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地球温暖化でアルプスの氷河縮小

地球の気温は確実に上がっている。アルプスの氷河が縮小を続けているが、これは、何より地球温暖化が進んでいる証拠だ。(写真:アルプス最大の氷河、アレッチュ氷河も、どんどん小さくなっている。)

地球の気温は確実に上がっている。アルプスの氷河が縮小を続けているが、これは、何より地球温暖化が進んでいる証拠だ。(写真:アルプス最大の氷河、アレッチュ氷河も、どんどん小さくなっている。)

気象学研究の国際チームが、世界の過去の気象データを比較研究した結果、地球の気温は上昇傾向にあり、湖や川の氷結に大きな影響を与えている事が判明した。また、調査の結果、最も急速な気候の変化が起こったのは過去150年間で、大気中への人工的なガス排出が急増した産業革命との相関が指摘された。

ここアルプスでは、世界氷河モニターサービスに所属する専門家らが、アルプスの氷河の形態を観察してきている。連邦工科大学(ETH)のマルティン・ヘルツル氏は、「世界の氷河、特にアルプスの氷河は急速に後退しており、多大の容積が失われている。」と証言し、研究結果が地球温暖化説を証明する結果となったと語る。

ベルナー・アルプスの観光スポット、グリンデルワルト上方の氷河は、氷河がどのように縮んでいるかを示す典型的な例だ。15年前には、氷河は村の森林のところまで来ていた。それが今では、980歩登った岩の所まで後退した。1850年前には、グリンデルワルトの村から氷河が見え、森をなぎ倒して道まで到達することもあったという。

ヘルツル氏は、「気温が上昇しているのは確固たる事実だ。しかし、それと人間の行為との関連性については、簡単には述べられない。が、少なくとも部分的には責任がある事は、我々の研究結果が明白に示している。」という。

では、アルプスの氷河が全部消えてしまうことは、あり得るのか?そこまではいかないだろうと、ヘルツル氏は言う。「アレッチュ氷河のような大規模なものは、21世紀も残るだろう。が、アレッチュ氷河ですら後退は劇的に進んでいる。1815年以来、面積にして2.5平方km縮んでおり、失われた体積は絶大だ。」

さらに、氷河縮小の結果、深刻な事態が引き起こされるという。中央アジアでは、氷河は夏の飲料水の供給源だ。氷河の体積が減少を続ければ、深刻な干ばつが起こる。スイスでは、氷河は水力発電所のエネルギ−源だ。氷河がその働きを失った場合の影響は深刻だ。

が、ヘルツル氏が最も心配しているのは、氷河後退が示す世界の気候の変化だ。「氷河は気候変化の指標だ。氷河が縮んでいるということは、気候が変化しているということだ。そして、地球環境全体、気候システムが変化し、台風や洪水の増加など深刻な自然現象が引き起こされるだろう。」と述べた。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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