ベネズエラ、時価総額、ワクチン…スイスのメディアが報じた米国のニュース
スイスの主要メディアが1月1~7日に報じたアメリカ関連ニュースから①マドゥロ氏拘束「世界は新植民地時代に」②米テック企業、世界の時価総額ランキングを独占③ワクチンの推奨を削減、の3本を要約して紹介します。
ベネズエラの独裁者ニコラス・マドゥロ大統領が3日、カラカスで米軍に拘束され、ニューヨークへ移送されました。マドゥロ氏は麻薬テロを含む複数の罪で米検察に起訴されていま。スイスのメディアは、マドゥロ氏の排除はベネズエラにとってプラスになるとして概ね好意的に報じているものの、その手段については懐疑的に見ています。
マドゥロ氏拘束「世界は新植民地時代に」
アメリカ主導の急襲によりベネズエラの独裁者ニコラス・マドゥロ大統領が打倒されたことは、どれほど重大な意味を持つのでしょうか?フランス語圏の大手紙ル・タンにとって、その重要性は明白です。「これは世界史の行方を劇的に転換させる可能性を秘めている」
同氏は5日の社説で「危機に瀕しているのは、この南米の国の運命だけではない。世界の地政学全体が危機に瀕している」と指摘しました。「ドナルド・トランプ氏は、アメリカと世界を新たな新植民地主義の時代へと突き落とそうとしている。ロシアと中国はもはや、武力行使を伴って自国の勢力圏を守ることに何の躊躇も抱かなくなる」
社説はさらに、ベネズエラに関してトランプ氏の攻勢はまだ始まったばかりかもしれないと総括しています。「明日にはグリーンランド、キューバ、コロンビアを征服するかもしれない、と誰が言えるだろうか?」
ドイツ語圏の大手紙NZZは、国際法の専門家やアメリカの政治家が今回の襲撃を批判していると報じました。共和党員の中にさえ、トランプ大統領が議会に相談しなかったと非難する者がいたと書いています。「正式な法的観点からすれば、これらの非難はおそらく正しい。しかし道徳的な観点からすれば、この作戦の利益は費用をはるかに上回ると言わざるを得ない」としたうえで、「民主主義への回帰のためには、まだやるべきことがある」と指摘しています。
大衆紙ブリックもまた、複雑な書きぶりになっています。「世界は独裁者1人を失った。ニコラス・マドゥロはベネズエラを腐敗した形で、残忍かつ無節操に統治した。権力の座にとどまるため、自国民への暴力を全く厭わなかった。(失脚は)多くのベネズエラ人にとって解放となる」。カラカスでのクーデターは成功のように見えるが「後味は悪い。ベネズエラ軍と政府への攻撃によって、トランプ氏は国際法と領土保全についてどう考えているかを示した。何もないのだ」と記している。
トランプ大統領の軍事攻撃は「道徳よりも権力利益に関するものであり、米国帝国主義の復活を意味する」とブリックは分析しました。
ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)は、石油資源の豊富なベネズエラの経済的利益を強調しつつ、今回の攻撃はワシントンで政治危機を引き起こしたと報じました。「外交政策面では、制御不能なエスカレーションの脅威がある。国内的には、軍事冒険を避けてきた『アメリカ第一主義』のトランプ大統領の信頼性が大きく損なわれる恐れがある。紛争が長引いて米兵が負傷すれば、圧力はさらに高まるだろう」
SRFによると、民主党はトランプ大統領が生活費の高騰やエプスタイン問題といった国内問題から人々の目をそらすために紛争を引き起こしたと非難しています。「トランプ大統領が秩序回復への一歩として提示した行動は、中間選挙を控えた重要な年の幕開けに、ワシントンで何よりも深刻な事態を引き起こした。それは、政情不安だ」(出典:ル・タン外部リンク/フランス語、NZZ外部リンク、ブリック外部リンク、SRF外部リンク/ドイツ語)
米テック企業、世界の時価総額ランキングを独占
人工知能(AI)のブームが米テック企業を活気づけ、時価総額を世界上位に押し上げています。
半導体大手半導体メーカーのエヌビディアの時価総額は昨年末4.5兆ドル(約705兆円)を記録。長年首位を守ってきたアップル(時価総額約4兆ドル)を抜き去りました。コンサルティング会社EYの調査で明らかになりました。
EYによると、エヌビディアの時価総額は2025年12月31日時点でドイツの主要株価指数DAXに含まれる40社の時価総額合計2.5兆ドルのほぼ2倍に達しています。これを報じたスイス・ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーは、「エヌビディアの半導体システムは、AI搭載ソフトの中核技術となっており、この話題の企業はAI分野の現状を示すベンチマークとみなされている」と指摘しています。
エヌビディア以下の上位企業も米テック大手が独占しています。グーグルの親会社アルファベットは時価総額3.8兆ドル弱と、マイクロソフトとアマゾンを上回り3位に立ちました。
EYのヘンリック・アーラーズ会長は「2025年は世界の株式市場でAIが席巻した1年となった」と述べています。「AIの新たな応用分野やビジネスモデルをめぐる熱狂は、世界中で株価の力強い上昇をもたらした。しかし、その恩恵を受けているのは主にアメリカとアジアです。」
特にアメリカ企業は株式市場を席巻し続けています。EYによると、時価総額の世界上位100社のうち60社はアメリカに拠点を置いています。上位10社のうち8社はアメリカ企業で、例外は8位の石油会社サウジアラムコと10位の台湾半導体メーカーTSMCのみです。
なおスイスからは、ロシュ、ノバルティス、ネスレの 3 社が上位100社 にランクインしています。(出典:ターゲス・アンツァイガー外部リンク/ドイツ語)
ワクチンの推奨を削減
アメリカでは5日から、子どものワクチン接種の推奨回数が削減されました。これについて公衆衛生専門家は、予防可能な入院や死亡につながる可能性があると警告しています。
ターゲス・アンツァイガーは6日、「ロバート・F・ケネディ・ジュニア保健相はワクチン接種批判者として知られている。トランプ政権は現在、子どもへのワクチン接種を以前よりも大幅に減らすよう勧告している」と報じました。
トランプ大統領は5日、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で、ワクチン接種の推奨は「最も深刻で危険な11の病気」にのみ適用されるべきだと表明しました。「親は希望すれば、子どもに全てのワクチンを受けさせることもでき、その場合も保険は適用される」と言います。
ターゲス・アンツァイガーによると、トランプ氏は「異例なほどヨーロッパを称賛する」グラフィックも投稿しました。11本の注射器に囲まれたヨーロッパの赤ちゃんと、72本の注射器に囲まれた悲しそうなアメリカの赤ちゃんの絵です。
SRFによると、アメリカで推奨されなくなったワクチンにはロタウイルス、A型肝炎、B型肝炎、RSウイルス感染症、B型髄膜炎菌性、ACWY型髄膜炎菌性ワクチンなどがあります。
SRFによると、米小児科学会(AAP)は推奨が取り消されたワクチンは「危険で不必要」だと批判しています。AAPは「アメリカはデンマークではない。アメリカの家庭にデンマークの予防接種スケジュールを押し付ける理由はない」と述べ、両国の疾病リスクと医療制度は「著しく」異なると指摘しました。(出典:ターゲス・アンツァイガー外部リンク、SRF外部リンク/ドイツ語)
次回「スイスのメディアが報じた米国のニュース」日本語版は1月15日(木)配信予定です。
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