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スイスフランス語圏の外国企業誘致

ヌーシャテル州の外国企業の建設用地 Pixsil

スイスフランス語圏の4つの州、ヴォー、ヌーシャテル、ジュラ、ヴァレーが構成する外国企業誘致組織「DEWS ( Development Economic Western Switzerland )」 が体制を改善しようとしている。

フランス語圏の他の2州、ジュネーブとフリブールは, 政治的に正式に指名されたディレクターのもとであれば、DEWSと共同連合を構成したいと申し出ている。

 自分の州に外国企業を誘致しようという動きは、フリブール州から1972年に始まり、その後いろいろな地域に広がっていった。今では2つ、ないしはそれ以上の州が連合して共同運営をしている。この半官半民の組織は、その性格上、運営面で多くの問題を抱えている。今回、フランス語圏の組織が大掛かりな体制改革に乗り出した。

スイスの企業誘致組織

 こうした外国企業誘致組織はドイツ語圏では3つある。1999年に、チューリヒを中心に周辺の7つの州が集まって形成された大チューリヒ経済圏 ( Greater Zurich Area ) 。バーゼル・ランドとバーゼル・シュタットが一緒に形成するバーゼル経済圏 ( Basel Area ) 。そしてスイス中心部の5つの州から成る中央スイス経済圏 ( Central Swtzerland ) 。

 それに対しフランス語圏では、まずジュネーブ州とフリブール州が2004年以来、共同で誘致政策を行ってきた。他の4つの州から成るDEWSから離れていることで、この2州は、自由な独立政策を行ってきた。

 ヴォー、ヌーシャテル、ジュラ、ヴァレー州が構成するDEWSは2002年に創設され、各州の経済発展を目的に、マーケティングと外国企業誘致を共同で行ってきた。そして、年間540万スイスフラン ( 約5億660万円 ) という巨額な予算をもっている。

 また、DEWSは、アメリカ、ドイツ、フランス、イタリア、中国、インドなどに、その国の企業を誘致しようと、16人の職員を派遣している。2002〜2005年の間には合計456の外国企業を誘致し、6500の仕事のポストが増える予定であった。しかし、すべてがバラ色ではない。

DEWSの諸改革

 DEWS内部で問題が発生したのは、会計監査が昨年、不透明性、公的機関の監督不十分、組織の構造上の問題など、いろいろな点を指摘したからである。

 その結果、ディレクターのフランシス・セルメ氏が辞め、ジャック・パッシェ氏がその後任に着いた。4つの州は今後、共同で新改革を押し進めようと決めたが、改革の最優先は透明性である。

 「今まで、透明性がなかった訳ではありません。しかし非公式な透明性でした。今後は各プロジェクトを各州が検討していきます。こうすれば、このプロジェクトはヴォー州に、そしてこちらはヴァレー州にと振り分けるための指針もはっきりしてきます」とパッシェ氏。

スイスフランス語圏全体の展望

 ジュネーブ州とフリブール州は政治的レベルで、こうしたDEWSの改革の時期をうまく利用しようとし、特にDEWSが外国に持っているエイジェントを使わせてもらおうとしている。

 また誘致に関しても、両州とDEWSの合わせて6つの州に平等に情報がいくようにし、候補の企業にコンタクトするのは各州の自由にまかせ、また税率の競争も自由にするよう提案した。 さらに、国際都市ジュネーブが持つ知名度はDEWSにとっても有利な点を強調し、以上のような共同運営を推し進めている。

 6月に、6つの州の関係局の代表が集まってジュネーブ州とフリブール州の提案を検討したが、答えはまだでていない。 2005年のDEWSの会計監査を行ったクロード・ジャンルノー教授は、選挙によって近くジュネーブ州の経済局のトップが代わるし、DEWSも改革を推し進めているので、この6つの州はうまくやっていけるだろうとみる。

swissinfo、ピエール・フランソワ・ブッソン 里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) 意訳

大チューリヒ経済圏は、以下の7州から成る。チューリヒ、グラールス、シュヴィーツ、グラウビュンデン、シャフハウゼン、アールガウ、ソロトゥルン。
チューリヒはコンスタンツ湖からバーゼルまでを含む、もっと大型で、経済のみならず、文化、社会面でも共同運営できるような組織、「Metropolregion Zurich」を夢見ている。
中央スイス経済圏は、以下の5つの州から成る。ルツェルン、ニトヴァルデン、オプヴァルデン、シュヴィーツ、ウーリ。

– 州の連邦制をとるスイスでは、経済推進政策は州の管轄である。各州で異なる法を外国企業誘致の際にも適用することになるが、時には、DEWSや大チューリヒ経済圏のようにある種の法を共有している。 

– 基本的には、連邦政府は経済推進を支持し、おおまかな枠組みを決めることになっている。それは連邦経済省 ( EVD/DFE ) とその秘書課である、連邦経済省経済管轄局 ( seco ) が担当している。現実的には、 州と政府は共同で仕事をすることが多い。

- 小規模ではあるが、市町村も独自に経済推進を推し進めなければならない場合もある。しかし、ほとんどの場合、州が援助している。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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