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日本・スイス国交樹立150周年、ロゴはウインクしながらスマイル

「特にスイスドイツ語圏にある、シャープなデザイン性に影響を受けている。でも、それに似たものが日本にもある」とポッロさん swissinfo.ch

2014年は、日本とスイスが国交を樹立して150年目の年。これを記念し両国でさまざまなイベントが企画されるが、使用されるロゴはスイスのグラフィックデザイナー、フランチェスカ・ポッロさん(38)の作品だ。両国の国旗が「目」に変貌。その二つの目をつなぐ口の形はスマイル曲線。「これほどの友好関係を築いた2カ国はなかなかないと思うが、今後も両国が協力していくとき微笑みはとても大切」と語る。

 ポッロさんは、スイスのイタリア語圏ティチーノ州出身。現在はチューリヒ市でフリーのグラフィックデザイナーとして活躍する。建築家と協力して3次元空間の仕事もするが、基本は広告、ポスター、本などのデザインだ。

 実は、6年前日本の広告会社で4カ月間働いたことがある。そのとき、スイスと日本はとても似ていると思った。特にグラフィックデザインでは、「余分なものをそぎ落とし最大限にシンプルな形で、一番大切なメッセージだけを伝える」ことが、スイスでも重要だが、日本のデザイナーもそれを大切にしていると感じた。

 それに「ベストを提供する精神」も同じだと言う。このことを学んだ日本での経験は大きく、それは今回のデザインにも生きている。

ZVG

シンプルな要素に多重の意味

 今回232点の応募作品から選ばれたポッロさんのロゴは、「シンプルな要素を組み合わせるのに何時間もかかったものだった。単純なことが一番難しく苦労する」

 それは、右目にスイスの国旗、左目に日本の国旗を使っている。間に短い1本の縦線が両者を分けると同時に「鼻」になっている。右目の十字は「ウインクする目」に、左目の日の丸は「真ん丸に開いた可愛い目」に見立てられている。

ロゴの公募は、日本とスイス両国で同時に2012年10月1日~11月30日に行われた。

日本で136点、スイスで96点の応募があった。

計232点の中からフランチェスカ・ポッロさんの作品が2013年3月、厳正な審査の結果選定された。

賞金は1000フラン(約10万円)。

ロゴは2カ国語で書かれており,様々な言語のコンビネーション(日独,日仏,日伊,日英)で使用することができる。

また、大きさも2種類のバリエーションがあり、用途によって選べる。

(出典、在スイス日本大使館)

 「よく見ると両国の旗の形は違う。スイスのは正方形、日本のは長方形。つまり、対称形ではない」とポッロさんは指摘する。確かにそうで、この非対称性故に、これらを「目」として並べたら「表情のある顔になるのでは」と思いついたという。

 さらに、スイスの旗はウインクしているために目全体が縮小し正方形になって当然だと思えるし、一方で日の丸の方は、目が開いているので長方形のままで正しいと感じられる。

 旗の色は?「白地に赤、赤字に白と反対の使われ方だが、両国とも赤と白からできている。このことも、二つの旗を組み合わせて一つの顔にするアイデアに役立った」

 最後の要素の口の線も、笑いを表現しながら、同時に両国を結ぶ橋の形に見える。

 結局、このロゴの優れている点は、二重三重の象徴的意味がこのシンプルな要素の中に見え隠れするという点だろう。

 スイスと日本の交流は、笑顔で行われ笑顔で終了するということ。同時に二つの国は、鼻という線で一応別れてはいるが、両目という二つが揃わなくては話にならない重要な要素(国)であること。さらに、二つの旗としての両国は、象徴的に(口の)曲線でしっかりと繋がり交流が行われている様子を表すこと、などだ

1975年1月、ティチーノ州に生まれる。

1995年、ティチーノ州ルガーノの工業デザイン学校(CSIA)を卒業。

2003年、チューリヒの芸術大学(ZHGK)でマスターを取得。

2007~11年、CSIAで「視覚コミュニケーション」を教える。

現在、フリーで広告、ポスター、本などのグラフィックデザイン手掛けると同時にインテリアデザインを行うこともある。

明日にでも飛んでいく

 では、すっきりとしたハイレベルのロゴが選ばれて、ポッロさんの今の感想は?「日本とスイスという、優れたグラフィックデザイナーが沢山いる国で、私の作品が選ばれたことを、ただただ誇りに思っている」

 だが、発表は東京のスイス大使館からの突然の電話だった。「インフルエンザで熱を出し寝ていたときにもらった知らせ。ボーッとしていて、初めは何が何だか分からなかった。とにかくびっくりした」と、そのときを思い出し喜びの笑みが浮かぶ。

 国交150周年記念のロゴ制作者として願うことは、「色々な行事を通じて、それぞれの国民に二つの国が美しく素晴らしい国だということを、もっと深く認識してもらえたら・・・」

 そして、お互いに注目し合いながら、一緒に仕事をしていく機会がもっと生まれたらとも望んでいる。自分が東京でグラフィックデザインの仕事ができたように、教育やアート、デザイン、建築などの分野で両国はもっと協力できると信じている。

 ポッロさん自身の日本との協力は?「もし日本の広告会社が仕事を提供してくれたら、明日にでも飛んでいく」とウインクしながら笑った。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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