世界保健機関(WHO)に韓国初の新事務局長が選出される

ジュネーブに本部を置くWHOのブルントラント事務局長後任選挙に韓国の李鍾郁(リジョンウク)氏、現WHO結核対策部長が苦戦の末、選ばれる。
これで、韓国から初めての国際機関トップが誕生することになる。
任期
任期は5年間の2008年まで。5月のWHO総会で承認を経て任命され、今年の7月21日に第6代目の事務局長に就任することになる。ブルントラント事務局長(元ノルウェー首相)は7月20日までの任期を終え、引退する。
厳しい接戦
5人まで絞られた候補者から、32人の理事会メンバーが投票を行って選出した。最初の3回でエジプトのサラム前保健相、メキシコのフレンク保健相、モザンビークのモクンビ首相が次々に落とされた後、韓国の李鍾郁(リジョンワク)氏とベルギーのピオット国連エイズ合同計画(UNAIDS)事務局長の二人の決選投票となり、またもや3回度目の秘密投票で17対15票の僅差で当選した。
分析
アフリカ諸国などの途上国はモザンビークのモクンビ首相を推していたが、欧州諸国はピオット氏を支持しており、日本などのアジア諸国は李氏を押していた。李氏が5人の候補者中、唯一の事務局出身者でWHO事情に精通していることと、ブルントラント氏が欧州出身のため、また西欧諸国のピオット氏よりも違う大陸からの候補者を優先したという政治的配慮が窺われる。これまではブルントラント氏を除き、歴代の事務局長は全員がWHOでキャリアを積んだ人物か選出されてきた。
李氏の展望
ジュネーブの記者会見で李氏はWHOの目標として「国連のミレニアム・ゴールを達成することとWHOの活動をより効果的で透明度のあるものにすること」と語った。また、現事務局長と違う政策はどこかという質問に対して「もっと、現地スタッフを増やし、現場重視のプログラムの予算再編成を考えている」と答えた。結核とエイズが最重要課題なのでアフリカに重点を置くことになり、アフリカ大陸出身者でないからこそ、自由に力を入れることができると力説した。
李氏の経歴
李氏は1945年韓国生まれ、ソウル国立大学で医学博士を取得した後、ハワイ大学で公衆衛生修士号を取得した。WHOには19年間勤めており、結核対策部長(2000年から)の前はポリオ(小児マヒ)根絶キャンペーンや児童の予防注射イニチアチブなど数々の場で活躍した。
李博士は日本人の奥さんと息子が一人おり、日本語と英語が堪能でフランス語と中国語も読める。

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