スイス北部・ライプシュタットにある原子力発電所では、いくつかの人為的過失があると疑われている
Keystone
スイスのチューリヒ近郊にあるライプシュタット原子力発電所で、実際は行われなかった安全試験に関する架空の報告書が作成されたことが判明した。スイス連邦原子力安全検査局はこれに対し、発電所を安全に運行する上で直接的な影響は出なかったと主張している。
このコンテンツが公開されたのは、
試験の担当社員は2016年以降、移動式放射線測定器3基の安全試験の実施を怠った。測定器が安全に機能しているか確認するため、2年に1度実施すべきだった試験を実際には行わず、架空のデータを検査記録に記入した。
問題となっている測定器は、放射性燃料を中間貯蔵施設に輸送する際、放射性燃料のコンテナから出る放射線を測定するもの。中間貯蔵施設に輸送後、コンテナの放射線レベルは再度測定される。
スイス連邦原子力安全検査局は、プラントと中間貯蔵施設の間で放射線レベルの明らかな差は見られず、この過失が安全性に影響を及ぼすことはないとした。放射性燃料を運搬した社員も被ばくの異常値は確認されなかった。
swissinfo.ch
(図は2016年のデータ)
同プラントを運営・所有する電力会社アクスポ(Axpo)は、2月中に詳細に関する報告書を安全検査局に提出する必要が生じた。安全検査局はこの報告書をふまえ最終的な結論を発表する。他の検査記録書の見直しは、独立機関によって後日行われる。
安全検査局のゲオルク・シュヴァルツ副局長は1月30日、「この発電所における安全に対する意識を持続的に改善するため、対策を講じる必要がある」と述べた。
安全検査局は例年、同プラントがまとめた公表/未公表の記録の検査を行っている。毎年約100件の記録が検査されるが、今年はその数が大幅に増加すると見込まれる。
おすすめの記事
おすすめの記事
27日の国民投票、スイスの原発は「古くなりすぎて危険」なのか?
このコンテンツが公開されたのは、
緑の党など、国民投票にかけられるイニシアチブ「脱原発」の支持者は、スイスの原発の多くが世界で最も古い施設に属し、その老朽化が大事故のリスクを格段に高める、と主張する。そうした事故は、スイスのように人口密度の高い国では破滅的な被害をもたらすという。
スイスの有権者たちは、本当に原発の稼働年数だけを根拠に大事故を恐れているのだろうか?以下、さまざまな研究がそうではないことを示し、大事故のリスクにはその他の多くの要因が作用すると言っている。
深刻な事故はまれか?
世界原子力協会(WNA)は、商業用原発は「きわめて安全」で、「原発施設の事故が起きるリスクは低く、また低下している」と主張する。
同協会はウェブサイトで「商業用原発は原子炉年(1基×年数)換算で累積1兆6千年間、32カ国で稼働しているが、うち原子力施設で大事故が起きたのは3件」と公表している。
もっと読む 27日の国民投票、スイスの原発は「古くなりすぎて危険」なのか?
