ナビゲーション

ナビゲーションへ

グローバルメニュー

ブログ「もっと知りたい!スイス生活」 スイス人はなにを食べている?〜ベルナスコー二家の食卓

スイスの人ってふだんなにを食べているのだろう?常々、疑問でした。スイス料理といえばチーズフォンデュが有名ですが、まさかフォンデュばかり食べているわけはありません。今回は、ご近所のベルナスコー二家の奥さんにふだんの食卓について教えてもらいました。こんな暑い季節によく作るという、彼女おすすめのお料理レシピもご紹介したいと思います。 

いわずと知れたチーズフォンデュ。もっとも有名なスイス料理の一つです

いわずと知れたチーズフォンデュ。もっとも有名なスイス料理の一つです

(swissinfo.ch)

 スイスも夏まっ盛り、毎日ぎらぎらと太陽が照りつけています。颯爽とスーツを着こなしているビジネスマンたちも、お昼休みにはジェラート片手にくつろいでいて、なんだかほほえましい気分になります。私が暮らすティチーノ州はイタリアと国境を接していて、食事も文化もイタリアの影響が色濃い地域。リゾットやピザ、パスタは家庭の日常食ですし、食後のエスプレッソは欠かせません。わが家のご近所に住むベルナスコー二さんは、生まれも育ちもティチーノだというティチーノ人。高品質なチーズを求めて山の農家を訪ね、毎年秋にはご主人自らグラッパ(北イタリアの蒸留酒)を仕込む、食にはこだわりのある一家です。

 ベルナスコー二家の朝食は、ライ麦や精製度の低い小麦を使った黒いパンとオレンジジュースが定番です。そして日曜日の朝だけ、ふわふわの白いパンをチーズとともに楽しみます。この白いパンはトレッチャ・アル・ブッロ(treccia al burro/バター入り三つ編みパン)という名前があるのですが、このあたりではみんな「日曜日のパン」と呼んでいます。なぜそんな呼び名かと言えば、昔スイスでは白い小麦粉が貴重で、ふだんはライ麦などが混ざった黒いパンを食べ、日曜日や祭日のときだけ白いパンを食べたことに由来するのだとか。そういえば『アルプスの少女ハイジ』でも、白いパンは特別なものとして描かれていました。今はいつでも白いパンを買うことができますが、「やっぱり私たちにとっては日曜日のパンなのよ」と奥さんは言います。

雑穀入りのパンと「日曜日のパン」トレッチャ・アル・ブッロ。バター入り三つ編みパンの名のとおり、バターたっぷりの風味で美味

雑穀入りのパンと「日曜日のパン」トレッチャ・アル・ブッロ。バター入り三つ編みパンの名のとおり、バターたっぷりの風味で美味

(swissinfo.ch)

 一日の食事のメインはお昼ごはんで、パスタやリゾット、ピザなどを食べます。肉の煮込みや魚のグリル料理の日は、主食にパンやじゃが芋も食べます。夕食は日本の感覚からするとずいぶん簡素で、お昼の残り物や、パンにチーズだけということも。野菜を好む家庭では生野菜のサラダや、料理のつけ合わせにゆで野菜を食べますが、ベルナスコー二家のご主人は、野菜を食べるとお腹の具合が悪くなるからと、野菜をほとんど食べません。彼に限らず、野菜をあまり食べないという人は珍しくありません。

イタリア語圏で一般的なのは、こんな薄焼きのピザです

イタリア語圏で一般的なのは、こんな薄焼きのピザです

(swissinfo.ch)

 スイス料理ってどんなもの?という私の疑問に、ベルナスコー二さんは、スイスにはこれと国を代表して言える料理の様式はなく、それこそが連邦国スイス的だと言います。確かに、ドイツ語圏に行けばウインナーにじゃが芋などドイツ風の料理になりますし、フランス語圏出身のお姑さんがいる家庭では、フランス系のソースが欠かせないのだと聞きます。私たちイタリア語圏の食卓も、オリーブオイルとトマトソースがないことには始まりません。そうした周囲の大国の影響をベースに各地の風土に根ざした郷土料理があり、スイスの食は本当に多様だと感じます。

