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レーティシュ鉄道:小さな鉄道が高峰を制覇する

ブルシオ ( Brusio ) にあるレーティシュ鉄道のループ橋 picswiss.ch


このコンテンツは 2010/05/04 09:01

赤い電車が走る狭軌 ( スイス国営鉄道は軌間1,435mmの標準軌 ) のレーティシュ鉄道、アルブラ線とベルニナ線は、スイスとイタリアを結ぶ交通手段として重要な役割を担っているが、文化的な価値もある。列車はグラウビュンデン州の歴史を辿るものだ。

イタリアのティラノで乗車し、駅を出発して間もなく、この鉄道は通常の鉄道と比べて何かが違うということに気づく。車窓からは、自転車で道行く人や、買い物籠を手に歩いている女性が見える。イタリアでは、この鉄道は一般車道を走っていくのだ。

鉄道の歴史と景色

ベルニナ線はまず、それぞれの谷間に住む村人たちを結ぶ路面電車、「トラム」のような役割を果たす。
「時々車と電車が衝突しますが、そんなにひどい事態にはなりません」
と車掌のマルコ・コスタ氏は語る。

電車の行程は、標高429メートルのティラノの街からプシュラヴ ( Puschlav / Posciavo ) へ向かうことから始まる。途中、湖や氷河の側を走り抜けた後は、アルプスの2つの大きな峠、ベルニナ峠とアルブラ峠 を越え、サンモリッツなどの有名なリゾート地に順に停車していく。そしてトゥシス ( Thusis ) に到着した後は、グラウビュンデン州の州都、クールの終着駅に向かって電車は再び走りだす。

長さ128キロメートルの区間に建設された196の橋や陸橋、そして55のトンネルは、美しいアルプスの大自然と、最高の鉄道技術が融合されてできた「鉄道技術の傑作」でもある。乗客は、パノラマ車両から見える絶景に息を呑む。鉄道が完成して100年経った今でも、この電車の旅はエンジニアや観光客を魅了して止まないのだ。

電車は曲がりくねったカーブの多いレールの上を走行していく。
「ここでは、昔の雪崩監視所の側を通ります。スイスではこういった場所はあまり多く残っていません」とコスタ氏は円錐の石碑を見せる。
「石橋などの鉄道橋はすべて昔ながらの形を残しています」
とコスタ氏は語る。

夢のような世界

鉄道の敷設計画があった当時、特にベルニナ線は、乗客が地方の観光スポットに沿って電車で旅ができるように計画された。このアイデアは功を奏し、今日70万人の乗客の大部分は観光客で占められるようになった。

「まるで夢を見ているようです。山と雪と氷。これらを一度に見られるのはまたとない経験です」
とバンコクからイタリアとスイスに旅行に来たジョレーさんは語る。

トゥシスとティラノを結ぶベルニナ線のほかの特徴は、さまざまな気候や、景色、文化、言語をもつ地域を走ることだ。例えば標高2253メートルにある駅、オスピッツィオ・ベルニナ ( Ospizio Bernina ) は、南のイタリア語圏、北のドイツ語圏とロマンシュ語圏の境に位置している。

アルブラ線にある高さ65メートルのランドヴァッサー橋とベルニナ線にある、世界でも珍しいトンネルのないオープンループ式で建設されたブルシオ橋によって、列車が数メートル走行するごとに高度を上げることが可能になる。レーティシュ鉄道の技術は世界中に知られているのだ。

20世紀初めの幕開け

2008年に世界遺産の仲間入りをした鉄道路線の幕開けは20世紀初頭で、アルブラ線は1903年に、ベルニナ線は1910年に完成した。当時鉄道を敷設した際、レーティシュ鉄道は「ヨーロッパの中でもアルプス最高地点の峠を越える鉄道路線と、世界で最も急勾配を走る粘着式鉄道は、世界ではほかに例がない」とアピールした。

ベルニナ線の機関車は、接続された車両を標高2253メートルのベルニナ峠まで、牽引しながら走行していく。
「この時の傾斜は7%に達します。簡易駆動を使用したシステム ( ラック式ではなく、粘着式 ) を使用する場合は、この角度が走行可能な傾斜の限界です」
とコスタ氏は語る。

万が一、機関車が何らかの理由で故障した場合、ポスキアヴォ ( Posciavo ) の車両基地にいる社員がすぐにその場に駆けつけることになっている。
「わたしたちにとって、ユネスコの世界遺産認定はある種の保証なのです。誰もあえて車両基地について疑問視する人はいません。今では、わたしたちの車両基地は、ベルニナ線車両のスペシャリストが集まる機関として権限を持つようになりました」
と車両基地と機関車の管理責任者であるダビデ・メンギーニ氏は語る。

車掌を務めるコスタ氏は20年来レーティシュ鉄道に勤務している。ユネスコ世界遺産認定の有無に関係なく、彼の仕事内容は常に同じだ。しかし、彼は、「単調な仕事なのでは?」という質問に対して、「決してそんなことはない」と答える。
「電車は数分で春のような芝生の世界から、冬のような雪景色の中を走っていきます。わたしは仕事の中で、日々何か新しいものを発見するのです。そして夕日が沈む時の景色はまさに格別です」
とコスタ氏は満足げに語った。

ルイジ・ジョリオ、プシュラヴにて、swissinfo.ch
( 翻訳 白崎泰子 )

ユネスコの見解によるレーティシュ鉄道 ( Rhätische Bahn )

アルブラ峠とベルニナ峠を越えて走るレーティシュ鉄道は、以前は孤立していたアルプスの各地域を結ぶ役割を果たし、鉄道路線の手本となっている。
この鉄道は、地方に住む住民にとって、社会的にも、経済的にも多大な影響を与え、地域間の文化交流を可能にし、自然に対する人々の考え方を変えた。
アルブラ線とベルニナ線は、アルプスの地域全体に良く調和している。

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鉄道と周辺地域

ユネスコ世界遺産となったのはレーティシュ鉄道だけでなく、鉄道が集中して走る中心地域と、開発地域と自然の地域との間にある3カ所の緩衝地域といった鉄道路線周辺の地域も指定対象になっている。
2007年6月に設立された世界遺産レーティシュ鉄道協会は、ユネスコ世界遺産の認定を受けたレーティシュ鉄道や周辺の地域が、今後も維持されつつ、人々に持続的に利用されていくことを目的に活動していく。

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