進化する代替食品 求められる「食」の見直し

鶏肉に見えるが、鶏肉ではない。スイスのスタートアップ企業プランテッドが開発した豆タンパク質由来の代替肉だ planted. via Facebook

私たちは細心の注意を払って何を食べるかを決めている。食品が健康に良いか、倫理にかなっているか、環境に優しいかをチェックしながら決めることも多い。スイスには豆のタンパク質を使った代替肉から、土壌や農薬を使わずに栽培するレタスまで実に様々なものがあり、食卓改革に最適な環境のようだ

このコンテンツは 2020/06/01 08:00
Clare O'Dea

イノベーションには実際に味わってみなければ分からないものもある。例えば、連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)のスピンオフ企業、プランテッド(本社チュ―リヒ)の若手チームが製造する鶏肉の代替肉がそうだ。

プランテッドの共同創業者であるパスカル・ビエリさんとルーカス・ベニさんに会う前に、私はチューリヒのカフェに立ち寄り、同社の製品を試食した。私が食べたのは、植物由来チキンのミックスサラダ。キャベツ、ニンジン、キュウリ、枝豆、ピーナッツが入っていた。冷製で出されても、見た目、触感、味の全てが本物の鶏肉のようだ。

プランテッドの勢いはめざましい。いとこ同士のビエリさんとベニさんが膝を突き合わせて2ページの科学的理念とビジネス・コンセプトの概要を練ってから、たった2年しか経っていない。食用肉の残酷で持続可能ではない大量生産を何とかすべきだというのが一番の動機だった。

プランテッドのパスカル・ビエリさん(左)とルーカス・ベニさん(右)は、4種の自然原料から肉類似物質を作り出した swissinfo.ch

ビエリさんにはビジネスの経験があり、ベニさんは食品科学者だ。豆タンパク質、豆繊維、菜種油、水という自然の原料4種を用いて、無添加の肉類似物質を作り出すことを2人は考えた。1年もしないうちに、エリック・シュティルネマンさんとクリストフ・イェニーさんが加勢し、昨年10月には700万フラン(昨年10月時点のレートで約7億6650万円)の資本金を得て、4人でプランテッドを創立した。

英金融機関バークレイズは昨年5月の産業分析レポートで、代替肉産業は2029年までに1400億ドル(昨年5月時点のレートで約15兆1620億円)相当の規模に成長し、食肉市場の1割を占めるだろうと予測した。プランテッドはこの市場の変化に参画したい考えだ。

ETHZフードサイエンス棟の1階にあるスペースで、1つの作業チームが、スイス全国に出荷するための豆タンパク質チキンを1日あたり500キロ製造している。製造には、食品製造に長い歴史を持つパスタ用の押し出し機を特別に改造した機械が使われている。

鶏肉の代替肉は、高湿度押出成形と呼ばれる工程を経て作られる。原材料が、チューブ状の押し出し機の中で2つの回転スクリューによって加熱・加圧され、1つの生地になる。抽出された植物性タンパク質はこの工程によって、筋張った細長い動物性筋原繊維タンパク質の形に変わる。

プランテッドが代替チキン製品を供給するレストランは増え続けている。ネット直販やスイス大手スーパーマーケット・コープでの販売も始めた。現在の社屋は手狭になったため、初夏にはチューリヒ近郊のケンプタールにあるマギー社(スイスの老舗食品メーカー、現在は食品大手ネスレに合併)の旧工場へ移転する予定だ。22人の従業員が働くスペースがより広くなり、製造量も6~10倍に増やせる。

「我々は欧州中に事業を拡大し、ショールームとなる工場を建設したい。製品や製造工程の改良も続ける」とビエリさんは話した。その後、階段に座って臨時ミーティングを始めたビエリさんとベニさんと記者は別れた。2人は最近、メディアの注目の的だといい「今は重要なものに絞る必要がある」という。

連邦工科大学基金から受けた15万フランの研究助成金を元手に始まったプランテッドの後を追って、昨年、チューリヒの新スタートアップ企業レムナプロも同じ助成金を得た。

レムナプロのシリル・ヘスさんは世界最小の顕花植物であるミジンコウキクサに注目する swissinfo.ch

レムナプロのシリル・ヘスさんと研究パートナーのメラニー・ビンゲリさんもまた、タンパク質に注目し、大きな夢を抱いている。その夢の中心にあるのは、世界最小の顕花植物(花を咲かせる植物)で、浮草の仲間のミジンコウキクサだ。

ヘスさんがミジンコウキクサを栽培する部屋を見せてくれた。温湿度管理がされた室内に、浅い水槽がある。その水槽の水面は黄緑色のミジンコウキクサで埋め尽くされていた。適切な条件の下であれば、この小さい植物は毎日倍増する。

「こんなに持続可能で、成長が早く、良質なタンパク源であるミジンコウキクサをなぜ私たちは食べてこなかったのだろうと不思議に思った。そこで、タンパク質市場を徹底的に調べ始めた。私たちは何を食べ、なぜそれを食べるのかを追求すると、ミジンコウキクサがビジネスになるように思えた」とヘスさんは説明した。

ミジンコウキクサは生食されるアジアではよく知られていても、欧州では新しい食べ物で、欧州諸国やスイスの当局もまだ承認していない。ヒトの栄養として大量複製が可能になる適切な生産条件を探しながら、ヘスさんと農学の科学者であるビンゲリさんは当局の承認を得ようとしている。1つの可能性としては、収穫したミジンコウキクサをプロテイン・パウダーに変えることだ。

何を食べるかだけではなく、その製造(生産)方法についても、見直しや新しい技術的解決策が求められている。スイスで販売されるレタスやハーブの約半分は国内産だ。残り半分は主に冬の間に輸入されている。

スイス西部のヴォー州モロンダンにある企業コムバグループは、新鮮な野菜を年中生産できる葉野菜用の温室システムを開発してきた。同社の葉野菜は土壌の無い環境で栽培されている。使用する水とスペースは、従来型の農業と比べ9割も少ない。農薬も使わない。

野菜の根に高栄養の細かい霧が繰り返し吹き付けられる CombaGroup

コムバグループの栽培方法は、特に輸送、農業排水、水の無駄遣いといった食料生産システムが環境に与える負荷を徹底的に削減し、取り除く。ストレスのない環境で育つ野菜は新鮮でおいしい。収穫の際に捨てられる葉も無い。

このテクノロジーには可動式の空中栽培が使われている。自動制御の可動式噴霧機が空中にぶらさがった根に高栄養の細かい霧を繰り返し吹き付ける。

赤い屋根瓦が特徴的な時が止まったような村で、コムバグループの従業員15人はより伝統的な農業を行う企業と現場を共有している。同社のシステムは栽培者にとってチャンスになるとコムバグループのセルジュ・ガンデ最高経営責任者(CEO)は見ている。

「我が社のシステムで生産できる量は膨大だ。伝統的な土壌栽培は毎年1ヘクタールあたり30トンの収穫量だが、うちのシステムなら800トンだ」と強調する。

コムバグループは最初のプロジェクトをフランスとスイスで立ち上げ、スウェーデンやクウェート、ロシアのクライアントとも交渉中だ。同社のビジネスモデルは、栽培システムを丸ごとアフターサービス付きで販売するというものだ。

「我が社のシステムを使えば、どこでも野菜を栽培できる。土壌の質、汚染、気候、交通の便などの条件が厳しい場所や地政学的問題のある場所でも可能だ」

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