赤十字、北部同盟に人権尊重を要請
アフガニスタンでタリバン政権が崩壊したとの見方が広がる中、赤十字国際委員会は北部同盟に国際人道法の尊重を要請している。ジュネーブで行われた記者会見では、8月以来タリバンに拘束されていたドイツ人らNGOメンバー8人の釈放に赤十字が果たした役割についても公表された。
赤十字国際委員会(ICRC)のジャン=ミッシェル・モノド・アジア派遣団総長は15日、ジュネーブのICRC本部で記者会見を行い、「アフガニスタンは人道の危機に直面している。食糧不足よりも人権保護が火急の課題だ。」と述べ、北部同盟がタリバン軍の捕虜や負傷兵を処刑したとの情報に強い懸念を示した。そして、アフガニスタン国内に戻ったICRC外国人職員は、全ての戦闘当事者と国際人道法を尊重し負傷者の保護、人権の尊重、報復と処刑の抑制を要請する対話を進め、また、できるだけ早く国内の難民キャンプおよび捕虜収容所を訪問する計画だと語った。
モノド氏は、9月半ばにタリバン政権から国外退去させられた外国人職員がアフガニスタンに戻り始めたことを認めた。現在はカブールに3人が入り、2人が北部のタロカンとマザリシャリフへの途上にあるが、最終的には100人がアフガニスタン入りする予定だ。モノド氏によると、米軍の空爆中も現地で活動を続けた1000人のアフガン人職員のおかげで、カブールなど都市部の状況は壊滅的といったほどではない。むしろ、ひどいのは山岳地帯だ。
ひどい干ばつに見舞われたアフガニスタン中部の山岳地帯には、外国人職員の国外退去前から食糧援助の対象となっていた約50万人が暮らしている。これらの人々は、日々の生活を食糧援助にたよっていたが、2ヵ月間の援活動中断で今どうしているのかわからない。ICRCは、数日中に山岳地帯へ職員を派遣、食糧の他冬に備えて毛布と薪を届ける計画だ。が、これらの人々が今どこにいるのか見つけるのが先決だ。空爆と戦闘を避け大部分の人々が移動、多くは今も地雷原となっている対ソ戦来の戦場を通ったと思われるため、対人地雷による死者や負傷者が大勢出ているのではないかとモノド氏は懸念する。
一方、モノド氏は、8月にキリスト教布教活動をしていたとしてタリバンに拘束されたNGOシェルター・ナウインターナショナル(SNI)の8人(独4人、米2人、豪2人)の釈放において、ICRCが果たした役割についても公表した。それによると、カブールから約80km南西にあるガズニの地元武装勢力司令官が13日、アフガニスタン内のICRC職員に8人を国外に連れ出してほしいと連絡してきた。そこで、ICRCはSNIと拘束されている8人の各国政府、そして連絡して来た司令官の間でメッセージを中継し、15日早朝8人は米軍のヘリコプターでガズニからパキスタンに移送された。モノド氏によると、8人と一緒に拘束されたアフガン人メンバー16人はカブールで釈放されたが、うち何人かはカブールのICRCに連絡してきた。現在ICRCでは、残りのアフガン人メンバーの消息を追っている。
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