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スイス・リサイクル事情 ~エネルギー節約と環境保護~

回収されたコーヒーカプセル swissinfo.ch

“省エネ”は、福島原発事故以降ヨーロッパでも大きなテーマ。一時は大型化する一方だったテレビも、最近は消費電力が問題で売り上げが落ちているそうだ。消費者の省エネ意識をさらに高めようと、テレビも冷蔵庫と同じように消費電力に応じて「A+、A、B、Cクラス」と明示しようという動きもでている。

 省エネにもつながるリサイクルはスイスでも定着している。特に私の住んでいるドイツ語圏は、ゴミ選別・リサイクルに関しては、イタリア語圏、フランス語圏に比べるとかなり細かい規則があって、こんな点に何事にも大らかなラテン系と厳格なゲルマン系の違いが反映しているような気がする。フランス語圏からドイツ語圏に引っ越して来たNさんは、当初その細かい分別と厳しいルールに大分戸惑ったようだ。

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 各市町村にあるゴミリサイクル場は週2回ほど開いていて、どこも管理人がいる。彼らのお陰で一定の秩序が保たれているし、処分の仕方がわからない場合は親切に教えてくれる。紙・ビン・缶・ペットボトルの回収はもちろん、衣料品や廃油の回収もしており、日本では処分が面倒だった古い油、古着や靴もこまめに回収ボックスに入れられるので助かる。ビンは茶、透明・緑と色別に分け、アルミ缶とスチール缶も分別。これらの回収コンテナは大手スーパーや駅周辺にもあることが多いので、買い物がてら処分ができてとても便利だ。

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 処理場の片隅に特別の棚を設けている所もあって、まだ使えそうな食器や植木鉢、ベビー用品等はその棚に自由に置いていく事ができる。欲しい物があれば自由に持って行ってもよい。私は無人物々交換のような気軽なこのシステムが気に入っていて、よく利用する一人である。数年前から大手コーヒーマシン会社(ネスカフェ)が、使用済みコーヒーのアルミカプセルを回収するようになった。このように、会社側が売りっぱなしではなくリサイクルにも積極的に取り組みはじめたのはとても良いことだと思う。

 生ゴミは、各家庭やアパートに専用コンテナが設置されているところが多い。こちらに来てまず感心したのは、スーパーで野菜,果物の量り売りをしていることだ。小家族でも無駄なく必要な分だけ買えるし、トレーのゴミもでないしまさに一石2鳥。重さを量るのはセルフサービスで、必要分を薄手のビニール袋に入れてから量りにのせ認識番号を打ち込むと、価格が印刷された小さなシールが出てくる。そのシールを袋に貼り付けて完了。スイスに来てから野菜を食べきれずに処分することが少なくなった。

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 日本に住んでいる時には、郵便受けに「広告お断り」の表示をしても容赦なく入ってくる膨大な量のチラシに迷惑していたが、こちらでは、複数のチラシをまとめて配達する業者を通して配布されるので、郵便受けにKeine Reklame(広告お断り)の表示を出しておけば不要なチラシはほとんど入ってこない。紙ゴミの減量にも役立つし、見苦しくチラシが散乱することもない。

 21世紀、エネルギー問題はまちがいなく世界の大きな課題となるだろう。放射能汚染をはじめ、温暖化、大気・土壌汚染、動植物の生態異常と、人間の利便追求の末に犠牲になった地球は悲鳴をあげている。次世代にも安全で有効な新しいエネルギー開発と共に、私達一人一人がエネルギー・環境保護に対してより高い意識を持つ必要があるのは言うまでもない。  

森竹コットナウ由佳

2004年9月よりスイスに滞在。静岡市出身。元高校英語教師。スイス人の夫、
黒猫とエグリザウに在住。職業:日本語教師。趣味:旅行、ガーデニング、温泉、
フィットネス。
好きなもの:お酒全般(特に赤ワイン)、柿の種(せんべい)、動植物。
長所:シンプルで明朗快活。短所:方向音痴、うっかりもの。失敗が多い。
人生で一度やってみたいこと:北欧をキャンピングカーで旅行すること。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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