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太陽電池飛行機のシミュレーション開始!

未来の飛行機の操縦を交代で操縦することになる、ピカール( 左 ) とボルシュベルグ両氏の意思は強靭 ( きょうじん ) といわれている

(Keystone)

初の熱気球による無着陸世界一周を果たしたスイスの冒険家、ベルトラン・ピカール氏が新たな世界初の試みに挑んでいる。

「ソーラー・インパルス」という太陽電池飛行機で石油を使わず、大気汚染を出さずに世界一周を果たすという。

 今回、飛行機は飛ばないが5月21日から5日間、実際の天候状況に即したシミュレーション飛行を試みている。今回の飛行予定はハワイからフロリダへ。大冒険家一族の血をひく隊長、ピカール氏の偉大な冒険へ搭乗してみよう。

 ジュネーブ空港に設置されたシミュレーション室には多くのコンピュータが設置され、熱気に溢れたエンジニアたちが行き交う。画面には翼の長い太陽電池飛行機が空に浮かぶ。現在は海洋上をゆっくり飛行中だ。「昨日から出発点ハワイを出て、フロリダを目標に標高3000メートルを飛行中。しかし、今のところフロリダの天候が思わしくない」とベルギー気象庁出身の天気係、リュック・トゥリュレマンス氏。彼が乱気流、高気圧やハリケーンなど数え切れない障害を避けながら太陽に向う順路を探すキーパーソンだ。

過酷なチャレンジ

 現存するソーラー電池の力では太陽電池飛行機に乗れるパイロットは1人だけだ。ピカール氏と交代パイロットを務めるアンドレ・ボルシュベルク氏が「このシミュレーションで現在、製作中の試作品のデザインを確かめ、改良を加えることができます」と説明。

 画面に映る飛行機は両翼で80メートルの長さ。翼の表面にソーラーパネルが設置され、日中の飛行で夜間飛行の電池を充電する。重さは軽量化のためにカーボンファイバーが使用され、わずか2トン。ボルシュベルグ氏は来年の試験飛行に向けて既に自身の体重10キログラムを減量をした「意思の人」だ。飛行機の速さは風向きによって、時速90〜140キロメートルまで。最終的な世界一周飛行は3〜4日の昼夜の連続飛行を行い、パイロットの交代のため5箇所に着陸する予定だ。

 パイロットがその間、缶詰状態になるコックピットは高さ180センチメートルで立つ場所もなく、横になって仮眠するのがせいぜいだ。「気球の中では立ち上がることができたから飛行機はもっと過酷でしょう」とピカール氏。食事は簡素で携帯トイレを使用という究極の生活環境だ。「仮眠は5〜15分ぐらいでしょう」とボルシュベルク氏。しかし、なるべく深い睡眠サイクルには起こさないようにコントロール塔にはパイロットの脳波が送られる。精神科医のピカール氏の配慮がうかがえる。

チームワークが鍵

 順路について、決まっていることは西から東へ向い、太陽の弱い北緯に上り過ぎずに北半球を飛ぶ。北半球は皆半球より着陸できる陸地が多いからだ。あとは乱気流、雲、上昇気流を避けて飛行する。

 「私の仕事は太陽を探すこと。楽しい仕事でしょう?」と笑う天気隊長のトゥリュレマンス氏。「世界中のどこの地点でも60キロメートルごとに全てのデータが揃います」と説明。これら膨大なデータを4時間掛かって、コンピュータが計算する。それを元に順路を慎重に選んでいくのだ。 

 「このシミュレーションはお互いのチームワークにも大切だ」というピカール氏。このプロジェクトには常に43人が関わり、100人の助言者がいる。「決して1人の冒険ではなく、チームの冒険なのです」と隊長。

夢でなくビジョン

 ピカール氏が「ソーラー・インパルス」を思いついたのは1997年。熱気球の世界一周を挑戦中に記者に「これは今世紀最後の冒険ですね」と言われ残念に思い「21世紀は制覇の時代でなく、未来に続く扉を開けなければ」と太陽電池の飛行機を考えた。ピカール氏は「これは夢ではなくてビジョンです」と目を輝かせて語る。

 「何もしなかったら、壁にぶつかるのは明らかです。我々がこれに成功すれば、将来、大気を汚染しない飛行機が可能だという新しい道を見せることができます」

swissinfo、 屋山 明乃 ( ややま あけの )

キーワード

<協力企業・機関>
ローザンヌ連邦工科大学 ( ETHL/EPFL )、欧州宇宙機関 ( ESA )、ダッソー航空 ( Dassault Aviation )、アルトラン・テクノロジー ( Altran Technology )。

<スポンサー>
高級時計メーカー、オメガ ( Omega )、独金融大手ドイツ銀行 ( Deutsch Bank )、ベルギー最大大手化学会社、ソルベイ ( Solvay )。

<費用>
推定7000万ユーロ ( 約114億円 ) のうち、65%は確定。現在まで、1700万ユーロ ( 約28億円 ) 掛かった。

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「ソーラー・インパルス」世界1周旅行までの飛行予定

- 1997年:ベルトラン・ピカール氏がこの「21世紀のチャレンジ」を思い立つ。

- 2003年:パートナーのアンドレ・ボルシュベルク氏との出会いをきっかけに、このプロジェクトに着手する。

- 2007年:スイスで太陽電池飛行機の試作品第1号を製作中。

- 2007年5月:第3回目のシミュレーション飛行。

- 2008年秋:第1回試験飛行予定。

- 2011年:世界一周飛行予定。

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冒険一家の血筋

- 祖父オーギュスト・ピカール ( August Piccard ) 氏は物理学者、発明家、冒険家で自ら設計した水素気球で世界初の成層圏 ( 1932年、1万6201 メートル ) に達する。有名なエルジェの漫画、『タンタンの冒険』シリーズの発明家、ビーカー教授のモデルでもある。後に、気球の原理を応用して深海観測船を発明し、海底3150メートル ( 1953年 ) まで記録を残す。世界で最も高く、最も低い地点に辿り付いた人となる。

- 父親のジャック・ピカール ( Jacques Piccard ) 氏は海洋学者。父オーギュストと共に何度も深海に潜る。父親の遺業を継ぎ、1960年には自ら1万916メートルの世界記録を残す。さまざまなタイプの潜水艦を発明するが資金不足のため完成に至らず。

- ベルトラン・ピカール ( Bertrand Piccard ) は精神科医で気球搭乗者。催眠術セラピーが専門でスイス医学催眠学会に属して教鞭をとる。常に人間の限界に立たされたときの行動心理学に興味を持つ。幼い頃から祖父などに連れられ、飛行に興味を示す。1970年代からハングライダーや超軽量飛行機の先駆者であり、1985年にはハングライダー飛行の欧州チャンピオンになる。1992年にはクライスラーチャレンジで気球レースに優勝する。ブライアン・ジョーンズと共に3回の失敗の後、1999年3月、熱気球で無着陸世界一周を19日間と21時間、47分で成功する。この体験をつづった著書『20日間で世界一周』はベストセラーに。

 ( 以上、ベルトラン・ピカールのサイトより抜擢 )

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