ドイツ語圏出身のお家のゲシュネッツェルテス。細く切った仔牛肉をマッシュルームなどとクリームソースで煮込んだ郷土料理です。じゃが芋を荒くおろして焼いたレシュティとともに食べます

ドイツ語圏出身のお家のゲシュネッツェルテス。細く切った仔牛肉をマッシュルームなどとクリームソースで煮込んだ郷土料理です。じゃが芋を荒くおろして焼いたレシュティとともに食べます

(swissinfo.ch)

 郷土料理で言えば、スイスの南に位置するティチーノは気温が高い地域のため、暑さをしのぐ料理が発達しました。その一つ、ペッシェ・イン・カルピオーネ(Pesce in carpione/魚のワインビネガー漬け)のレシピを暑い夏を過ごす日本の方にと、ベルナスコー二家の奥さんが教えてくれました。ティチーノは内陸にありますが、大きな湖と川に恵まれており、昔から魚料理がよく食べられてきました。カルピオーネはお隣のイタリア・ロンバルディア地方の郷土料理としても知られていて、ハーブをきかせた油で揚げた魚をワインビネガーに漬け、よく冷やして食べるお料理です。初めて食べた時は、日本の南蛮漬けに似たお料理にスイスで出会うなんて、とちょっと感動したものです。ベルナスコーニ家のレシピは魚は揚げずにムニエルにし、ハーブも使わないので、日本人好みの味だと思います。食欲減退の季節に、ぜひお試しください。

本場のカルピオーネ。レストランでは一匹丸ごと出てきます

本場のカルピオーネ。レストランでは一匹丸ごと出てきます

(swissinfo.ch)

Pesce in carpione〜ベルナスコーニ家風 

<4人分>

●好みの魚の切り身:4枚(400g) ●塩・こしょう:適量 ●小麦粉:適量

玉ねぎ:1個 

にんじん:1本 

オリーブオイル:適量

赤ワインビネガー:150ml

切り身魚で作ったカルピオーネ。砂糖を使わないぶん、南蛮漬けよりさっぱりしています

切り身魚で作ったカルピオーネ。砂糖を使わないぶん、南蛮漬けよりさっぱりしています

(swissinfo.ch)

1.魚に塩・こしょうをふり、小麦粉をまぶす。玉ねぎは繊維に沿って薄切りにし、にんじんは細切りにする。

2.フライパンにオイルを熱し、弱めの中火で魚を両面こんがりと焼く。とり出して深皿に並べる。

3.フライパンを洗って再びオイルを熱し、中火で玉ねぎとにんじんをしんなりするまで炒める。ビネガーを加え、ひと煮立ちしたら野菜ごと魚にまわしかける。さめたら冷蔵庫へ。翌日から食べられるが、バルナスコー二家では2日ほど置いてしっかり味をなじませている。

★通常は丸ごとの魚で作る料理ですが、作りやすいように切り身魚にしました。

★ティチーノではこの地方の淡水魚(ホワイトフィッシュやマスなど)で作りますが、白身魚やサーモン、サバなどお好みの魚で。

★にんにくやハーブが好きな方:魚を焼くときにセージの葉2〜3枚、ローズマリー1枝を加える。野菜を炒める前に、薄切りにんにく1かけ分をオイルに加えて香りを出す。

<より伝統的な作り方> 分量は上と同じ

 塩・こしょうをふって小麦粉をまぶした魚を、セージの葉、ローズマリーを加えたピーナッツオイルで揚げ、油をきって深皿に並べる。揚げた後の油をフライパンに少量とり、薄切りにんにくを入れて加熱し、香りを出す。薄切りの玉ねぎ、細切りのにんじんを加えて炒め、しんなりしたらビネガーを注ぐ。ひと煮立ちしたらみじん切りのパセリを適量加え混ぜ、魚にまわしかける。

 

奥山久美子


プロフィール:奥山久美子

神奈川県生まれ、福岡県育ち。都内の大学を卒業後、料理や栄養学を扱う出版社に就職。雑誌、書籍の編集業務に携わる。夫の転職に伴い、2012年からイタリア語圏ティチーノ州に住む。日本人の夫、思春期の息子2人の4人家族(+日本から連れてきた猫1匹)。趣味は旅行、読書、美味しいものを見つけること。


リンク

×