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深刻化するスイス・フランス国境犯罪。受難の国境警備隊

ジュネーブの犯罪率が、急増している。フランスから、窃盗団が国境を越えて流入して来る。人員不足のスイス国境警備隊は、組織化が進む犯罪に打つ手がない。

ジュネーブの犯罪率が、急増している。フランスから、窃盗団が国境を越えて流入して来る。人員不足のスイス国境警備隊は、組織化が進む犯罪に打つ手がない。

昨年ジュネーブでは、1、300台以上の車が盗まれた。ほとんどは、リヨン他フランス各地から遠征して来た窃盗団の犯罪だ。ジュネーブ国境警備隊のスポークスマンで、仏語圏スイスの麻薬特捜部隊長のサルバトーレ・ミラタ氏は、「連中にとってスイスは、とりわけジュネーブは、スーパーマーケットみたいなものだ。高級車が容易く手に入り、贅沢品を売る店が並ぶ。自由自在に犯罪を犯せる。」と深刻な状況を語る。「徴候には5、6年前から気付いていた。最初はリヨン郊外からジュネーブに来た若者の、万引きなどの軽犯罪が中心だった。それが、だんだん車やバイクを盗むようになり、今や強盗までする始末。多くは少年犯罪だが、組織化が進んだ犯罪だ。」

犯罪の増加は、ジュネーブ地域の国境警備隊の人員不足という問題をクローズアップした。ジュネーブ州とフランスとの国境106kmにそって、100以上の横断ポイントがある。34ケ所の税関のうち、24時間警備隊員が配備されているのは、わずか4ケ所だ。

最近の調査で、国境警備隊員は国家公務員のなかで、最低の待遇を受けていることが判明した。カスパル・ヴィリガー蔵相は、国境警備隊員に特別補助金を支給する方針を発表する予定だ。

ジュネーブ地域セクター2の班長クロード・シューラー大尉は「大きな問題は3つある。先ず、人が足りない。軍に援軍をたのんでいるが、彼等は国境警備をするだけで、税関の仕事はできない。第2は、勤務コンディションが困難になる一方なのに、給料が悪い。第3は、職務を遂行する手段を十分に与えられていない。防弾チョッキと催涙スプレーは、支給されている。が、職務をもっと効果的に果たせるような、他の装備が必要だ。」と指摘する。

シューラー大尉は、2移動部隊を指揮下に持つ。40人で、50の道路を警備しなければならないため、警備は手薄になる時間が多く、犯罪者はゆうゆうと行き来する。「午後遅い時間には、これらの道路は混雑する。地元の人々も、もちろん利用する。が、フランス、ポルトガル、トルコ等長距離移動者にも良く知られた道だ。麻薬、盗難車の運搬だけでなく、違法入国者の手引きに使われる場合もある。」と警備の手薄さを告白する。

昨年11月、国境警備隊員がひき逃げされる事件が起きた。ある国境警備隊員は「多くの犯罪は、失うもののない若者らによるものだ。道に立ちはだかれば、彼等はひき殺して行こうとする。私自身も、止めようとした車の女性に跳ねられ、歯が4本折れた経験がある。こんな事は、毎日ある。国境警備隊の尊厳などない。」と現状を語る。

近年、国境警備隊の任務は、大きく変わった。10年前は、任務の80%は税関で、警察任務は20%だったが、最近は、逆転している。が、国境警備隊は大蔵省の管轄なのだ。

フランス警察および仏税関との連携も、強化される必要がある。今までにも、数少ない共同作戦があったが、日常ベースではドイツ警察・税関との間に確立されているような、連携はない。ミラタ国境警備隊スポークスマンは「フランス側にも、共同に向けて積極的になってほしい。いつもスイスが、協力を申し込んでいるのだ。」と不満をもらした。

スイス・フランス両国政府の間に、クロスボーダー協力が欠けている問題もある。1998年、警察が国境を越えて容疑者を追う権利を認める相互合意協定が調印された。が、仏議会は、この協定を承認していない。

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