アルプスの山村で地域通貨が好調、地元経済を活性化

2016年12月から流通している地域通貨イズナウ(10フラン相当) swissinfo.ch


スキーリゾートなどで知られるスイス・ヴォー州の山村、レ・ディアブルレで流通している地域通貨「イズナウ」が好調だ。老朽化したゴンドラの建て替え費用を集めるため昨年12月に期限付きで始まったが、地元経済の活性化に一役買っている。

現地を訪れた記者が店でコーヒーを飲んでいると、「イズナウの利益を守る基金」のメンバー、ジャンマリー・シュラウビッツさんが「支払いは私が」と言ってくれた。同基金はイズナウを立ち上げた団体。シュラウビッツさんが手に持っていたのは、もちろん地域通貨の「イズナウ」だ。

イズナウは直径約4センチの硬貨。縁取りは灰色で、中央の金色の部分にはゴンドラの絵がかたどられている。裏面は村のシンボルである、フルートを吹く妖精の姿がある。イズナウは、村のすぐ上にあるスキーエリアの名前だ。

昨年12月1日から今年4月30日までの期限付きで、計5万枚が流通。1枚10フラン(約1100円)相当で、活動に賛同する地元の店舗やレストランで使える。

イズナウのゴンドラは1953年製。同基金は、集まった資金で8人乗りのケーブルカー38基の新設などを計画している。スキーやハイキングなど年間を通してレジャーが楽しめるこの地域を広くPRする狙いもあるという。

地元住民や観光客がイズナウを使って地域で買い物をすれば、地元への投資になる。

協賛店の一つで、チーズ店を経営するルシアン・モレロさんは「イズナウは好調だ。客が10フランのチーズに20フラン札を出してきたら、うちはお釣りをイズナウか、10フラン札のどちらがいいか聞くようにしている」という。ただ、「困るのは、イズナウをもらった人が別の場所で使ってくれないこと。レストランでも似たような状況だ。通貨は流通しないと意味がない」と話す。

村の人口は1400人だが、冬になると国内はもとより英国、フランス、北欧からのスキー客で約10倍の1万人に膨れ上がる。このためスキー客らを運ぶゴンドラの建て替えを巡っては激しい議論が続いてきた。

シュラウビッツさんは、ゴンドラの建て替えは村の将来にプラスになるという立場だ。イズナウのリゾートに関連する雇用は50人分に上り、レ・ディアブルレのホテル、スキースクール収入の8割もリゾートのおかげだからだという。

シュラウビッツさんは「唯一、年間を通じて観光客を呼び込めるエリアなのに、その利点が奪われようとしていた」と憤る。


イズナウ地域の保護を訴える運動は約6年前、ヴォー州がスキー場への助成金を停止したことがきっかけだ。2011年、財政上の理由からイズナウエリアを大規模にわたって閉鎖する案が持ち上がったが、地元住民が反対し、13年にはイズナウの再建プランが州の都市計画に盛り込まれた。

しかし、レ・ディアブルレの観光協会とリフト運営会社を近隣地域と合併させ、ゴンドラの建て替え費用は運営会社が負担するとの条件が付された。

建て替えには計1350万フランが必要。基金は4月末までに、地域通貨で25万フランの収益を見込む。1350万フランのうち、400万フランは個人からの寄付や市債によるもので、地域通貨による収益はその市債返済に充てる。残り950万フランはゴンドラ運営会社が負担する。

シュラウビッツさんは、イズナウの保護運動をめぐっては紆余曲折あったものの、結果的に幅広い年齢層の地元住民、別荘オーナーらの意識改革ができたと喜ぶ。


シュラウビッツさんは「イズナウの活動に関わっていた人と、村の活性化に関心の薄かった若者たちを一つにまとめることができた。若者たちは自分の未来を守るためには自ら手を動かすことが必要だと学んでくれた。だから仕事以外でも地元経済に色々と貢献してくれている」と話す。

一方で、課題は残る。建て替えには州政府と議会の承認が必要になる。さらに、2020年にローザンヌで行われるユース五輪(14~18歳対象の国際競技大会)に向け、レ・ディアブルレではイズナウとは別のスキーリフト計画が持ち上がっており、住民はこの計画の結果いかんでイズナウのゴンドラ建て替えが立ち消えになるのではないかと懸念している。

シュラウビッツさんは「もしイズナウがなくなったら終わりだ」と警戒する。「そんなことがあってはならない。うちのような村がスキー事業をないがしろにする決定を出したら、投資は呼び込めない。愚の骨頂だ」と訴えている。

この記事は、旧サイトから新サイトに自動的に転送されました。表示にエラーが生じた場合は、community-feedback@swissinfo.chに連絡してください。何卒ご理解とご協力のほどよろしくお願いします

共有する