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スイスがマドゥロ氏の資産を凍結 なぜ?

2023年の写真に写るベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領。
スイス政府はベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領の権力喪失を受け、スイス国内にある同氏の資産を凍結した Keystone/EPA/Miguel Gutierrez

スイス連邦内閣は5日、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領がスイス国内に保有しているとされる資産を即時凍結することを決定した。かねてワシントンに慎重な警告を発していた。

スイスの対応は迅速だった。今月3日にマドゥロ大統領がカラカスでアメリカの部隊に逮捕され同国に移送されると、スイスは同日、緊張緩和、自制、国際法の遵守を求める声明を発表した。武力行使の禁止と領土保全の原則を改めて強調した。

週明けの5日には、連邦内閣はマドゥロ大統領や関係者のものとみられるスイス国内の資産を予防的に即時凍結すると決定した。

連邦内閣は、資産凍結は「外国の政治的に重要な地位にある者の不法資産の凍結及び返還に関する連邦法」(FIAA)に基づく措置で、ベネズエラの現政権のメンバーは凍結の対象外としている。

拘束の合法性は問わず

スイスはアメリカの行為を追認したということなのか?スイス政府は声明で、マドゥロ氏の権力喪失の理由となった事情は、FIAAに基づく凍結措置の決定打にはならないと説明した。つまり、マドゥロ大統領の解任が合法であったか、国際法に違反していたかは重要ではないということだ。

措置の決定的な要因は、権力の喪失が発生し、違法に取得された資産についてその出所国で法的援助手続きが開始される可能性があることだという。

スイスによる凍結措置は、その可能性につながる道となる。スイス政府は、今後の裁判で資金の出所が違法であることが証明された場合、スイスはベネズエラ国民に確実に返還すると宣言した。凍結措置は追って通知があるまで4年間有効だ。

多国間主義の試練

資産凍結は予防措置であり、外交政策におけるスイスの役割とは無関係だ。スイスの外交政策は平和促進、国際法の擁護、仲介活動に重点を置き、ベネズエラ情勢に関わるすべての当事者に対しても繰り返し仲介を提供してきた。

またスイスは多国間組織の積極的な加盟国だ。特に今年は、アメリカも加盟する世界最大の地域安全保障同盟、欧州安全保障協力機構(OSCE)の議長国を務め、国際規範の適用における一貫性の維持に努めている。

アメリカによるマドゥロ氏逮捕は多くの疑問を残した。様々な専門家によると、ワシントンとモスクワ両国の姿勢は、OSCEなどの多国間機関の活動を阻害しているという。

復活した帝国主義

スイスを含む多くの国が、当初からアメリカの軍事行動の合法性を疑問視していた。ジュネーブで演説したアントニオ・グテーレス国連事務総長は「深く懸念している」と表明し、アメリカの行動は国際法に違反しており、危険な前例となる可能性があると警告した。

第二次世界大戦規模の紛争の再発防止を目的とする国連憲章(1945年10月調印)の第2条第4項は、「この組織の加盟国は、国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しないものも慎まなければならない」と明記している。

ロシアによるウクライナ侵攻以来、国際法違反の意味はもはや説明の必要がない。しかし、ロシアやアメリカといった大国は、軍事力による侵略犯罪を訴追する唯一の常設機関である国際刑事裁判所(ICC)の権威を拒否し、裁判における制裁を回避している。

新しい世界秩序

アメリカのような大国が国際法の枠組みから外れて行動することは、危険な前例となる。欧州評議会の事務総長を務めるスイスのアラン・ベルセ元内務相は、「国際法は普遍的である。そうでなければ意味をなさない」と糾弾した。

ベルセ氏は「ベネズエラからのニュースは、ベネズエラ国民にとって、そして国際的な安定と安全保障にとって、今まさに大きな不確実性に直面していることを示している」と警告した。「この状況は、非難か支援かという単純な二者択一にはなり得ない。暴力が常態化し、法が道具化されるという、新たな世界秩序におけるより深刻な変化を示唆している」

ベルセ氏は、ベネズエラの政権移行は平和的かつ民主的で、ベネズエラ国民の意思を尊重するものでなければならないと強調。欧州評議会はウクライナ問題への関与を通じて「武力行使が常態化すれば国際法がいかに脆弱になるか」を知ったと訴えた。

「指導者不在の漂流」

ベネズエラ国内では、アメリカの介入に対する認識は二分している。カラカス出身の歴史家で政治アナリストのマルガリータ・ロペス・マヤ氏はスイスインフォに対し、ドナルド・トランプ米大統領の介入は国際的な視点から見ると無責任に映るかもしれないと話す。

「だが私の視点から見ると、ベネズエラではマドゥロ氏は武力行使なしには退陣しないという確信が広がっていた。そして、腐敗、分裂、徹底的な弾圧を経験してきた国民が、自力で政権移行に必要な措置を講じることは不可能だ、という確信もあった」。政治的に言えば、アメリカによる介入が唯一の解決策だったのかもしれないとみる。「マドゥロ氏が拘束されていることに、私たちは満足はしていないが、安堵している」

ロペス氏は、ワシントンはマドゥロ氏を排除するため、同氏を麻薬カルテルのボスとして描くことに重点を置いていると強調する。政府の他のメンバーは標的外だ。現在、ベネズエラは「指導者不在の漂流状態」にあるとロペス氏は語った。

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担当: Mavris Giannis

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編集:Marc Leutenegger、ドイツ語からの翻訳:ムートゥ朋子、校正:宇田薫

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