おすすめの記事
スイス・ゲスゲン原発、定期検査後に稼働再開できず
このコンテンツが公開されたのは、
スイス北部デニケン(ソロトゥルン州)のゲスゲン原子力発電所が2カ月近く、発電を停止している。給水配管システムに過負荷がかかっている可能性があり、安全性が証明されるまで発電を再開できていない。
もっと読む スイス・ゲスゲン原発、定期検査後に稼働再開できず
おすすめの記事
欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」
このコンテンツが公開されたのは、
欧州人権裁判所(ECHR)大法廷は10日、スイスが女子陸上五輪金メダリストのキャスター・セメンヤさん(南アフリカ)の権利を侵害したとする2023年の判決を支持した。
もっと読む 欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」
おすすめの記事
スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
このコンテンツが公開されたのは、
抗生物質の開発に特化するスイスの新興バイオ企業ビオヴェルシス(BioVersys)は2日、日本の塩野義製薬と共同研究・独占ライセンス契約を結んだと発表した。
もっと読む スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
おすすめの記事
スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
このコンテンツが公開されたのは、
スイス放送協会(SRG SSR)は政府の予算削減を踏まえた組織再編計画を発表した。4言語圏の放送局のスポーツ、ドラマ、制作、配給、人事、財務、ITサービスなど各部門を縦割りで再編成する。
もっと読む スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
おすすめの記事
スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
このコンテンツが公開されたのは、
米宇宙企業SpaceX(スペースX)が運営する通信衛星「Starlink(スターリンク)」のアンテナ40基をスイス南部の村に設置する計画に対し、反対する声が上がっている。
もっと読む スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
おすすめの記事
スイスでは現金のチップが主流
このコンテンツが公開されたのは、
スイスのレストランでクレジットカードやスマホ決済が普及しているが、チップは今も現金で払うのが主流だ。消費者の多くは、チップが確実にスタッフの手元に入るようことを重視している。
もっと読む スイスでは現金のチップが主流
おすすめの記事
プラタナス、猛暑でも冷却効果 スイスの研究
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの研究所が新たな研究結果を発表し、プラタナスは猛暑でも冷却効果を発揮することが分かった。樹木の冷却効果は30~35℃で限界に達するという既存の仮説を覆す結果が出た。
もっと読む プラタナス、猛暑でも冷却効果 スイスの研究
おすすめの記事
スイス国立銀行、政策金利ゼロに引き下げ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス国立銀行(中銀、SNB)は19日、政策金利を0.25%引き下げて0%にすると発表した。
もっと読む スイス国立銀行、政策金利ゼロに引き下げ
おすすめの記事
欧州外相、ジュネーブでイラン外相と核協議へ
このコンテンツが公開されたのは、
メディア報道によると、ドイツ、フランス、英国の外相は20日、スイス・ジュネーブでイラン外相と核協議を行う見通しだ。
もっと読む 欧州外相、ジュネーブでイラン外相と核協議へ
おすすめの記事
スイス議会、超富裕層への相続税案を否決 対案なく国民投票へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス上院は17日、超富裕層の相続に相続税を課し環境保護の財源にする案を否決した。
もっと読む スイス議会、超富裕層への相続税案を否決 対案なく国民投票へ
続きを読む
おすすめの記事
スイスの一つの原発の終わり
このコンテンツが公開されたのは、
11月27日の国民投票では、緑の党が提起した脱原発イニシアチブで「原発の運転期間を45年に限定すること」が問われる。では、原発の停止・廃炉とは具体的には何を意味するのだろうか。どのような課題が想定されるのか。今回の国民投票の結果とは関係なく、2019年末に廃炉を決めたミューレベルク原発の例を追った。
もっと読む スイスの一つの原発の終わり
おすすめの記事
スイスで起こったメルトダウン 歴史的な原発事故
このコンテンツが公開されたのは、
50年前の今日、スイス西部リュサンにあった国内初の研究用地下原子炉で一部メルトダウン(炉心溶融)が起きた。スイス史上最悪の原発事故を写真で振り返る。
もっと読む スイスで起こったメルトダウン 歴史的な原発事故
おすすめの記事
ジュネーブ、フランスの原発計画に反発
このコンテンツが公開されたのは、
スイス・ジュネーブ当局は、近くのフランス南東部ビュジェ原子力発電所(稼動年数46年)に対して2回目となる訴状を提出した。原発がスイス住民にとって「大きなリスク」をもたらすとしている。
もっと読む ジュネーブ、フランスの原発計画に反発
おすすめの記事
スイスで行われる大気中と土壌の放射能測定
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで発生した重大な原子力・放射能事象に対応するモニタリングおよび緊急特別部隊で、重要な役割を果たすのがシュピーツ研究所だ。シュピーツ研究所の科学者たちは9月末、軍の特殊部隊のスタッフとともに、ベルン州のミューレベルク原発で事故が発生した場合の対応を確認した。
もっと読む スイスで行われる大気中と土壌の放射能測定
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。