70歳)は「見に来てよかったです。知らなかったことを学んだり、明らかにできたかって?ええ、もちろん」とRTSのインタビューに答えました。
他にも「この映画は物事を公平に描いている」「戦争ではどちらが悪なのかを見分けるのは難しい」といった肯定的な観客コメントを紹介しています。ただ「観客の中には、映画『オッペンハイマー』は原爆が日本と日本国民に与えた被害についてほとんど何も語っていないことを遺憾に思う人もいるだろう」と注記しました。
ドイツ語圏の無料紙20min.は、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の理事長を務める箕牧智之さんが米AP通信に語った「映画全体を通して、私は広島の原爆投下シーンが出てくるのを待っていたが、それは一度も現れなかった」というコメントを引用しました。
一方、元広島市長の平岡敬さんが3月中旬の試写会後のトークイベントで語った「広島の観点からみると、原爆や核兵器の恐ろしさが十分に描かれていないのでは」とのコメントも日本メディアから引用しました。「観客は複雑な感情でこの映画を受け入れた」とまとめました。(出典:RTS外部リンク/フランス語、20min.外部リンク/ドイツ語)
【その他、スイスで報道されたトピック】
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話題になったスイスのニュース
先週、最も注目されたスイスのニュースは「スイス金融当局、チューリヒ州立銀行の破綻処理計画を承認」(記事/日本語)でした。他に「スイスの月収120万円 安定も物価上昇に追い付かず」(記事/日本語)、「サハラダストでスイスの空が黄色に」(記事/英語)も良く読まれました。
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次回の「スイスで報じられた日本のニュース」は4月8日(月)に掲載予定です。
校正:大野瑠衣子
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