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天使が憩う秘密の花園

庭に鏡も置いて、空間を広く見せる工夫。「天国が実際どういうものか分かりませんが、パワーのあるところと思います」とシュタイナーさんは語る swissinfo.ch

クリスマスに欠かせないアイテムの一つの天使。天使の園がシェンコン(Schenkon)(ルツェルン州)にあると聞いて訪れた。ズールゼー(Sursee)の駅から1時間に1本出るバスで10分。バスから降りたち坂を下ると「バラのアーチ(zum Rosenbogen)・オープン」の標識が道の脇に見えてきた。

「ようこそ」と書かれたプレートの掛かっている鉄の扉を開けると、カラーン、コローンと鈴が鳴った。そのまま中に入るとそこは、緑の木やツタが生い茂る古めかしい庭園だった。

 庭の奥から笑顔で出迎えてくれたのはオーナーのウシ・シュタイナーさん。「英国風の庭の写真集を沢山見て、自分なりにアレンジしました」と説明する。「バラのアーチ」と名づけられた庭園を堪能するには1時間はかかりそうだ。「バラも好きです。ここには、樹齢100年以上になるというものも含めて、120種類のバラがあります。香りが濃厚でしょ」バラの香りに癒されたいと思ったらベンチに座ることもできそうだ。

英国風ガーデンショップ

 きれいな形をしたものや、かわいい工芸品が好きで、歴史を感じさせる古いものを集めてきたシュタイナーさんの趣味が高じ、自分の庭をゆっくり改造し、9年前に「開園」するまでに漕ぎついた。好きなものを集めて一人で悦に入るのではなく「こういうものを見ていると幸せになるし、思い出もできるので」人にも見てもらいたいと思ったからという。

 実はこの庭は、英国ではよく見られるというガーデンショップ。こまめに刈り込んだ背の低い庭木の間から、丸々と太った裸の赤ちゃんの天使や、すらりと長いドレスをまとった若い女性の顔をした天使の置物が見え隠れする。値札がついていて、すべてが売り物なのだ。

 一部の商品にコケが生えているのが、ガーデンショップならではの効果。コケが商品価値を上げるかのように、ずっと以前から庭に置かれ、さも骨董のような天使の雰囲気をさらにかもし出す。天使の置物はイタリアやフランスなどの古い形を中国でコピーしたものが多い。「高尚なキッチュ」がシュタイナーさんの商品選別の基準という。

守護天使に囲まれて

 シュタイナーさんは信仰心が深いというわけではないが、人はみんな自分を守ってくれる守護天使を持っていると思うという。天使が好きになったのは、幼いころに祖母の家に飾ってあった守護天使の絵が影響しているかもしれないという。それは、崖の近くで遊ぶふたりのこどもを、崖から落ちないように見守る天使の絵だった。

 午前中に庭仕事を終え、午後から開店するが、客をてぐすね引いて待っているという風でもないシュタイナーさん。インターネットのサイトを作ることも考えていない。客は口コミで訪れるのだという。

 「スイス人はロマンチックなものはあまり好きではありません。特にいまは声を大にして、こういうものが好きだなんて言えるような時代ではないのです」それでもあえて、自分はロマンチストだと自信を持って言える「個人主義者」が客だという。

 庭の奥には12才で事故死した伯父の墓標も置いてある。墓地からここに移転した。天使のレリーフが施された石版の前には水が入った小さな器があり、小鳥が水を呑みに来る。

 11月にはクリスマス向けにアレンジした庭に大勢のファンが訪れるというが、普段は静寂に包まれ、天使が憩う秘密の花園なのである。

swissinfo、 佐藤夕美(さとうゆうみ) シェンコン(ルツェルン州)にて

zum Rosenbogen
Haldenweid 1d
CH-6214 Schenkon
Tel. +41 41 921 50 18
(連絡は電話のみ)
<開店時間>
3月中旬〜10月31日
火〜木曜日 14時〜18時
土 13時半〜16時
11月1日〜クリスマス
火〜木曜日 14時〜17時
土 13時半〜16時

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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