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日本人とスイス人Part2 ~スイス在住9年目の視点より~ 

蓮の花のイメージは即仏教と結びつく

蓮の花のイメージは即仏教と結びつく

(swissinfo.ch)

さて、今回は6月6日にオンラインされた「日本人とスイス人 Part1」の続編である。スイスに住んでから気がついたスイス人と日本人の共通点や相違点をさらに取り上げてみよう。

 まずは、スイス人の散歩好きである。彼らは老若男女を問わず、一年中実によく歩く。お天気さえ良ければ「お散歩」と称して、近隣を小一時間歩くのは日常茶飯事。スイスに来た当初、70歳の義両親から「ちょっと散歩に行こう。」と誘われて、軽い気持ちでついていったら、近くの丘を登り降りして結局2時間以上も歩き、ヘトヘトになってしまったことがある。日本の感覚で言えば、これは“散歩”ではなく立派な“ハイキング”である。

(swissinfo.ch)

 そのせいか、スイスの御老人は70歳を超えても足腰がかなり達者な人が多い。夫の75歳になる知人は毎週末、ピタッとしたカラフルなサイクリングスーツに身を包み、黒いサングラスをかけて颯爽とサイクリングに出掛けていく。傍目から見ると、とても70歳を超えているようには見えない。きっとスイス人は平均寿命では日本人に負けていても、“健康寿命”では勝っているに違いない。こんな風にスイス人がよく歩くのは、それだけ自然が身近にあって豊富だという証拠なのだろう。遠くに出掛けなくても、散歩しながら近所の庭に咲く四季折々の草花を見たり、ライン川を流れる水の色の違いを観察したりするだけで自然が楽しめるのはスイスの素晴らしい点のひとつである。

(swissinfo.ch)

 次に、公共交通機関におけるマナーに関しては、日本人は文句なく世界一だと思う。駅のホームで整然と並んで順番を待つ姿や、車内での行儀の良さは日本人として誇れる。それに対して、スイス人のマナーはあまり褒められたものではない。車内のゴミは目立つし、携帯電話の使用も全くフリーである。電車内で品のない会話を大声で長々としている若者を目にすると、昔はとても耳障りに感じたが、いつの間にかそんな感覚も麻痺してきてあまり気にならなくなってしまった。だからたまに日本に帰ると、電車やバスの車内が異様に静かに感じられて逆カルチャーショックを受けてしまう。こんな時、自分でも気がつかないうちに、私の感覚が変わったのだと実感する。

(swissinfo.ch)

 もう一つ、こちらに来てから面白いことに気がついた。それは、日本に住んでいた頃は、全く意識しなかった“日本のアジアっぽい一面”である。スイスに長く住むにつれ、この感覚は強まっているように感じる。帰国すると自然に目につくのは、漢字で書かれた無数の店の看板やネオンサイン、商品の陳列の仕方やモノの多さ、店頭で大声を張り挙げている客寄せの店員、常時店内に流されている音楽、白いマスクをつけた人々の群れ(こちらではよほどの重病人でない限りマスクをつけない。花粉症防止のために一度マスクを付けて電車に乗ったら誰も隣に座らなかった。それ以来マスクは使用していない)、至る所に張られている指示書きや注意書き、店頭に辛抱強く並ぶ長い行列等々である。こういった光景は日本にいた頃はごく見慣れた普通の光景で特に“アジア的”とは感じなかったが、最近、帰国してそんな光景を目にすると「ああ、やっとアジアに帰ってきた。私は今、日本にいる。」と何だか懐かしくて嬉しい気持ちになってしまうのである。

(swissinfo.ch)

 日本の都市が持っている、人間やモノが雑然と溢れているようなイメージや、時間が効率的にテンポ良く流れているような流動感、情報の洪水の中に身を任せて浮かんでいるような感覚が私は大好きだが、ヨーロッパのすっきりと統一がとれた空間や静寂さ、石造りの建物のひやりとした手触りや重厚感、時間がゆったりと流れるような雰囲気もまた好きである。きっと在スイス9年を経て、私の心中で徐々にスイス人的感覚と日本人的感覚がほどよくミックスされてきたのだろう。今後20年、30年とスイスでの生活が長くなるにつれ、私の意識や感覚は一体どう変化していくのか、実に興味深い。願わくは日本人とスイス人を超越した“ハイブリッド人”として、しなやかで、したたかな人生を送ることができれば最高である。「一粒で二度おいしい」という懐かしい某キャラメルの宣伝のように人生は2倍楽しくなるはずだ。

こんな風に二つの国の違いをアレコレと考えながら、状況に応じてコチラ側とアチラ側を行ったり来たりしながら浮き草のように生きていくのも、海外在住族の楽しみのひとつなのかもしれない。

森竹コットナウ由佳

プロフィール:森竹コットナウ由佳

2004年9月よりチューリヒ州に在住。静岡市出身の元高校英語教師。スイス人の夫と黒猫と共にエグリザウで暮らしている。チューリッヒの言語学校で日本語教師として働くかたわら、自宅を本拠に日本語学校(JPU Zürich) を運営し個人指導にあたる。趣味は旅行、ガーデニング、温泉、フィットネス。好物は赤ワインと柿の種せんべいで、スイスに来てからは家庭菜園で野菜作りに精をだしている。長所は明朗快活で前向きな点。短所はうっかりものでミスが多いこと。現在の夢は北欧をキャンピングカーで周遊することである。

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