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金価格、米科学政策、マッカーシズム…スイスのメディアが報じた米国のニュース

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Keystone

スイスの主要報道機関が今週伝えた米国のニュースから、今週は①マッカーシズムの再来?②金価格が史上最高値③ノーベル賞受賞者が米科学政策批判、の3つを要約してお届けします。

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米国にマッカーシズムの再来?

ジョセフ・マッカーシー
ジョセフ・マッカーシー Keystone

逮捕、ブラックリスト、国外追放――トランプ政権下の米国は、一部の歴史家が主張するように、新たなマッカーシズムの時代に突入したのでしょうか。ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)が検証しました。

「マッカーシズム(赤狩り)」は、1950年代に米国で発生した共産主義者とその同調者に対する取り締まり運動で、米上院議員だったジョセフ・マッカーシー(1908年~1957年)が主導したことからそう呼ばれています。マッカーシーは共産主義者や旧ソ連のスパイが米政府や大学などの教育機関、ハリウッドなどに潜んでいると主張し、「赤狩り」を行いました。(喜劇王チャーリー・チャップリンは、マッカーシーに共産主義者のレッテルを貼られ、スイスに移住しました)

記事によると、「マッカーシズム」という概念は今日、反逆罪や極左過激派に対する根拠のない非難や、政敵の人格や愛国心に対する個人攻撃を表すものとして、より一般的に使われるようになったといいます。

マッカーシズムは再来したのか?SRFのポッドキャスト番組で、ドイツの歴史学者オラフ・シュティーグリッツ氏はまず、当時と今日を比較する際の重要な視点として「比較に確かな妥当性があること」と「米国の政治レトリックにしっかりと根付いている何かを想起させること」を挙げました。

その上でシュティーグリッツ氏は、トランプ政権下で使用されたレトリックと当時の類似点は「検証なしの非難、中傷、告発」にあると指摘。左派批判を繰り返したり、反ファシスト運動「アンティファ」がテロ組織だとほのめかしたりするトランプ氏の発言を例に挙げました。「こうした非難は行き過ぎだ。繰り返し続ければ定着してしまう。マッカーシー時代のレトリック戦略を彷彿とさせる」

ただ、今の米国民が置かれた状況は、当時とは全く異なると続けます。「第二次世界大戦中、人々は長年にわたり、敵味方という観点から考えるよう教え込まれた」。しかし「戦後、レトリックは比較的スムーズに回復した」

シュティーグリッツ氏は、バイデン政権下でもマッカーシズム的なレトリックとの批判があったことに言及。ただ、「バイデン政権下で起こったことは、荒っぽいが一般的な民主的行動のルール内にあるものと見ている。これはもはや土俵が違う」と続けました。

記事は、米国での論調が荒くなっているだけでなく、より非民主的になっていることは明らかだ、と結んでいます。(出典:SRF外部リンク/ドイツ語)

※スイスインフォでは、「米国とスイスは何を学びあえる?」とテーマとした読者の意見交換ページを開設しています。(意見交換日本語ページ

金の買い時?

金
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金スポット価格が7日、1オンス4000ドル(約60万円)を初めて突破しました。この1年で見ると50%上昇しています。

ドイツ語圏の日刊紙ターゲスアンツァイガーは、「安全資産」とされる金の価格は、不確実性やインフレ、危機、戦争によって価格が上昇すると説明。「これは必ずしも良いニュースではない」と伝えました。

記事によると、要因の1つはトランプ氏の「気まぐれな政策」です。「高関税によるトランプ氏の貿易戦争は不確実性を生み出し、インフレへの懸念を高めている」

また、「米連邦準備制度理事会(FED)と、その議長を務めるジェローム・パウエル氏に対するトランプ氏の攻撃も、金価格上昇の一因」になっています。

米政府は、ドル高が輸出を妨げていると考えており、ドル安を望んでいます。そのため、投資家がドル以外の安全資産――特に金――を求めていると説明しました。

今、金は買い時なのでしょうか?記事は「急激に上昇するものは何でも急速に下落する可能性がある」と警告します。「『安全な避難所』は現在の出来事と将来の期待に大きく依存しており、それに応じて変動が激しい」

チューリヒ大学のトースヘン・ヘンス教授(金融学)は記事の中で、4000ドルでも「ポートフォリオに組み込むべき」だと述べました。「ただし、他の投資と同様、高価で買いすぎないよう、時間をかけて最適なポジションを築くべきだ」(出典:ターゲスアンツァイガー外部リンク/ドイツ語)

ノーベル賞受賞者が米科学政策を批判

2025年のノーベル物理学賞を受賞した英国出身のジョン・クラーク氏
2025年のノーベル物理学賞を受賞した英国出身のジョン・クラーク氏 Copyright 2025 The Associated Press. All Rights Reserved.

2025年のノーベル物理学賞を受賞した英国出身のジョン・クラーク氏は7日、トランプ氏が科学や医療政策の再構築を進めているのは「極めて深刻な問題」だと警鐘を鳴らしました。フランス語圏日刊紙ル・タンなどが報じました。

トランプ氏の政策には、政府系科学者の大量解雇や研究予算の大幅削減などが盛り込まれています。クラーク氏はAFP通信に対し、「これにより米国の科学研究の大部分が麻痺する」と述べ、資金削減で深刻な影響を受けた研究者がいると指摘しました。

さらに「これが続けば壊滅的な結果を招く」と警告。「現政府がいずれ終わるとしても、半年前の水準に戻るまでに10年かかる可能性がある」

記事によると、AFPが取材した複数のノーベル賞関係者も、トランプ氏の科学政策は「米国の科学研究における主導国としての地位を失う危険性があり、その影響は世界に及ぶ」と懸念を示しています。(出典:ル・タン外部リンク/フランス語)

次の「スイスのメディアが報じた米国のニュース」は10月15日(水)に配信予定です。

英語からのDeepL翻訳:大野瑠衣子

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