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南アのパラダイスでワインを作るスイス人

「JC」ことジャン・クロード・マルタン氏は、スイスを離れ南アに来たことを後悔していない swissinfo.ch

南アフリカ共和国のケープタウンの東に位置する「ヘメル・エン・アーデェ ( Hemel-en-Aarde / 天と地 ) 」で、スイス人のマルタン氏とカザー氏がワインを作っている。サッカーW杯の前夜に両氏を訪ねた。

このコンテンツは 2010/06/24 15:25

赤茶色の土の道を行くと、「クリエイション・ワインズ」に到着する。門には南アとスイスの旗が掲げられている。ここは海辺の古風な町ヘルマナスから数キロメートル内陸に入った場所にある。

パラダイス

「クリエイション・ワインズ ( Creation Wines ) 」へやってきた訪問者を水辺のカエルや蝉の歌声が出迎える。試飲用のワインとブドウ畑の香りが広がり、ワイン貯蔵庫のあたりにも漂う。この土地はワイン作りにとって、そして「JC」と呼ばれている37歳のジャン・クロード・マルタン氏にとって理想的な条件を備えるパラダイスの一角だ。
「一目ぼれでした」
と思い起こすマルタン氏は、2002年にスイス人のビジネス・パートナーのカザー氏と共同でこの土地を購入した。

2人がこの土地をブドウ畑に作り変えるまで、ここはずっと羊の牧草地だった。ブドウ畑は、寒い日には雪化粧をする二つの峰の間に広がっている。
「気温は氷点下にまで下がることもありますが、ブドウ畑のために良いのです。しかし、気候は大体一年中安定しています」
とマルタン氏は説明した。

マルタン氏の22ヘクタールの土地からは年間約200トンのブドウが生産され、およそ12万本のワインが作られる。これは南ア全体の生産量のごくわずかに過ぎないが、スイスの基準では並はずれた生産量だ。

町の喧騒から遠く離れた丘陵地帯の静寂を途切れさせるものは、遠くの農家の車の音やワイン貯蔵庫の換気システムがたてるかすかな雑音だけだ。

高品質のワイン

ソービニョン・ブラン、シャルドネ、ピノ・ノワール、シラー、メルローなどの種類のブドウを用いて赤白10種類ものワインを作ることは、商業的な見地からは必ずしも理想的とは言えないとマルタン氏は認める。

しかし重要なのはワインの品質だ。
「どの種類がうまくいくのか、まだ研究している途中です」
とマルタン氏は言う。

初めてワインが生産されたのはわずか4年前の2009年から2010年にかけてのシーズンで、ブドウは豊作だった。マルタン氏とカザー氏は、これが長引く仕事になること、そして利益をもたらすまで10年間はかかることを承知していた。

しかしマルタン氏が妻とともにスイスを離れ、南アに移住したことを後悔した日はこれまで1日もない。

リスクを負った起業家

若き実業家のマルタン氏は、リスクを背負ったことを承知しているが、自信を持っている。
「どうなるか分からなくても、私にとっては前進することが重要だったのです。そして私はここで良い時間を過ごすことができました」

南アは、その全土に問題を抱えているが、マルタン氏は国の将来についても楽観的だ。富裕層と貧困層を隔てる深い溝も、そして白人と黒人の間の緊張の可能性も同氏は否定しない。

しかしマルタン氏は南アに移住し、地元の約30家族を扶養できる雇用を創出した。農作業とワインの貯蔵庫や試飲施設のために地元の人々を雇用したのだ。

マルタン氏は何人も差別しないことを明言している。
「重要なのは本人の仕事ぶりです」
同氏は、公正な給与を支払い、機械よりも労働者に頼る方法を選んだ。

スイス、それとも南ア?

マルタン氏は、同じ地域にほかにもスイス人のワイン農家があることを知っているが、あえて知り合いになろうとする気持ちは持っていないようだ。
「私たちには自分の人生と顧客があります」

海外市場を目指すマルタン氏は、現在10カ国にワインを輸出している。しかし同氏のワインは南アのアマチュアワイン愛好家を引きつけるようになり、それらの愛好家がヘメル・エン・アーデェまでやって来るようになった。

終わりのない事務手続きや嫉妬深い隣人の苦情でプロジェクトがつぶされる狭いスイス社会にいるよりも、マルタン氏はケープタウン地域でワイン農家、そして起業家として生きる方に自由を感じている。

順応力の高いマルタン氏は、世界のほかの場所でも生きていくことができると信じている。 そしてサッカーW杯に関しては実質的だ。
「私の家族は南アもスイスも応援していません。息子たちと一緒にスペインを応援しています」

ウルス・ガイザー 、ステファン・ギャビオウ、ケープタウンにてswissinfo.ch
( 仏語からの翻訳、笠原浩美 )

ジャン・クロード・マルタン氏 ( Jean-Claude Martin ) 略歴

現在37歳のマルタン氏は、ベルン州のビエンヌ ( Bienne ) を始めとして、スイスのフランス語圏とドイツ語圏の両方で教育と職業訓練を受けた。
1990年代後期に、ヌーシャテル湖畔地域におけるピノ・ノワールの生産者として名を馳せた。
2002年にビジネス・パートナーのクリストフ・カザー氏と、ケープタウンから120km離れたヘメル・エン・アーデェに土地を購入し、「クリエイション・ワインズ ( Creation Wines ) 」を設立した。2006年に小規模ながら初収穫を得た。
南ア人の妻と2人の子どもたちとともに2004年に同国に移住した。

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南アフリカ共和国のスイス人

連邦外務省 ( EDA/DFAE ) の2009年の統計によると、南アに住むスイス人は9000人強で、その3分の2が二重国籍者。
スイス人コミュニティは、アフリカ大陸最大の外国人コミュニティ。
南アに到来した最初のスイス人は、16世紀後半にやってきたオランダ東インド会社の傭兵だった。
その後も、宣教師、科学者、商人などによる移民ブームが何回か起き、スイス人移民の人口は1970年に最高に達した後、減少していった。

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