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平和なスイスで戦争特派員

ジュネーブ欧州国連本部にある毎日新聞支局にて。 swissinfo.ch

いつも陽に焼けた顔で戦地から飄々と戻ってくる毎日新聞の大木俊治記者。ジュネーブ欧州国連本部にいる特派員の中ではスイス歴は一番長く3年半。平和なスイスとアフガニスタンやイラクなどの紛争地を飛び回っている。「現場で、見て、聞いて、書く」のが一番面白いという物事に動じないベテラン記者だ。

 「戦地で生き残る秘訣は特ダネを取ろうなどとしないこと」と語る大木氏はアフガニスタンに2回、イラクには5〜6回。毎回数ヶ月滞在した。「戦地」と言っても戦争の後始末の取材が主だった。しかし、「戦争中よりも戦後の混乱状態の方が危険」という。現地に信用できる人間を雇うこと、その人の言うことを良く聞く事が大切だ。あとはテロに合わない「運」もある。


 イラクで殺害された日本人について、「バックパッカーの香田さんは気の毒だったがあまりにも無謀だった。あの時期、最も危ないルートだったのは知られていた。フリージャーナリストの橋田さんは危険を承知で行ったのだろうが、ベテランだから安全ということはない。何度も行っているうちに自分は不死身だと思うようになったら危険信号だ」という。現在、ほとんどの日本のメディアはイラクを引き上げたが、次に入った時が、情報不足で危ないだろう。

 大木氏は「へそ曲がりだから選んだ」というロシア文学が専門だ。モスクワ勤務を経て、スイスに来たのは偶然。スイスは「知名度の高い割には実際の姿は知られていない」というのが住んでみた感想だ。「他の国の目を気にせず、自分の納得することしかやらない頑固なところが面白い」という。ジュネーブから見た世界情勢は日本の視点と大きく違う。中東やアフリカが近いスイスと日本人の関心とのギャップが大きいため、紙面に報われないのが悩みだ。


swissinfo 聞き手 屋山明乃(ややまあけの)

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