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150 回の練習でスピーチ大会優勝

トーストマスターズのヨーロッパチャンピオン、ジョン・チマー氏と娘のクリスティンさん Alexandra Zimmer

トーストマスターズ・インターナショナル開催の「ユーモラスなスピーチ、ヨーロッパ大会」は、笑いを誘うスピーチを5、6分間行うコンテスト。ヨーロッパ18カ国から参加者が集まった今大会で優勝を飾ったのは、ジュネーブに住む国連職員ジョン・チマー氏だ。

チマー氏はカナダ出身の弁護士で、10年前から国連の移民機関に勤めている。成功の秘訣は「準備を怠らないこと」というチマー氏にインタビューした ( リンクのチマー氏の実況録画もご覧下さい ) 。

swissinfo :  スピーチコンテストに参加したきっかけは何ですか。

チマー: トーストマスターズに入ったのは、2007年の7月です。以前からこのクラブの存在は知っていましたし、価値あるクラブだと思っていました。人前でしゃべる仕事を数年間やっていますが、しゃべるということは、いつも何かを新しく学んで向上し続けるもの。そう思って入会しました。

僕は、世界で最もユーモアがある人間というわけではない。ただ一般的なユーモアのセンスがあるだけです。それでスピーチコンテストに焦点を合わせ邁進した。そうしたらうまくいったというわけです。

充分な準備をしました。コンテストに参加を決めたのが今年の夏で、もしヨーロッパ大会で優勝したいと思ったら、4ラウンドを通過しなくてはならないことを知っていました。まず僕が属しているクラブ、次いでスイスフランス語圏大会、スイス全国大会、最後にヨーロッパ大会です。

ユーモラスなスピーチコンテストで勝つキーポイントは、聴衆が自分に身近なものと感じる話題を選ぶことです。そう考えたとき、トーストマスターズを主題に選ぶのが一番だと思ったのです。そこで、トーストマスターズクラブをパロディ化し、少し茶化して話しました。

swissinfo : 普通の話し手と、才能ある話し手の違いは何でしょうか。 

チマー : それは、とても難しい質問です。偉大な話し手はこうだという一つの決まった型があるわけではないからです。偉大な話し手といえば、ウインストン・チャーチル、マーティン・ルーサー・キングなどが思い浮かびます。バラク・オバマも偉大な話し手です。しかし彼らのスタイルはさまざま。だいたい非常に派手で、雄弁なタイプと、穏やかで分かりやすい話し方のタイプと2通りあると思いますが、両者とも同じように効果的です。

ただすべての偉大な話し手に共通していることは、準備を怠らないということです。どれだけの時間を準備に割いたかに比例して結果がでてきます。話した後に「メモもなく、本当に自然にしゃべれましたね」と人がほめてくれる場合、自然なのは、何度も何度もリハーサルし、使う言葉にも磨きをかけたからなのです。

swissinfo : つまり、自然な話し方は自然に生まれるのではなく、リハーサルを何度も行ったからということですか。 

チマー : その通りです。ところで、偉大なユーモアの語り手ジェリ・サインフェルドなどはジョークを次々と投げかけ、楽しい逸話も混ぜ込むといったやり方で、僕がやったのとはまったく違います。

トーストマスターズのスピーチコンテストでは、初めから終わりまで一貫性がないといけないので、サインフェルドのやり方と比べることはできませんが、共通していることは、何度も何度もリハーサルしたということです。

僕の場合、クラブ、仕事場、バイクに乗って仕事場に行く途中と、トータルで150回はリハーサルしました。頭の中に刷り込まれて、時計が鳴ると自動的に喋りだす機械みたいになりました。1つ2つ、言葉が変わりますが、それ以外はまったく毎回同じスピーチになりました。

swissinfo : スイスのジョークについてどう思いますか。 

チマー : ( 長い沈黙 )美しく、良い国ですが。あなたの質問は面白いですね。スイスにはユーモアのセンスがありますが、「これがスイスのユーモアだ」という風にすぐ指摘できませんね。ちょうどスイスの美味しいワインやチーズのように、この国に住んで長い間かかって、やっと理解できるようなユーモアですね。きっと。( 沈黙 )いくつかのジョークを聞いたことがありますが、すぐには頭に浮かびません。

swissinfo : 若い人や、初心者の話し手に対してアドバイスをいただけますか。 

チマー : まず、トーストマスターズに入会し、仲間同士という関係の中で何回か話す機会を得ることです。

人が犯す一番の過ちは、とにかく早くしゃべり過ぎるということです。ステージに上がるや、早く進まないといけないと思うようです。ばかげて見える、または怖がっていると思われているのではという脅迫観念から、さらに早くしゃべってしまいます。聴衆が情報を受け取り理解するには、時間がかかります。したがって、まず深呼吸してゆっくり話し、特に強調したいポイントの前では少し間を取ることです。

目線も大切です。もし、メモを片手にスピーチするなら、メモ内容は最小限に、話のポイントだけを書き留めておくようにすべきです。

ジェスチャーも大切。重要ポイントを示唆するときは手を使うこと。また、多様な聴衆に語りかけるために、右や左に2、3歩歩くことも大切です。デリケートなスパイスを振りかける料理長のように、ジェスチャーをデリケートに使いこなすことです。しかしスパイスのかけ過ぎはいけません。

swissinfo、サイモン・ブラッドリー 里信邦子 ( さとのぶ  くにこ ) 訳 

トーストマスターズ・インターナショナルは、スピーチのトレーニングを行うことを主な目的とした非営利教育団体。1924年にアメリカのカリフォルニアで生まれた。

世界92カ国に1万1700のクラブがある。

スイスには14のクラブがあり、9つが英語、3つがドイツ語、2つがフランス語のクラブになっている。日本では約80の正式なクラブがある。

多くのクラブが通常月に2回、2時間ずつの訓練をする。人数は15~30人。即興または準備したスピーチを行う外、時間を測る、点数をつける、司会者になるなどの訓練を行う。

ヨーロッパのユーモラスなスピーチコンテストでは、笑いを呼ぶようなスピーチをおよそ5、6分間行なう。その後、内容、ジェスチャー、声の出し方の多様性、主題の一貫性などの観点から判定される。

ジュネーブのトーストマスターズのクラブは、インターナショナルスクール内で、月の第1と第3水曜日に開催される。

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