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徴兵制度廃止を巡る議論、スイスで再燃

スイスでは、男性市民全員が兵役義務を課せられる。 Keystone

徴兵制に絡むサミュエル・シュミード国防相の発言が波紋を広げている。

このコンテンツは 2004/08/09 17:32

スイスは男性市民の兵役義務に支えられた超軍事国家として知られているが、同国防相は「以前は考えられなかったようなことも検討しなければならない」と話す。必要とあれば、市民の兵役義務を前提とする現行の軍隊を変えることもありうるとの考えだ。

このような発言の背景には、長引く景気低迷で財政支出の削減が緊急課題となっている中、コストがかかる徴兵制も聖域ではなくなってきたという事情があると見られる。政府は来月にも完全徴兵制度の廃止も含めた軍事改革に関する議論を開始する見通しだ。

徴兵制を巡る動き

スイスの男性市民は18才になると、兵役を務められる能力があるかどうかを調べる身体検査が義務付けられている。そこで不可能と診断されると兵役免除となるが、それ以外は兵役訓練を受ける。36才まで数年毎に補充講習を受け、18才から数えて計260日間の兵役につかなければならない。

欧州連合(EU)では近年、徴兵制度を廃止し、職業軍人による軍隊を検討・施行する動きが広まっている。

英国が60年に徴兵制廃止を決めたのを契機に、フランスとスペインも数年前に廃止した。ドイツでは本人の良心に基づき、武装部門への配属を拒否した者は社会奉仕活動が選択できる。一方、スウェーデンやフィンランド、オーストリアは徴兵制を維持したままだ。

スイスでも徴兵制廃止を巡る国民投票が過去2度行われたが、いずれも過半数の支持は得られなかった経緯がある。

聖域なき改革

今回の軍事改革の議論で、スイス政府当局は「まず徴兵制廃止ありき」との立場は取っていない。これまでに軍隊のスリム化を目指して、冷戦下で60万人いた待機兵員数を、現在では22万人に減らしているが、これよりさらに規模を縮小して圧縮財政を乗り切るのが狙いだ。

「徴兵制に愛着はあるが、より小さい軍隊の方が国際平和活動や国内の救援活動に機敏に対応できるはずだ」と政府関係者は話す。このため、軍事改革の過程で徴兵制廃止の議論は避けられないというのが政府の見解だ。

シュミード国防相が今回、徴兵制廃止論をぶり返したことに議員の意見は分かれる。

同国防相と同じ国民党に属するウーリッヒ・シューラー議員は、「2003年に軍事改革を巡る国民投票が行われた結果、徴兵制は聖域のままでありつづけると決まったんだ。それをシュミードが反故にした」と反発の声を上げる。

一方、キリスト教民主党のブルーノ・フリック議員は、廃止の是非をめぐる議論は必要だと指摘する。「今は兵役義務を全うしたいと思う忠実な若者だけが軍隊に残る。頭のいい奴は病気の診断書を出して兵役免除を勝ち取るのが現状だ」と話している。


スイス国際放送 スコット・カッパー 安達聡子(あだちさとこ)

補足情報

徴兵制を巡る過去の国民投票の結果概要:

85年の投票では36%近くが廃止を支持。95年は支持する声が24%にも満たなかった。

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