スイスのアニメ「Max & Co」、双子の兄弟が情熱を結晶
スイスで初めて製作された長編アニメ「マックスとその仲間たち( 仮題 ) ( Max & Co ) 」は、製作費、技術、製作に参加した人の数においてもスイスの常識を超えたものとなった。
しかも製作者である双子の兄弟サミュエル・ギィヨーム、フレデリック・ギヨーム両氏はアニメ映画を独学で学んだという。
製作費3000万フラン ( 約30億円 )、イギリス、フランス、ベルギーなどからの200人を超える製作協力者、使われた人形の数150体、製作日数38週。長編アニメ「Max & Co」にかけたギヨーム兄弟の情熱がうかがえる数字が並ぶ。独学でアニメを勉強したというフリブール出身の兄弟の初めての長編アニメはどのようにして生まれたのだろうか。
ヨーロッパの協力
「Max & Co」は今年フランスのアンシー ( Annecy ) での国際アニメフェスティバルで「観客賞」を受賞した。スイスでは配給の関係上ロカルノ映画祭 ( 8月1日〜11日 ) での上映は見合わせられたが、待ち焦がれる観客にギヨーム兄弟が主催するアトリエが公開された。
話はマックス ( Max ) と名づけられた15歳のキツネが、まだ見ぬ父を捜し求めて旅にでる。途中、邪悪な魔女から村を救ったり、社会、経済的問題に遭遇したりする。もちろん恋にも落ちる。
この物語の登場人物たちは、シリコンなどでできた150体の人形。イギリスのマンチェスターで、80人もの職人により製作されたという。人形は内部に設置された仕掛けによって精巧に動き、表情を変え、微妙な動作をする。その瞬間瞬間を撮影して繋いだ。
「カットしたり、繋いだり、コンピュータがなければ不可能な製作だった」とギヨーム兄弟の1人、フレデリック氏。コンピュータはもちろん大切だが、人形の原型を作る鉛筆のデッサン、シーンを支える舞台装置など、人間の手から生み出される「形の源」こそ最高でなくてはならない。
「だからこそフランス、ベルギー、イギリスなどヨーロッパの各分野のトップに協力を要請しました。製作元はスイスですが、ヨーロッパの専門化の協力が結晶した作品ともいえる」とフレデリック氏は強調する。
「スイスには並外れた創造力を持つ、すぐれた製作者が多くいるのに、残念ながらアニメ製作の良い工房がない。そのため良いアイデアがあるのに、作品の質が落ちても妥協してしまう」。ギヨーム兄弟はこの状況を克服するためにも、外国に協力を求めたといえる。
アニメ製作は天職
少年時代、ギヨーム兄弟はほとんどアニメと関係なく育った。テレビを置かない家庭で、ディズニーのドナルドダックやミッキーマウスとは縁がなかった。アニメ映画は独学で学び、「Max & Co」の前に、10分ほどの短編を3本製作した。「初めの1本を製作した瞬間からこの道が天職に思えた」という。
ディズニーやイギリスのアニメとは違うものを創りたいという。「われわれの作品はもっと現実のアクション性が強いものにしたい。光やセット、役者、状況などの中に現れるリアリズムを大切にしたい。一般的なアニメと現実の世界との間にあるようなものを表現したい」という。
チューリヒの配給会社によると、日本での公開は今の所検討中という。
swissinfo、フランソワーズ・ゲーリング 里信邦子 ( さとのぶ くにこ )
「Max & Co」
作品の製作者はスイスフランス語圏フリブール州のギヨーム兄弟
製作費、3000万フラン ( 約30億円 )
製作日数、38週
全表面積、4500平方メートルにわたる27個のセット
舞台装置、撮影、編集、130人
マンチェスターの工房「マッキンノン&ソーダース ( Mackinnon & Sauders ) 」の80人が150体の人形を製作
特殊効果は20人のベルギー人が行った
声は多くのフランス人俳優が担当した
JTI基準に準拠
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